節税保険の実質返戻率から見える保険業界の末路。

節税保険の実質返戻率から見える保険業界の末路。

CIMG3652保険業界の末路などと怪しい表現を使いましたが、今回の国税庁のパブリックコメン
トに示された制約条件を実際の返戻率にあてはめて実質返戻率を計算すると100%を
こえるためには単純返戻率が95%を越えないと難しいようです。

全額損金も半損も認
められないということになると利益の繰り延べによる節税効果はほとんど期待できな
くなったということになります。

◆ 節税保険に対する国税庁の一網打尽策。

今回、国税庁が提示した仕組みは最高解約返戻率という新しい判断基準を持ち出し、
保険種類に関わらず抜け道なし、節税目的の損金封じとなっています。まさに節税保
険に対する国税庁の一網打尽策といえるのではないかと思います。国税庁の言を借り
ると、「業界とのいたちごっこを解消する。」という覚悟が感じられます。

◆ 国税庁のパブコメが狙ったもの。

消費増税を前にして、租税負担の公平性を欠く節税商品の乱売合戦に終止符を打つことが最大の狙いであったように思います。

ただ国税の大物OB税理士によれば、既契約に遡及することは社会的混乱だけでなく、納税者に不利益な通達変更となるので、通常遡り適用になることはないそうです。しかし実態はそれだけではないそうです。

通達内容がもし遡及となり、既契約にさかのぼって損金算入の取扱いが変われば、節税目的が果たせなくなるので多くの契約が早期での解約に追い込まれる可能性があります。

そのようなことになると、節税保険を扱った代理店や税理士(OBを含む)は手数料の返済を求められることになります。いわゆる解約控除といわれる仕組みですが、これは存続にかかわる厳しいことになります。

税務署も国税庁もOBのネットワークは強力です。なぜなら国税庁の職員でもいずれはOB税理士として糊口をしのぐことになるのですから、落としどころを忖度するのはやむを得ないかもしれません。

◆ 節税効果がほとんどない法人保険。

国税庁の改正案によると単純返戻率が高い保険商品(最高解約返戻率85%超)は、最初の10年間においてはなんと9割もの資産計上になります。

その間、前半の資産計上期間で解約した場合、解約返戻金は保険積立金を下回ることになります。これは法人税の先取りになっています。そう考えると、保険の金融商品としての価値は、節税効果という商品力だけで売れたものが、保険を契約する目的が変わり、そうは簡単に売れなくなります。

利益が出たとき保険に加入せず、法人税を払って税引き後の利益として残すか、保険に加入して保険積立金として残すかの選択肢になり、オーナー経営者の好む簿外資金はほとんど形成されないことになります。

事業保障をすでに確保している企業にとれば、もはや節税効果のない法人保険にメリットを見いだすことは難しいと言えるのではないでしょうか。結局、税金という見返りのないコストを削減する第三の道として保険以外の損金商品や経営力向上計画のような設備投資による税制優遇を模索することになりそうです。

◆ 損金算入新ルールは保険営業に甘くない。

今回のパブリックコメントで示された改正ルールは企業の決算ごとに保険契約で莫大な収益を上げていた保険代理店には痛手を通り越して経営上の大ピンチではないかと思います。事業保障を目的とした保険を毎期追加で入ることはありません。企業の成長の節目節目で保障額を見直す程度のものです。それゆえ保険代理店にとれば売るべき主力商品を封じられたことになります。

その上今回の新ルールはこれから開発される保険商品にもあまねく適用されるわけですから抜け道が見えてきません。国税庁のパブリックコメントが腰砕けという論評も見かけますが、それは法人保険販売の実態が見えていません。何の何の、今度ばかりは酷税庁です。

経営者が法人で生命保険を契約する動機は、契約の目的に加えてGMP(義理・人情・プレゼント)と言えると思います。法人保険を契約する目的とは事業保障とか節税、あるいは退職金準備等です。しかし時として契約の目的が後付けになりGNPが優先される場合すらあります。これは売る側の立場も買う側の事情も手に取るようにわかるhokenfpとして筋金入りの保険営業論です。そういう立場から申し上げられることは、切り口を変えた保険(医療保険、介護保険、養老保険、外貨建て保険)にGMPをからめて売り込むぐらいしかなさそうです。

国税庁から示された損金算入新ルールは決して保険営業に甘くないといえると思います。もう保険代理店で一括千金の夢は潰(つい)えたのでしょうか。

◆ それなら短期定期保険は選択肢。

CIMG3653法人保険を買う側の感覚からすると短期の定期保険も選択肢ではないかと考えていま

す。もちろん短期の定期であるからには完全に保障目的の保険契約になります。
オーナー経営者にとれば簿外に積み立てられるなら心が動きますが、保険積立金とし
て税金を払いながらキャッシュを動きのとれない形で積み上げていくのは気乗りしな
いのです。これまでは法人税を先送りしながら簿外に緊急予備資金を積み立てられた
わけですからこの結果は大違いです。

たとえばこれまででしたら20年定期保険であれば全額損金が可能でした。新ルール
によれば、定期保険として50%以下の返戻率であれば全額を損金にすることが可能と
なります。それなら割り切って高い保険料で保険積立てをするより保障を買うと割り
切って、解約返戻率は低くても全額損金になる定期保険を選択することも有力になる
と思います。保障部分の保険料をきちんと費用で処理できるわけですから、よく考え
れば意味があるのではないかと思います。

◆ まとめ

国税庁のパブリックコメントに示された改正案は税を徴収する側からみればとても優
れた仕組みです。法人契約する保険の種類ではなく問題となる最高解約返戻金に着目
して将来に渡り同様の問題が再来しないようバッサリと網をかけました。おかげで、
売る側の保険会社や保険代理店だけでなく、買う側の中小企業も財務的な選択肢が大幅に
狭くなりました。損金商品のイタチゴッコはなくなるかもしれませんが、知恵比べは
今後も続いていくものと思います。

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