週刊ダイヤモンドとバレンタインショック。

週刊ダイヤモンドとバレンタインショック。

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週刊ダイヤモンドが節税保険の内幕特集、怒濤の74ページと銘打って節税保険の特集を組みました。サブタイトルが「どうなる節税どうする見直し」と法人保険だけではない範囲を押さえ、一般読者を確保しようとする意図が見えます。

でもメインの記事は「国税庁VS生保節税保険をめぐる攻防全内幕」となっています。こればかりは買わないわけにはいかないので710円支払ってセブンで買いました。

一般世間の方には、ほとんど興味がもてない内容ながら、買うとすれば保険関係だけですから採算がとれるのでしょうかと思ったりしています。保険関係者の人口は、数十万人というレベルだと思いますからさばけるのかもしれません。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

◆ 記事1、医療保険も規制強化?節税をめぐる攻防最前線VS国税庁

まだ国税庁から最終的な通達は発遣されていない段階ですが、各種の情報と週刊ダイヤモンドの記事からこれまでのポイントを集約すると以下の3点になると思います。正確なことは来週にでもでるであろう通達の内容を待つほかありません。

・個別通達を廃止し単一的な(資産計上)ルールの創設。

・既契約への遡及はしない。

・短期払い医療保険の規制強化(規制内容は販売停止か資産計上)。

国税庁としても組織の一部であり、OBを含め多くの関係者が取り囲んでいます。利害関係が複雑にからみあい、租税負担の公平性という正義だけでは押し切れないという事情がよくわかります。税務署長のOBは税理士として優良申告法人に顧問として迎えられます、キャリア組の役付官僚のOBは多くの人が保険会社へ天下りしているという実態があります。

◆ 記事2、国税当局の対応についてはわれわれも学ぶものがあった。金融庁長官インタビュー

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金融庁長官の遠藤俊英氏のインタビューが掲載されています。縦割り行政そのままの形で保険会社を管理監督し保険商品を認可する金融庁は、国税庁と全く連携がとれていませんでした。

そのせいでバレンタインショックの騒ぎになったのですが、見方を変えればそのおかげで保険業界はボーナスをもらったようなものです。

遠藤長官のインタビューで「解約返戻金を節税のプランに使うかどうかはわれわれの認可の対象外です。審査の過程でそうした説明もないわけですし。それに対して是か非かという権限はありません。」と述べています。

異議を申し上げるつもりはないですが、まさに縦割りの弊害そのものです。それなら審査する立場にあらずと言えなくもないところです。インタビューの詳細は週刊ダイヤモンドをお読みくださいとしか言えませんが、金融庁として蚊帳の外に置かれた立場としては、他に言いようもないのかもしれません。

今回のバレンタインショックの本質が金融庁と国税庁の縦割り行政にありとは言い過ぎでしょうか。でもたまにはこういう美味しいこともないと一旗揚げるなんてできません。にわかにMDRTも増えたことだと思います。

◆ 逓増定期の名義変更スキームに関する言及なし。

一番気になったのが、逓増定期の名義変更スキームに踏み込まれるかどうかでしたが、これまでの記事の中には情報はありませんでした。実際短期払いの医療保険でも逓増定期の名義変更でも資産計上すること自体がスキームの障害になることは少ないと言えるのではないかと思います。

どこで費用化するかだけの問題で、享受するメリットはしっかり確保できるのですからこれは結構なことです。実際網をかけるにしても、抜け穴のない単一的なルールというのは難しいかも知れません。短期払い医療保険がどうなるかわかりませんが、逓増定期の名義変更スキームはバレンタインショックの中を生き残りそうな状況です。

(追記:2022年3月のホワイトデーショックで道は絶たれました。)

◆ まとめとしての責任。

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今回のパブリックコメントから言えることは、過去に例のない保険業界への規制強化です。

保険業界は本来の保険の目的と意義を再確認して、販売戦術を見直すことになるでしょう。しかし、一度ゆるんだタガを締め直すことは、口で言うほどたやすくはありません。

現場の実態を知る立場で申し上げれば、売る方も買う方も節税保険を販売する時の話法は節税メリット一本やりです。安直ながら、いくら落とせるか、いくら戻ってくるかの2点だけです。

保険本来の万が一のリスクを分析し、お客様に理解いただくという手順が完全に欠落した保険販売話法になっています。これをもとの正常な軌道に戻すことは容易ではないと思います。

生命保険業界で生き残るには、販売話法をいち早く切替えて、腰を落とした営業に戻すことが必要かと思います

一方、利益の出ている中小企業は今回の件でも蚊帳の外です。既契約に遡及しないとなり、早期解約によるつまらない損失はなくなりましたが、一次的な利益の繰り延べに止まりそうです。

7,000億とも8,000億とも言われる節税保険料が、5年後10年後に解約返戻金として雑収入というキャッシュになります。このとき使い道の定まっていない無計画な利益が、どのような影響を与えるか注目したいところです。

買う立場で言えば、節税保険の保障はあるにはありますが、病気死亡の免責期間があり、契約するときおまけほどにも意識しません。ただ、中小企業の泥縄経営では来年の経営より目先の節税になります。とりあえず利益の繰り延べ、これであとあと救われることがあるのです。まだ時間がありますから、とりあえず繰延べた利益の使い道を今から設計しておくことが重要です。

また、これだけは言えますが、ただですら低金利で疲弊している保険業界には厳しい裁断です。既契約への遡及がないということで、安堵されているところへ追い打ちをかける気はありませんが、個別通達を廃止し単一的な(資産計上)ルールの創設は、法人保険において重大な影響が懸念されます。安堵している場合ではない、重大事態だと思うのは私だけでしょうか。

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