相続┃特別受益持ち戻しの恐怖。

相続対策、特別受益持ち戻しの恐怖について。

相続対策には万全はありません。あの手この手で対策をしても家族や後継者の思いと必ずしも一致しているとは限らないからです。

cimg2531相続税対策でも課税当局との見解の相違ということがあります。特に相続対策では抜けや落とし穴があります。

相続発生時点ではすでに責任の取りようがないし、やり直しもききません。出来ることは生前により慎重に対策し運を天に任すほかないのです。

特によく見られる相続対策の落とし穴について経験をもとに解説します。

事業承継、特別受益の泥沼相続。

◆相続対策に万全はない。

事業承継と相続設計に早くから取り組み後継者に着々と自社株を贈与して、相続時にもめることがないよう他の兄弟には相応のものを生前贈与されている慎重な経営者がいらっしゃいます。

もちろん相続税対策の生命保険も万全に備えておられます。

金融機関や税理士法人などが開催するセミナーにも足繁く通って資産同様に知識も豊富です。

しかしながら相続には落とし穴があります。

計画通りにことが運ぶとは限らないのです。いくつかのポイントを申し上げます。遺留分、特別受益、寄与分、そして心変わりです。ここを押さえておかないとせっかくの相続対策が台無しになることがあります。

遺留分放棄を後継者ではない子にさせることは違法か。

◆わかっていても遺留分に注意。

遺留分は残された家族への相続の最低限保障です。法定相続の半分が民法で規定されています。遺言書で遺産分割を指定しても遺留分に配慮しないと不満のある相続人から遺留分減殺請求を起こされてしまいます。

事業承継では後継者に自社株や資金を集中すると遺留分を侵害することがあります。

対策を講じて自社株評価を下げて後継者に贈与して、贈与税の納税も終わっているから大丈夫とお考えの経営者がいらっしゃいます。

遺留分の計算は相続発生時の財産だけではないのです。では相続発生前の3年間の贈与をもち戻せばよいか、それだけでもないのです。

◆特別受益もち戻しの恐怖。

前項からの続きになりますが、遺留分の計算は相続発生時の財産だけでなく特別受益とよばれる生前贈与も加算対象になります。

家を建ててもらったり、結婚資金をもらったり、海外留学資金なども特別受益とみなされる場合があります。

でも一番怖いのは後継者に贈与した自社株です。

いろいろな対策で自社株評価を大幅に下げて後継者に生前に贈与した場合、遺留分の算定は贈与時の価格ではなく相続発生時の自社株評価でもち戻しになるのです。

これは特別受益もち戻しの恐怖と私は呼んでいます。かといって遺留分放棄させるというのも実はハードルが高いのです。

◆ 遺留分放棄を後継者ではない子にさせることは違法か。

念のため追記すると、生命保険の保険金が特別受益に当たるかどうかは微妙な問題があります。生命保険金受取人固有の財産というのが判例により定着してきていますが、特別受益かどうかは他の相続人との関係によります。

◆生命保険の受取人変更12の実務ポイントをどこよりも詳説。

◆お金を前にすれば心変わりはやむなし。

現実の相続を見れば、一番怖いのは特別受益もち戻しよりも「心変わり」といえるでしょう。

財産があってもなくてもお金を前にすると人は別人になります。

cimg2501長男に会社を継がせるため相当の財産と自社株と生前に贈与し、他の兄弟には孫の教育資金やら家の頭金を贈与しそれなりの配慮をしたつもりという場合があります。

後継者以外の兄弟姉妹は親の生前は意向に従っていますが、いざ相続が発生すると背に腹は変えられないとばかりに自己主張をしてこないとも限らないのです。

誰しも財産というお金はいくらあっても困りません。お金を前にすると人の心変わりはやむなしともいえるでしょう。

そういうものだと思って対策をすることです。できることは遺留分に配慮した有効な遺言書をきちんと書くこと、そしてその中で特別受益もち戻しの免除を意思表示することです。

◆遺言書とはグレーなものに白黒をつけること。

◆まとめ

寄与分については今回のテーマからそれますので別の機会とします。

相続対策がうまくいくかどうかは人の気持ちをどう読むか、どう考えて配慮するかに尽きるように思います。もちろん相続税がかかるか、かからないかにかかわらず、です。

本稿では遺留分に対する配慮、特別受益もち戻しの恐怖、心変わりは前提条件として織り込んだ相続対策を申し上げました。

ある程度相続対策をしてこられてオーナー経営者を想定しておりますので、筆足らずで実務的なことは割愛しております。詳細なサイトは山のようにありますのでそちらをご参照ください。

特別受益と遺留分減殺請求は経営者の落とし穴。

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