生命保険の支払調書で隠れ贈与がバレバレに!

生命保険の支払調書で隠れ贈与がバレバレに!

過去の記事で、生命保険の支払調書の改正についてくわしく書きました。今読み返してみるとわかりやすく書いたつもりが、すっきり頭に入ってこないのです。

これでは読まれる方も大変だと思いますので、もう一度頭をやわらかくしてやさしく、わかりやすい説明を心がけました。生命保険の支払調書にまつわる贈与税の不安を、少しでも軽くできればうれしく思います。

■生命保険の支払調書が危ない理由。

今回の生命保険の支払調書の改正は、庶民のみなさんには影響が大きいはずだと思うのですが、あまり理解されていないように見受けます。

生命保険の営業をされる方でも、ちゃんと問題点を説明できないのです。これではいけないと反省し、あらためてシンプルでわかりやすくポイントをしぼりこみました。

生命保険の契約者変更(名義変更)は、お金が動いていませんが贈与になります。

贈与は年間110万円の基礎控除を越えると、贈与税を申告して納税する義務があります。所得税か消費税ぐらいしか縁のない庶民には、ピンとこない税金です。

しかしそれでも納めないと、言い方はよくないですが脱税ということになってしまいます。気がつかないうちに贈与になっているということもよくありますから、注意が必要です。

・相続税がかからなければ、贈与税はクリア。

生命保険の名義変更をされた方は贈与税がかかるのではないかとご心配されることもあるかと思います。しかし相続税の基礎控除が下がり裾野が広がっても、庶民では9割以上の相続で相続税はかかりません。

相続税がかからないのであれば、贈与にならないよう注意し、相続で受ければ贈与税はかからないことになります。

相続税がかかるくらいであれば、適正に申告されることが大事です。しかし、多くの契約者変更では、贈与税がかかることを考える必要はあまりないということです。なぜそうなるかを、わかりやすく、踏み込んでご案内します。

◆ 生命保険は契約者の財産。

生命保険は契約者がお金を払いますから、契約者のものです。体を提供する被保険者のものでも、保険金受取人のものでもないのです。

契約者が毎月、毎年保険料というお金を保険会社に払うことで成り立ちます。保険料を払っていない人が名義変更で新たに契約者になれば、生命保険契約を手に入れたことになります。

生命保険という財産の所有者が変わりますから、これはまぎれもない贈与ということになります。

実際はお金が動くわけでなし、手元に保険証券さえいらない時代です。新たな契約者にしても、お金をもらったという実感がなくて当然です。この辺のたよりない感覚のなさが、贈与として大金をもらったという気にならない原因なのでしょう。

◆ 契約者を親から子に変更すれば贈与。

いちばんわかりやすい例でいうと、親が子に保険をかけて保険料を払うことはよくあります。ある程度の年になれば、契約者を親から子に変えて子が保険料を払うようになります。

社会人になって、いつまでも親が保険料を払っていれば、やはり贈与といわれても仕方がないところです。極端な例でいうと親が子を被保険者として、一時払の終身保険を1,000万かければ、契約者は親です。

後に子に契約者を変更すれば、そのお金のもち主は子に変わります。

解約するなど生命保険に関する権利は、すべて契約者について回ります。新たな契約者である子は、解約してそのお金を自由に使うことができます。それゆえ、契約者を変更すれば贈与になります。

◆ 贈与には贈与税。

たとえ親からでも1,000万をもらうと、もらった子は贈与税を払わなくてはいけないきまりです。贈与税の基礎控除は110万円までです。それ以上は納得できるかできないか、そんなことは関係なく税務署は贈与税の支払を求めてきます。

贈与税は知っていても自分が払うとなると、さすがに納得できないものなのです。貧乏人にとればまことに理解不能、理不尽な税金です。

サラリーマンのように所得税は給料から天引きされ、納税意識が薄いほど贈与税の申告はハードルが高くなります。

庶民でも資産家でも、贈与には贈与税がかかります。贈与税が納得できるかどうかは問わないのです。法にしたがい納税しなければ責任を問われるという仕組みになっています。

◆ 税務署は生命保険会社からの支払調書で贈与を見つけます。(契約者変更=名義変更)

