相続時精算課税制度がとことん悩ましい本当の理由。

相続時精算課税制度とは何か、メリット&デメリットをまとめました。

問題提起:相続税の仕組みの中でもわかりにくく、かつ使いにくい制度の一つが相続時精算課税制度です。実際の現場でもあまり一般的ではありません。

検索エンジンでやたら検索数が多いのもこの相続時精算課税制度の仕組みの難しさを表していると思います。

しかし読んで字のごとくといいますが、漢字の良いところは見ただけで「相続時精算課税」何となく意味が解ることでしょうか。

確かに相続の時に改めて精算し課税ますよという制度です。何故このような制度が出来たのか、メリットとデメリットを素人視点で〔hokenfp〕がまとめてみました。

できるだけ懇切丁寧に、かつ詳細に相続時精算課税をわかりやすくすることを心がけましたが一応の専門家ではありますが、噛み砕けていないところは順次修正するということでお許しください。

◆基本的な相続時精算課税制度のルール

・60歳以上の両親、祖父母から20歳以上の子や孫への贈与に適用(贈与年の1月1日の年齢)」

・2500万の特別控除(一時的に非課税でも相続時にもち戻し精算)

・2500万を越える部分は一律贈与税20%(一時的税率、相続時にもち戻し精算)

・何でも、いくらでも、何回でも贈与可能(現金・不動産・保険・金融資産全般)

・贈与税の確定申告必要、相続時精算課税制度選択届出書、他証明書類(贈与年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告)

・最終的に相続税が基礎控除内なら申告不要、贈与税を納めていれば確定申告で還付金

・相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与には戻れない。

暦年贈与は受贈者(もらう人)単位の基礎控除(110万円)であり課税です。しかし相続時精算課税制度は、暦年贈与に後戻りできない代わりに両親だけでなく祖父母からの贈与もOKですから贈与者単位で何本も走らせることができます。これは暦年贈与と相続時精算課税制度の本質的な違いです。

養子縁組を利用すればさらに相続時精算課税制度が可能です。1対1の贈与でかつ不可逆的(後戻りできない)な相続時精算課税制度です。

①相続時精算課税制度の勘違いするポイント

相続時精算課税制度を使う場合よほどしっかり制度を理解してからでない勘違いしそうです。

これは相続税のかからない人が贈与税をかからないように資産移転するときとか、事業承継・相続設計で評価を一時的に下げた自社株を一気に贈与するときなどに意味があります。

普通の相続税がかかるような相続のケースでは暦年贈与でこつこつ渡していくほうがよほど相続時精算課税制度より節税効果は高く確実です。CIMG2012

この相続時精算課税という仕組み自体の適用範囲が狭いこと、非課税という言葉が出てくるのに実際は節税効果が期待できない仕組みであること、手続きが煩雑なことなどが影響してどうも勘違いが多い相続時精算課税制度となっています。

②相続時精算課税制度のわかりにくさの原因

2500万円まで非課税などと書けば普通の人は勘違いするにきまっています。その2500万までの特別控除額を越える部分の相続税は一律20%といえばこれまた勘違いの原因になります。とにかく「相続時精算課税制度」節税効果はないのです

相続時精算課税制度で受贈した財産が値上がりしてもそれは制度としての節税効果ではなく投資の運用成果です。

暦年贈与とは本質的に方向性の異なる実にややこしい制度なのです。相続時精算課税制度の狙いは親から子への早期の資産移転を目的としていますから、まずはその面でのメリットを見ることです。

③相続時精算課税制度は誰にとってメリットがあるのか

将来的に値上がりが確実なものがあれば相続時精算課税制度は有効な手法です。

相続税の申告時点での評価が固定するので相続時に値上がりしていても相続税評価には関係がありません。

もちろん逆にどれだけ下がっていても見直しはありません。でもまあ考えてみれば確実に値上がりする相続資産があるのでしょうか。

債券にしても不動産にしても値上がりを保証することなど誰にもできないと思います。

採算の取れている賃貸の収益物件などは、将来的に安定した家賃収入が見込める物件であれば相続時精算課税制度が有効とは言えますが、相続発生が10年先か20年先か、もっと先かということになればその時に果たして価値ある物件であるかどうかは誰にもわかりません。

この辺、メリットが見えない制度たるゆえんです。結論の出るのがずっと先になるところが相続時精算課税制度のわかりにくさの一因でもあります。

実はこの相続時精算課税制度は贈与財産の種類、金額、贈与回数の制限はないということになっています。とすれば生命保険にも使えるわけです。

どうしても専門的になる部分があるのでお許しいただきたいのですが「資産運用型保険」などは相続時精算課税制度を使うなら名義変更譲渡にちょうどよい生命保険になります。

契約者 :            親(被相続人)  被保険者:親         受取人:子
これを契約者 : 子                      被保険者:親    受取人:子

に名義変更します。契約者の変更ですから贈与税の対象になります。この変更は税務署に支払調書はいきません(平成30年1月1日より支払調書は提出されます。)が、自主的に解約返戻金相当額で相続時精算課税制度を使い申告し贈与してしまう手です。

さて生命保険としては商品にもよりますが150%前後の相当なレバレッジが効いていますから十分価値があるように思います。

ただし贈与を受けたつもりでも解約返戻金相当額は相続財産にもち戻して相続税が課税されます。

CIMG2032やはり一番よいのは暦年贈与で金を渡して買い取らせるとか、後継者なら役員報酬を増額するなり貸付けるなり、逓増定期の名義変更で資金移動を進めるなりの手立てで買い取らせるのが税制的にもベターではあります。

