相続税は本当に高いのか|税率表だけでは見えない実効税率の現実。

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平成27年の相続税改正以降、「相続税が大増税になった
「相続税は55%取られる」といった話が一気に広がりました。

その結果、相続税対策セミナー節税提案が急増し、
何もしないと大変なことになる」という不安が先行しがちです。

しかし実際には、税率表だけを見て相続税を判断すると、
かなり誤解しやすいという問題があります。

相続税は確かに高額になるケースがあります。
ただし、基礎控除・配偶者控除・超過累進課税などを踏まえて実際に計算すると、
思っていたより低かった」というケースも少なくありません。

むしろ問題なのは、「相続税は55%」というイメージだけで慌ててしまい、
過度な節税対策に走ることです。

■相続セミナーの落とし穴|不安商法と節税ビジネスの構造。

◆ 相続税が「高い」と思われる理由。

相続税が高いと思われる最大の原因は、
税率表だけが独り歩きしていることです。

相続税率表を見ると、最高税率は55%になっています。

たしかに数字だけ見れば衝撃的です。

一般の方がこの数字を見ると、「半分以上税金で持っていかれる
という印象を持ってしまいます。

相続対策セミナーでも、この55%という数字を強調する話法は
非常に多く見られます。

しかし、ここには大きな誤解があります。
相続税は、財産全体に55%がかかる仕組みではありません。

しかも、基礎控除や配偶者控除、生命保険の非課税枠などを考慮すると、実際に
は一次相続で相続税が発生しないケースもかなりあります。

税率表のインパクトだけで不安をあおる話には、注意が必要です。

◆ 実際には基礎控除と配偶者控除が大きい。

相続税には、まず基礎控除があります。

現在の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。

たとえば、配偶者、子2人の標準的な家庭では、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
が基礎控除になります。

さらに生命保険の非課税枠があります。

500万円×法定相続人の数、500万円×3人=1,500万円まで非課税になります。

つまり、このケースでは、基礎控除4,800万円
生命保険非課税枠1,500万円、合計6,300万円相当の控除余地があります。

さらに一次相続では、配偶者の税額軽減が非常に大きく効きます。

配偶者は、法定相続分(1/2)または1億6,000万円までであれば、
相続税がかからない仕組みになっています。

そのため、一次相続では「相続税が発生しない」あるいは
「思ったより少ない」というケースも珍しくありません。

◆ 相続税率は超過累進課税。

相続税が誤解されやすい理由の一つが、「超過累進課税」の理解不足です。
これは、一定ラインを超えた部分だけに高い税率がかかる仕組みです。

たとえば「30%」の税率帯に入ったからといって、
全額に30%がかかるわけではありません。

低い部分には低い税率が適用されます。
しかも相続税は、相続人ごとに法定相続分で按分して税率計算します。

つまり、「5億円に55%」ではなく、「相続人ごとに分けた金額に対して
段階的に税率計算」する仕組みなのです。

ここを誤解したまま、「相続税は半分取られる」
と思い込むと、判断を誤りやすくなります。

◆ 実効税率で見ると印象は変わる。

たとえば、資産5億円のケースで考えてみます。

配偶者1人、子2人で、一次相続で配偶者が1/2取得する前提です。

この場合、一次相続の相続税額は約6,236万円程度となり、
資産全体に対する実効税率は約12.47%になります。

さらに二次相続で残り2億5,000万円を子2人が相続すると、
相続税額は約4,540万円程度、実効税率は約18.16%程度になります。
(実務では、二次相続を考慮し、合わせて最も税額が低くなる割合で、
配偶者控除を適用します。)

一次相続・二次相続を合算すると、
税額合計 約1億776万円、実効税率 約21.53%程度です。

もちろん資産構成や特例適用で変動しますが、
「5億円に55%」というイメージとはかなり違うことがわかります。

実際には、基礎控除、配偶者控除、超過累進課税、
相続人ごとの分散計算によって、実効税率はかなり下がるのです。

◆ 相続税が高いという誤解が過剰節税を生む。

問題は、「相続税が高すぎる」と思い込むことで、
過剰な節税対策に走ってしまうことです。

代表例が、借入による不動産投資、賃貸マンション建築、
過度な資産組み換えなどです。

たしかに相続税評価は下がります。

しかし、その代わりに、借金、空室リスク、修繕負担、流動性低下、
そして管理負担とコストを抱え込むことになります。

しかも相続税は原則として現金納税です。
節税を優先しすぎた結果、「財産はあるのに現金がない
という状態になることもあります。

相続対策では、「税金を減らす」だけでなく、引き継いだ相続人が
管理できるかを考えておかなくてはなりません。

とくに重要なことは、相続税の納税資金を確保できるかどうか、
またキャッシュフローが維持できるかを検討し、相
続人が困ることがないよう配慮するという視点が極めて重要です。

そのため、相続税の税率だけを強調し、
不安をあおる提案には慎重になった方が安全です。

◆ 相続税対策より先に必要なこと。

本当に最初にやるべきなのは、うまそうな話に乗って
節税商品を買うことではありません。

まず必要なのは、所有財産の一覧である財産目録を作ることです。
そして一次相続と二次相続を分けて試算することで、
必要な納税資金を確認することが必要です。

また相続人同士が、遺産分割で揉めないか確認すること、そして
最後に相続後のキャッシュフローを見ることです。

基礎控除や生命保険非課税枠、小規模宅地等の特例などを踏まえて計算すると、
「慌てて節税するほどではなかった」というケースもかなりあります。

逆に、節税を優先しすぎると、相続人が不動産処分で苦労することが起こります。
節税のためにお金を借りれば、借入金だけが残ることになりかねません。

賃貸マンションなどに投資すると、管理負担が増えるだけでなく、
納税資金不足になるといった別の問題が発生します。

相続税対策は、「税金だけ」を見ると失敗しやすいのです。

◆ 相続税が高いという誤解、まとめ。

相続税率表だけを見ると、相続税は非常に高く見えます。

しかし実際には、基礎控除、配偶者控除、超過累進課税、
相続人ごとの分散計算などにより、実効税率はかなり下がります。

もちろん相続税は安い税金ではありません。

ただ、「55%取られる」というイメージだけで慌ててしまうと、
過度な節税対策に誘導されやすくなります。

相続で本当に大事なのは、納税資金の確保、納得できる遺産分割、
相続人の管理負担の軽減、相続後の生活に必要なキャッシュフローの確保です。

相続税対策は、まず実際の税額を冷静に試算してから考えるべきです。

税率表のインパクトだけで動くと、相続税より重い負担を背負うこともあるのです。

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