役員退職金の否認が増えている理由と対応策について。

役員退職金の否認が増えているとすれば重大なことです。

役員退職金の否認が増えている理由とは書きましたが、知り合いの税理士法人に確認すると否認の事例はあるがそれが一般的とは言えないという意見です。

保険の営業トークに役員退職金を二度もらうみなし退職という話法がありました。

今もありますが何かと問題をはらんでいます。その役員退職慰労金の原資を法人契約の生命保険で準備しませんかというスキームです。CIMG2062

確かに役員退職金は高額になりますからよほど優良企業でも準備なしでいきなり支給するのはキャッシュフロー的に厳しいものがあるでしょう。

それで役員退職金は別枠で用意する必要があるのですが、その話は別のページにゆだねるとして、ここで申し上げたい注意すべき点は役員退職金の正当性です。

OB税理士の先生がよく言うことは、

1. 形式基準を満たしているか。

つまり正式な取締役会、株主総会を開催してきちんと議事録を残しているか。
社長が一人で決めて議事録を形だけで作成していないか。

2. 実質基準を満たしているか。

本当に引退、退職しているか。やめたふりではないか。
経営の実権や決済権を握ったまま偽装引退になっていないか。

3.  役員退職金の支給額が妥当かどうか。

支給額は税務署に事前相談すればリスクは軽減されます。自分勝手に決めないことです。

それやこれやを考えても一般庶民からすれば考えられないような巨額の役員退職金ですから本来税制優遇されるのは得心できないところでしょう。

しかし資本主義経済のもとでは中小企業の事業承継における存続と言うことを考えると課税当局にとっては退職金税制も許容範囲と言うことのようです。

退職と言えば会社を離れ縁が切れるのが普通の感覚です。

それを形だけ引退したように見せかけ、退職金だけ有利な税制で受け取ることは許しませんよと言うことが課税当局の意図するところです

退職金は過大でない限り法人としては損金算入が認められます。また受け取った役員にしてみれば通常の所得税から見ると退職所得控除があり、残りの額の半分が課税対象になります。

その上分離課税となっていますから半端な有利性じゃないのです。それだけに課税当局としても退職金に関しては微に入り細に入り厳しい見方をするのです。

注目すべきは「法人税基本通達9-2-32」です。以下引用です。
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
 (1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
 (2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。
 (3)分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人
の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

何を言っているかということを一言でいうと「実質的に引退したかどうか」ということを損金算入の条件にしているということでしょうか。

会社には毎日来ていないが、家に経理部長を呼びつけて決済している、幹部には家から携帯とメールで叱咤指示しているというケースは口裏を合わしても隠ぺいするのは難しくなるでしょう。

実際のケースでは優良申告法人などでは未だに退職金でも形式要件さえ満たしていれば大目に見てもらえるという暗黙の了解のような感覚が経営者にあります。

経営者の本音からすれば未熟な後継者に経営の実権をゆだねると幹部連中が増長して会社の存続を危うくするから、自分が目を光らせていないと心配でならない。

そんなもん税務署が何やかや言ったところでいざというとき助けてくれないのは銀行と同じ、会社が立ち行かなくなったのではとても引退どころではなくなってしまう。

軌道に乗るまで見守るのがいかんわけがない。という理屈も首肯できないこともないです。

ただ見方が厳しくなる傾向にありますから形式要件だけでなく実質的な要件にも十分配慮して思いつくままにアバウトでやらないことです。

そこの押さえがきちんとできていて退職金が認められることは会社にとっても経営者の事業承継・相続設計にとってもすこぶる重要な要件なのです。

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