ただ相続税対策上、のんびり暦年贈与をしている時間がないとか、逓増定期の名義変更はどうも安心できないという向きには一気に方がつく相続時精算課税制度はあるかもしれません。

④そして相続税がかからなくても相続時精算課税制度の思いがけない使い道

養老保険の満期金の受取でも契約者以外が受け取る場合は贈与になり基本的に贈与税が発生します。でも相続する財産もなく相続税もかからないのに贈与税は払う気にならないところです。

そんな時には思いがけないというか、まさかの相続時精算課税制度の出番になるわけです。普通、相続時精算課税制度をこんな使い方をしているかどうか、検索だけでは読み切れませんでしたが、税務署は間違いなくあなたが満期金を受け取ったことを生命保険会社からの支払調書で知っています。

税務署は調査権限(正しくは質問検査権)があります。あなたを含め家族名義の金融機関のお金の動きはすべて把握できますから実際逃げ場はないのが本当のところです。

税務署からお尋ねというか通知が来る前に相続時精算課税制度を利用して贈与税の申告をしてしまうことですね。

なにしろ2500万までは非課税ですから。その後相続に突入して相続財産が基礎控除以下なら本当に完全な非課税になります。これならなるほど制度的な意味があります。

同様の手口でといえば言い方は若干悪いですが、相続税がかかるかどうか以下の小金持ちの親御さんは子供の住宅購入資金でもローンの支援でも相続時精算課税制度を使い非課税で贈与するのが利口な方法です。

ただ相続時精算課税制度には住宅取得資金の贈与という別枠があります。あわせてご利用いただくと結構高額なマンションが買える金額になります。(いろいろ制約条件は付きますが、最後の紹介しているリンクをご参考に。)

ただし注意事項です。一つは住宅取得資金とローンの返済は同じではありません。住宅ローンの返済は取得後の借入金返済ですから住宅取得資金ではないそうです。

子供の住宅ローンの返済を相続時精算課税制度で支援したければ現金を贈与し相続精算課税制度で非課税とすることです。(嫁の親が支援する場合は、娘の亭主の名義のマンションでは親子関係がないと相続時精算課税制度は使えないことになります。

娘に相続時精算課税制度で一括贈与し、娘が亭主に貸し付けて定期的に返済させるような回りくどい方法になりますが仕方ありません。)

⑤相続時精算課税制度を事業承継に本格的に利用するケース

相続時精算課税制度が最も有効に使えるのは中小企業の事業承継・相続設計です。とくに自社株を生前に後継者に贈与するときに威力を発揮します。

長年にわたり利益が出てきたような中小企業は内部留保が膨らみ、知らないうちに自社株はとても高くなっています。

新株予約権付社債の発行やら役員退職金の支給などで自社株評価を下げて相続時精算課税制度で贈与税を払いつつも一気に後継者に贈与してしまいます。

若き後継者には意欲はあっても自社株を買い取るような資金はありません。

贈与税の納税資金を含めて贈与する必要があります。何の対策もしないで相続発生まで持ち越すと自社株は時価で評価され莫大な相続税ということになりかねないのです。これは相続税対策としても大きな意味があります。

⑥相続時精算課税制度の手順と必要書類

また相続税がかからなくても相続時精算課税制度は税務署への申告が必要です。

この辺の判断や考え方、申告手順まで踏み込んで解説します。贈与税の申告は前年一年の受贈分を受贈者が2月1日から3月15日までに税務署に申告します。

相続時精算課税制度では、申告書の他に「相続時精算課税選択届書」を提出します。

それ以外の書類です
・受贈者の戸籍謄本(受贈者の氏名、生年月日、推定相続人である子又は孫であることを証明する書類)
・受贈者の戸籍の付表の写し(受贈者が20歳に達した以降の居所を証する書類)
・贈与者の住民票の写し(贈与者の氏名、生年月日、60歳に達した以降の居所を証する書類)
とまあいろいろそろえなくてはいけないわけです。たびたび提出する書類でもないのでその都度の確認が必要ですが、つまらない贈与税を払わないためにはそれなりの手間が発生します。CIMG2005

相続時精算課税制度をできるだけわかりやすい言葉で事例を交えて説明しましたがいかがでしょう。

もともとの制度の趣旨から外れていろいろな用途が発見され広まっていきます。まだまだ使い道はアイデア次第のようにも思います。

今どきの一時払い終身保険は予定利率が地に落ちて(1%以下)相続時精算課税制度を使って贈与するほどの価値もありませんから生命保険では活用範囲がかぎられてしまうようです。

まとめとしてご案内させていただくと。右サイドバーのカテゴリーをクリックいただくとプルダウンメニューになっていまして、その中の「贈与と保険」を選択いただくと相続時精算課税制度に関する情報を別の角度からまとめたページを見ていただくことができます。よろしければご覧ください。

相続時精算課税制度に関するページです。ご参考までに。

◇相続時精算課税制度をデータで見ると意外な真実。

◇孫への相続時精算課税制度の適用は踏んだり蹴ったり。

◇相続時精算課税制度 | 貧乏人の怖い落とし穴5つを解説

◇相続時精算課税制度対比表 | 選択の特例と住宅取得等資金の非課税制度

◇相続時精算課税制度の使い道マトリックス。

◇相続時精算課税制度の節税効果を庶民視点で徹底検証

◇相続時精算課税制度の意外な使い道があった、その手でローン完済!

◇相続時精算課税制度は節税できる仕組みではない。

◇結婚・子育て資金の一括贈与の意味不明。

◇生前贈与でもめずに節税できるはずがない。

 

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