これまで税務署は、支払調書で生命保険の名義変更を知ることはできませんでした。

しかし、平成30年の支払調書の改正から、税務署は居ながらにして生命保険の契約者変更による贈与の実態を知ることができます。

いつ名義変更を行おうとも、何回名義変更を行おうとも逃れすすべはありません。すべて生命保険の贈与に関係する契約者変更は、税務署が把握するところとなります。

生命保険会社は、確実に生命保険の名義変更の事実を支払調書により税務署に通知します。

一方税務署にすれば、支払調書の内容によっては、いくら忙しくても贈与とわかれば放置することはできないことになります。ここに今回の支払調書改正ねらいの一つがあります。

◆ 贈与に対する税務署の考え方は保険がお金にかわったとき。

かりに契約者変更をしても、生命保険が解約返戻金などのお金に変わらない限り支払調書はいかないことになっています。

税務署の考え方は契約者変更のときが贈与ではなく、生命保険契約がお金に変わるとき贈与と考えます。

契約者変更をして税務署から何のおとがめもなくても、それでは安心できないのです。

契約者変更をしても、名義を借りて保険契約をしているだけで名義預金と同じと考えられます。実質的なお金の所有者は元の契約者と判断されます。

よって契約者変更により贈与をしたつもりでも、贈与税の時効(原則6年、意図的7年)が開始しないというやっかいな問題が残ります。

生命保険契約がお金に変わるとき、いわるゆる出口課税ということがあります。名義変更したからと言って、贈与税の申告をされても税務署は困るわけです。

納税するというなら納税を拒むことはないと思います。しかし納税する必要がないのに贈与税の申告をすることはないわけです。

結局、生命保険契約がお金に変わるとき、生命保険金や解約返戻金に変わるとき、納税申告の必要があるか判断することになりそうです。

◆ 平成30年から支払調書がくわしくなりました。

平成30年1月1日から支払調書の記載事項が改正になり、より詳しく報告されることになりました。結論的にいえば2点に集約されます。

・契約者死亡時に異動調書。

まず一つ目は相続が発生すると、生命保険がお金にかわっていなくても支払調書が発行されます。この場合は異動調書となります。

つまり契約者は被相続人ですが、被相続人が被保険者でない契約では生命保険が、死亡保険金に変わっていません。みなし相続財産として解約返戻金相当額で評価され、契約者変更の経緯はすべて支払調書により税務署に知れることになります。

・現契約者の負担保険料と契約者変更回数。

今ひとつの改正は生命保険がお金にかわったとき、支払調書は契約者変更の回数と現契約者(最終契約者)が負担した保険料を支払調書で報告します。

何年前に契約者を変更しても贈与税の時効は開始しません。契約者変更による保険料負担者が税務署に報告されれば、明確な贈与です。税務署としても税の公平という立場から放置することはできなくなります。

税務署は支払調書が届いた時点で、贈与税か相続税かを判断し申告がされていなければ、お尋ねすることになります。

◆ 生命保険の契約者変更(名義変更)は完全にバレます。

これまで見てきたように、今回の支払調書の記載事項の追加はスキがありません。

これまでの保険業界の名義変更のような安易な契約者変更は、すべて網がかかる可能性があります。

そうすれば、多くのこれまでの保険契約の名義変更の実態が白日の元さらされることになるのでしょうか。

細かい話ですが、平成30年1月1日以前の生命保険契約における異動の記録はこの対象ではないということですから、訴求はされないことになっています。

◆ 生命保険の隠れ贈与、まとめ。

今回の支払調書の報告内容の改正は、抜かりがありません。課税当局の積年の念願が実現したような形です。生命保険契約の契約者変更(名義変更)に関しても贈与税の対象としてきちんと目を光らせていますよということです。

しかし実態から考えると、相続税の基礎控除がさがり裾野が広がっても、庶民では9割以上の相続で相続税はかかりません。そもそも契約者変更で贈与税がかかることを考える必要はあまりないということです。

相続税を節税するなら、暦年贈与と生命保険の組み合わせがベストです。

契約者=子、被保険者=子で保険料を親が子に毎年贈与します。もちろん贈与税の基礎控除110万円以下で行うと手間がかかりません。

生命保険の契約者変更を無事に乗り切っても、お金にかわるとき贈与の事実はバレバレになります。相続税がかかるかどうかは微妙なケースもあります。そういう方は、そのときあわてるより、早めの時期から暦年贈与をご検討ください。

生命保険、支払調書の抜け穴をOB税理士に確認。

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