事業承継に既契約の生命保険が強い味方になる理由。

事業承継に既契約の生命保険が強い味方になる理由。

会社を存続させるためには、経営者の代替わりである事業承継は避けて通れません。会社で契約する生命保険は事業承継の強力な味方になります。

現経営者の万が一により、突然の事業承継となったような場合でも、運転資金不足や自社株の買取資金などに生命保険金が威力を発揮します。

事業承継では、スムーズな経営権の移譲だけでなく、後継者への自社株の移転や経営資金の集中などが必要になります。

事業承継を円滑に進め、経営の安定を図るためには、新規に生命保険契約を考えるだけではなく、以前から保険料を払いつつ継続している既契約の生命保険活用も重要なポイントになります。

昔に契約している生命保険契約は、予定利率が驚くほどよいものがあります。有効に活用すれば事業承継の大きな助けになりますから、そのポイントをまとめました。

保険営業や保険代理店にとれば、新規契約か契約転換でないと成績になりませんから、昔の生命保険の有効活用はあまり踏み込まないところです。

ところが、ここに今では考えられないようなお宝ともいうべき保険があり、保険を後継者に譲渡するテクニックが使えます。事業承継をひかえた中小企業のオーナー経営者や事業承継にかかわる方の参考になれば幸甚です。

■経営権移譲の難しさ、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者。

◆ 法人保険は事業承継と相性が抜群。

どこの会社も事業承継の時期になると、保険契約の内容の見直しが必要になります。

後継者あるいは新しい役員を被保険者とした新たな事業保障を確保するために、新規の保険加入を検討します。そうなると先代経営者を被保険者とした昔の生命保険の処遇が問題になります。

その時点で先代経営者は会長か相談役か、あるいは引退かはわかりませんが、第一線を退くと思います。その結果、経営権を後継者に移譲することになります。

そうすると会社としても、事業保障として必要性が低くなった法人契約の生命保険をどうするか、ということが問題になってきます。

会社契約の生命保険の場合は、下記のような契約関係になっていると思います。

契約者=会社

被保険者=先代経営者

受取人=会社

被保険者=先代経営者が万が一の折、会社が生命保険金を受取るようになっている契約です。

いくつか法人契約の生命保険を長年かけていれば、その中には払込満了(保険料の支払が終わること)の保険、保険料の支払いが継続している契約などがあると思います。それぞれによって処理が変わってきます。

これ以上保障が必要ない場合は、解約を検討することになりますが、解約するだけでは生命保険の特性とメリットを生かしきれているとは言えません。

古い時代の生命保険は、その機能をうまく活用することで事業承継や相続設計に組み込むことができます。法人保険は事業承継と、とても相性がよいのです。

■事業承継の失敗事例は、経営権の移譲ができない意外な理由。

◆ 引退する経営者の生命保険を整理。

会社には経営者がいますが、いつかは必然的に経営権を後継者に譲らなくてはなりません。企業を安定的に継続するためには、円滑な事業承継が求められます。

経営者が会社の責任を負っているときは、相応の事業保障が必要です。しかし権限を後継者に移譲すれば責任が軽くなりますから、必要な事業保障も見直しを必要とします。

後継者が育ってきて社長の座を運よく譲ることができれば、それまでの経営者にかけていた生命保険は役割を終えることになります。新しい経営者に事業保障を集中し、それまでの先代経営者を被保険者とした生命保険は整理する必要が出てきます。

引退する経営者を被保険者とした生命保険は、会社の状況や契約内容にもよりますが、以下の選択肢が考えられます。

・払込満了の終身保険は会社で保持する。

・長期定期保険は解約するか払済を検討する。

・医療保険は引退する経営者に支給を検討する。

・解約して経営資金に充てる。

・解約により多額の雑収入が見込まれるときは役員退職金に充当する。

・後継者や相続人に有償譲渡する。

役割を終えた生命保険は、その後の活用次第で経営上のキャッシュフローや事業承継の大きな助けになります。払込を終えた終身保険であれば、被保険者である先代社長が亡くなったときに保険金に変わります。

定期保険の場合は、解約返戻金の有利な時機を見て解約するか、払済にする手を考えます。

また多額の雑収入が見込まれる保険は、引退する社長の退職金支給を検討します。せっかく損金で課税を繰り延べしてきたわけですから、しっかり出口対策を行って無用な税金を納めすぎないようにします。解約返戻金が大きければ雑収入も大きくなりますので、解約のタイミングを合わせます。

引退する社長の医療保険は、会社でもっていても意味がなくなりましたので、役員退職金として現物支給することを考えます。

■経営者の運が会社の運命を決め、社員とその家族の運命を左右する。

◆ 後継者への有償譲渡が美味しい理由。

なかでも意外な盲点が、後継者への有償譲渡です。ベテランの保険代理店でも会社契約の保険を個人に名義変更すると言えば、引退する社長である被保険者に退職金として現物支給すると考えてしまいます。

