逓増定期保険の名義変更には落ちると怖い落とし穴があります。誰も教えてくれない買う側の注意事項を経験者が語ります。
2021/5/3追記 逓増定期の名義変更スキームは、国税庁から名義変更時の評価が解約返戻金額から保険積立金相当に変わる通達が発遣される予定です。法人から個人への資金移動はできなくなりました。
逓増定期保険とは損金効果を利用して利益の繰り延べ効果だけでなく名義変更すれば利益を個人に付け替えることができます。
生命保険でできる最後のウルトラスキームです。とりあえず手順を踏めば今のところ過大になりすぎない限り課税当局も容認しています。その手順として用心すべきポイントをあげます。
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① 無記名での送金、解約返戻金としての経理処理。
逓増定期保険を専門に扱う代理店も判例がでるまでのはじめの頃はアドバイスも慎重でした。個人が保険を買い取るとき送金者が表示されないよう現金で送金させたり、買い取った個人から振り込まれたお金に対して振替伝票には保険会社の解約返戻金として記載したりしていました。
これではかえって怪しい処理になってしまいます。課税当局は銀行口座の動きはすべて把握していると考えてよいと思います。結果としてのお金の動きがわかればすべてたどることができる仕組みです。姑息な手段は疑念を生むだけです。
② 逓増定期保険を買い取ったあと解約すれば、修正申告のタイミングが大事です。
個人で買い取って解約後の一時所得は先延ばしせずに確定申告してください。過去に同様の一時所得がある場合は課税当局からのお尋ねがある前に修正申告しておく方が心証が良いようです。修正申告をすると後からきつい住民税が課せられます。覚悟してください。
③ 払い済み定期保険の恐怖。
逓増定期保険を解約せずに払済保険とする場合はとりあえず申告不要です。お金を受け取らない限り支払調書も行きませんし何事も起こりません。
注意点として保険会社によっては払済にしたとき終身保険ではなく有期の定期保険になるケースがありますのでしっかり確認してどこで解約するか、あるいは生命保険として保持するかの判断が必要です。
払済終身保険にして相続を迎えた場合どういう課税関係になるかはその時に考えましょう。少なくとも被相続人が契約者の場合は故人に所得税は課税できませんが、後継者が契約者になっていた場合死亡保険金と保険買い取り費用との差額が一時所得になるように思います。(この辺は専門家に確認してください。)
払済定期保険の恐怖
④ 逓増定期も保険ですから取締役会議事録の整備が大事です。
堂々と一時所得として納税するわけですから保険譲渡に関する取締役会の議事録も整備してケチをつけられないようにしてください。オーナー企業ではついつい先延ばしにして放置するケースがありますが、ここはその都度緻密に対応することです。
⑤ 誰にでも資金の付け替えができる利便性、雑損失で節税。
契約者は法人から個人へ譲渡するとき配偶者でも後継者でもモラルリスクがない限り資金の都合をつければ誰でもかまいません。保険金の受取人はできれば新しい契約者にしてください。これもモラルリスクがないようにするためですね。
半損の逓増定期の経理処理では会社の保険積立てに対し個人の買い取り金額が少なくなるため雑損失が発生します。逓増定期保険の名義変更は会社の利益に余力があって行っているはずですからこの損失は節税になっています。
オーナー企業では役員報酬や配当以外のルートで利益を個人に付け替えて発生する損失ですから美味しいわけです。利益が余分に出るような企業構造でないとこのスキームは無理があります。また最低でも5年は会社が保険料を払う必要がりありますので継続的な利益が見込めなくてはなりません。
生命保険を買い取る個人にも資金余力がないとできません。これは後継者に数か月程買取資金を貸し付ければよいのでクリアできるでしょう。
逓増定期保険をうまく組み合わせれば事業承継資金とし効果的に後継者に資金移転が可能です。その資金で社長被保険者の昔のお宝保険を後継者が会社から買取りします。お宝保険はレバレッジ効果が大きいうえに、保険金は一時所得となり二重のおいしさです。
逓増定期保険の名義変更で大事なことはしっかり管理してタイミングを外すことがないようご注意ください。時期を逃すと単なる繰り延べだけに終わってまいますから。
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2021/2/21直近情報をアップしました。
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