逓増定期保険の名義変更で落ちると怖い落とし穴を経験者が語ると。

逓増定期保険の名義変更で落ちると怖い落とし穴を経験者が語ると。

追記2021/6/25:逓増定期保険の名義変更にかかる、保険契約の権利評価の見直しが行われました。6月25日、資産計上額で評価するという通達がついに発遣されました。

2021年7月8日以降に締結した定期保険又は第三分野(医療保険やがん保険など)の保険契約について、2021年7月1日以降に名義変更するものから適用されており、法人から個人、法人から法人に名義変更する際の評価に適用することとなります。

※過去の記事ですので、これまでの経緯として参考程度にお読みください。

逓増定期保険の名義変更には、落ちると怖い落とし穴があります。誰も教えてくれない買う側の注意事項を、経験者が語ります。

逓増定期保険とは損金効果を利用して、利益の繰り延べ効果だけでなく、名義変更すれば利益を個人に付け替えることができます。

■逓増定期保険の名義変更、ホワイトデーショックまとめ。

◆ 逓増定期保険の名義変更で用心すべきポイント。

生命保険でできる最後のウルトラスキームです。とりあえず手順を踏めば、今のところ過大になりすぎない限り、課税当局も容認しています。その手順として用心すべきポイントをあげます。

① 無記名での送金、解約返戻金としての経理処理。

逓増定期保険を専門に扱う代理店も判例がでるまでのはじめの頃は、アドバイスも慎重でした。個人が保険を買い取るとき送金者が表示されないよう現金で送金させたり、買い取った個人から振り込まれたお金に対して、振替伝票には保険会社の解約返戻金として記載したりしていました。

これではかえって怪しい処理になってしまいます。課税当局は、銀行口座の動きはすべて把握していると考えてよいと思います。結果としてお金の動きがわかれば、すべてたどることができる仕組みです。姑息な手段は疑念を生むだけです。

② 逓増定期保険を買い取ったあと解約すれば、修正申告のタイミングが大事。

個人で買い取って解約後の一時所得は、先延ばしせずに確定申告してください。過去に同様の一時所得がある場合は、課税当局からのお尋ねがある前に修正申告しておく方が心証が良いようです。修正申告をすると、後からきつい住民税が課せられます。覚悟してください。

③ 払い済み定期保険の恐怖。

逓増定期保険を解約せずに払済保険とする場合は、とりあえず申告不要です。お金を受け取らない限り、支払調書も行きませんし何事も起こりません。

注意点として保険会社によっては、払済にしたとき終身保険ではなく有期の定期保険になるケースがあります。しっかり確認してどこで解約するか、あるいは生命保険として保持するかの判断が必要です。

払済終身保険にして相続を迎えた場合、どういう課税関係になるかはその時に考えましょう。少なくとも被相続人が契約者の場合は、故人に所得税は課税できません。でも後継者が契約者になっていた場合、死亡保険金と保険買い取り費用との差額が一時所得になるように思います。

④ 逓増定期も保険ですから取締役会議事録の整備が大事。

堂々と一時所得として納税するわけですから、保険譲渡に関する取締役会の議事録も整備して、ケチをつけられないようにしてください。オーナー企業ではついつい先延ばしにして放置するケースがありますが、ここはその都度緻密に対応することです。

⑤ 誰にでも資金の付け替えができる利便性、雑損失で節税。

契約者は法人から個人へ譲渡するとき、配偶者でも後継者でもモラルリスクがない限り、資金の都合をつければ誰でもかまいません。保険金の受取人は、できれば新しい契約者にしてください。これもモラルリスクがないようにするためですね。

半損の逓増定期の経理処理では、会社の保険積立てに対し個人の買い取り金額が少なくなるため雑損失が発生します。逓増定期保険の名義変更は、会社の利益に余力があって行っているはずですから、この損失は節税になっています。

◆ まとめと諸注意。

オーナー企業では役員報酬や配当以外のルートで、利益を個人に付け替えて発生する損失ですから美味しいわけです。利益が余分に出るような企業構造でないと、このスキームは無理があります。また最低でも5年は、会社が保険料を払う必要がりありますので継続的な利益が見込めなくてはなりません。

生命保険を買い取る個人にも、資金余力がないとできません。これは後継者に数か月程買取資金を貸し付ければよいのでクリアできるでしょう。

逓増定期保険をうまく組み合わせれば、事業承継資金を効果的に後継者に資金移転が可能です。その資金で社長が被保険者の昔のお宝保険を後継者が会社から買取りします。お宝保険はレバレッジ効果が大きいうえに、保険金は一時所得となり二重のおいしさです。

逓増定期保険の名義変更で大事なことは、しっかり管理してタイミングを外すことがないようご注意ください。時期を逃すと単なる繰り延べだけに終わってしまいますから。

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