これまでの経営者に法人契約の生命保険を退職金の現物支給とすれば、退職所得税がかかり、相続発生時には保険金が相続税の課税対象となります。解約すればキャッシュにはなりますが、死亡保険金ではないので額は大幅に少なくなることが多いと思います。

一番お得な名義変更は、先代経営者が被保険者の保険の契約者を、会社から後継者へ変更することです。後継者への有償譲渡になりますが、この手法が有利であるという理由は、先代経営者死亡時の保険金が、相続税の課税対象とならない点です。

有償譲渡すれば、財産としての生命保険の所有者(契約者)が後継者になります。このため相続発生時に受取保険金から、買い取り資金を引いた額が一時所得となります。一時所得は50万の基礎控除があり、差額としての儲けの半分は非課税となりますからかなりお得になるのです。

◆ 後継者へ買い取り資金の集中と融資。

法人契約の生命保険の解約返戻金は、長年の積立ですから結構巨額になっていることがあります。後継者には早くから買い取り資金を集中することが必要です。

役員報酬を増額したり、贈与を活用したりします。あれこれ手はありますが、資金が足りない場合は、買い取り資金を会社から融資するか、金融機関から借りる必要があります。後継者には資金がありませんから返済は、役員報酬の増額とか、親からの暦年贈与でまかなうことになります。

これで予定利率のよい、レバレッジの効いた保険を後継者が手にすることができます。もちろん保険金受取人は後継者に指定します。

・たとえばの例をあげます。

某国内生保大手の契約です。

保険種類:定期保険付終身保険

被保険者:先代経営者

契約者:法人→後継者に有償譲渡

保険料:払込満了(定期保険部分はなくなり終身保険が残っています。)

契約日:S60.11.20(予定利率が5.5%)

保険金:5,000万(終身保険です。)

解約返戻金:3,200万

これで、後継者は3,200万を負担しますが、相続発生時には保険金5,000万を手にすることができます。相続税にはかからず、差額の1,800万は、後継者の一時所得です。

さらに予定利率がよい時代ですので、解約返戻金の増え方も半端ではありません。先代経営者の退職金として支給すれば、保険金は相続財産となり、相続税が課税されます。この違いはかなり大きいと言えます。

ミソは相続発生時に資金に変わりますが相続税の対象ではなく、後継者の個人的な資金となります。

古い保険ほど予定利率が高くレバレッジが効いているので、差額が大きくなり資金移動としての価値が高くなります。

最近の予定利率は1%以下で、たとえばある国内生保では0.85%などとなっており、古い時代の契約が、いかに予定利率がよいかわかります。

◆ 事業承継に既契約の法人保険活用、まとめ。

法人保険は、事業保障と退職金準備を兼ねるケースが多いと思います。今では費用化できる割合に規制が入り、保険料を損金で落とせる比率が少なくなりました。

それでも保険料を費用で落とし、税金を回避しながら簿外に資金を蓄積出来れば有利です。通達が発遣される前の契約では、まだ全額損金や半額損金が、既得権として認められている契約も多数あると思います。解約するとそれまでに払い込んだ保険料が、解約返戻金として戻ってくるので雑収入になります。

法人保険の大きな目的のひとつが、経営者の退職金準備です。この雑収入を役員退職金にあてれば、うまい具合に利益の出口対策となっています。

また事業承継では、後継者にいかに資金を集めるかが重要になります。経営するには自己資金が豊富でないとどうしようもありません。金融機関の信用だけでなく、資金の裏付けがないと打つべき手が滞るというものです。

後継者に資金を集中する基本的な手法は、役員報酬の増額ですが一気に移すことはできません。この問題をクリアして、法人保険で後継者へ資金を移動する方法はいくつかあります。

事業承継と相続設計はある意味では、資金の引き継ぎでもあります。資金移動が円滑にできないと、後継者は難儀することになります。それを税金というコストを最小限に抑えて可能にできるのが法人保険なのです。

法人保険を使った後継者への資金移動は、それだけで相続税の納税資金対策になっています。換金できない自社株を引き継がなければならない後継者には、納税資金として保険金というキャッシュが必要なのです。

事業保障目的の法人保険は、代が変われば役割も変わるということです。会社の信用と責任を負う人に、事業保障は集中すべきです。そしてこれまでの経営者にかけていた生命保険は、役割を終えたわけですから整理していかなくてはなりません。しかし単純に解約したり、退職金として現物支給したりするだけが手ではないのです。

役割を終えた経営者保障になっていた生命保険は相続対策へ。言うは簡単ですが、さっさと解約できない経営者心理という問題もあります。この辺は経営者の引退という別の問題にからんできます。

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