「遺言信託」と「遺言代用信託」の違い。

「遺言信託」と「遺言代用信託」の活用法と違いについて。

日経新聞に遺言信託と遺言代用信託についての記事が掲載されていました。庶民には、信託という言葉そのものがわかりにくい仕組みです。保険とは直接関係ないですが、争族予防システムと言う意味では保険のようなものです。

遺言信託と遺言代用信託とは相続に関係するという点と、読んだ文字面ではとてもよく似ていますが、内容的には全く別物です。遺言信託は相続税がたくさんかかる資産家で費用がかかっても自分の死後、遺言をきっちり執行して欲しい方向けの仕組みです。主に銀行や証券会社が資産家の社長向けに提案してきます。

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遺言代用信託は委託者からお金を預かり、生前に決めておいた方法で、指定した受取人にお金を払いだす仕組みです。遺言代用信託で預けたお金は、相続の引き出し制限から外れるので、受け取り方を一括払い出しにすれば葬儀代に当てられます。

分割にすれば相続財産を一気に渡すのではなく、年金形式で渡すこともできます。信託先によって違いますが、今のところ手数料はかからないそうなので、比較的手軽に利用できるようです。利用者が急増しているというのも納得できます。

◆遺言代用信託のわかりやすいサイトです。

遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

1)遺言信託について。

遺言信託の料金体系は各社バラバラですが、基本料金の他に財産の多寡による費用と、相続が発生するまでの期間の維持費用がかかります。普通に遺言を書いて揉めない家庭なら、誠にもったいない費用がかかります。しかし税務や相続のプロが遺言に基づき、きっちり執行しますから確実です。ただし、相続税の節税対策とか争族になりそうなケースは、受けてもらえないそうです。遺言管理と執行処理に限定されるようです。

しかし、そのためには依頼する金融機関に自分の資産状況を洗いざらいさらけ出さなくてはなりません。当然金融機関もビジネスですから、資産活用やら生命保険やら、相続対策を提案する糸口になります。それがいやなら自筆証書遺言か、もう少し確実な公正証書遺言でもよいように思います。

最近では証券会社が、料金の安い遺言信託を提案しています。遺言信託で儲けるのではなく、手に入れた情報で金融商品を提案して利益を得る戦略ですが、どうも乗りにくい話です。また遺言信託は毎年遺言の見直しにつき合ってくれますが、当然有料です。金融機関が責任を負いますから、担当者が変わってもそこは安心できます。相続対策をあてにしていた税理士の先生が、先に亡くなるような仕切り直しの不都合はありません。

でも感覚的に遺言信託に踏み切れない資産家の事情と気持ちがよくわかります。結局は、相続人としての後継者の知的な資質と人間性に対して、信頼があるかどうかになりそうです。ただお話を伺うオーナー経営者は、もっと読みが深いのです。相続のその場になると人が変わるということ、善人が欲ボケしてしまうということがあります。それはいくら我が子でも、また今はそうは見えなくても、お金という財産の前には、執着心を捨てることなど出来ないと読み切っておられます。

さてどうするか、遺言信託にも迷いが残りますが、このまま年を重ねるばかりでは安心したて旅立つことができません。おすすめは自分でまずざっくりと遺言書と財産目録を書いてみることです。そうすれば自筆証書遺言で済むか、公正証書遺言が必要かがわかります。どうも心配が残るのでこの際、遺言信託を選択すべきかが見えてくるように思います。

2)遺言代用信託について。

一方、遺言代用信託は貧乏人向き(相続税がかからない一般人)の仕組みと言えそうです。もちろん資産家でも利用価値がないことはないですが、葬式代が立て替えられないレベルの相続人用ですね。扱える金額が100万円~3,000万と少額になっています。

葬式のタイプも最近はいろいろですが、家族葬とかでないかぎり、お供えもありますから葬儀費用はその中から払えることが多いのではないでしょうか。葬儀屋も死亡届を出す前に必要なお金を下すようにアドバイスしますし、香典開きの後に集金にくるようです。

しかし香典を辞退にすると、やはり持ち出しが多くなりますから、ある程度の葬儀費用としての資金を用意しておく必要があります。突然の事故のようなことでなければ予測できますから、前もって現金をおろしてきて手元におくようにできます。

普通はこれで回りますが、遺言代用信託を利用すると相続人死亡後もその範囲でお金を自由に下せるそうです。(利用したことはありません。)相続発生時の金融機関の対応は素早いですから、本当に現金が下せなくなります。田舎の郵便局やらJAなら多少の融通は利かしてくれますが、一般の銀行には通じない話です。

そういう意味からご心配な被相続人は、自分の葬儀費用で遺族が困らないように遺言代用信託と言う選択もあります。まさに一種の葬儀費用保険みたいな性格です。

3)遺言代用信託と生命保険金について。

最後に遺言代用信託と生命保険の違いを追加しておきます。生命保険金は受取人固有の財産ですから遺留分侵害額請求の対象になりません。

◆生命保険の受取人変更12の実務ポイントをどこよりも詳説。

しかし遺言代用信託で受け取ったお金は、遺留分侵害額請求の対象になりますから、例え相続税がかからないとしても、他の相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。

昔は相続における遺留分などの知識は、もっていない人が多かったのですが、最近はネットの発展で誰でも簡単に調べられるようになりました。

その結果かどうか知りませんが、貧乏人の相続訴訟件数がやたら多い時代になりました。貧乏人ほど遺産分割は、慎重にと言えると思います。そういう方にとれば自分の財産をあげたい相続人に確実に渡す手段としては、遺言書よりも確実な生命保険の受取人指定と遺言代用信託は使える手です。

■遺贈と贈与・相続人と受遺者の違い、ここを具体的にくわしく。

4)まとめ

ご案内したように遺言信託と遺言代用信託とは利用者層が異なるだけでなく内容的にも違うものです。

遺言信託はどうしてもかなり費用がかかります。

遺言代用信託は無料です。どちらも便利なようで迷いが残る仕組みです。

ある程度お年を召して先が見えたころにエイヤ!で選択することになるように思います。元気なうちには踏ん切りがつかない気持ちもわかります。

相続の場面では、奥様やお子達の関係がよくても難しいことはいくらでも起こります。相続が発生したそのときには、すでに自分の発言権はなくなっているのですから、そのことをお考え下さい。

遺言信託や遺言代用信託をおすすめしているのではなく、きっちりとした自筆証書遺言をできるだけ早めにお書きになることをおすすめしています。自力できちんと遺言がかけるなら、遺言信託は結構な金額のムダ遣いになるかもしれません。

遺言書の法務局保管制度は自筆証書遺言が検認不要、費用激安。

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