役員退職金は法人保険の全損か半損かで財務戦略が違ってきます。
2021/5/3追記 法人税基本通達9-3-5の2(いわゆる法人保険の損金算入ルールの見直し)により保険料の損金算入ルールが規制され以前のような簿外資金を積み立てることが難しくなりました。
中小企業のオーナーのようなケースは長年経営者として会社を引っ張ってきていますから役員在籍年数が長くなり20年30年はざら、中には40年超というような長期社長在籍年数を誇る方もいらっしゃいます。
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- 1 必然的に役員退職金は巨額になりますから、そんなにおいそれと退職金を工面できるものではありません。
- 2 役員退職金のキャッシュを用意するなら助けになるのが法人で契約する生命保険の解約返戻金です。
- 3 経営者の役員退職金は自社株の評価を下げる千載一遇のチャンスでもあります。
- 4 役員退職金支給で自社株評価を下げるのであれば半損型の長期平準定期が有利になります。
- 5 しかし半損の長期平準定期保険で戻りの率がよいものを選べば財務上のマイナスを抑制しつつ50%の雑収入を退職金で相殺することが可能になります。まさに役員退職金の支給ソフトランディングです。
- 6 ただ一番得なのは全損で雑収入をまるまる役員退職金で受けることです。
必然的に役員退職金は巨額になりますから、そんなにおいそれと退職金を工面できるものではありません。
事前に何の対策も取らないでいきなり退職金を支給することは財務的には普通かなり困難を伴うことでしょう。
役員退職金のキャッシュを用意するなら助けになるのが法人で契約する生命保険の解約返戻金です。
退職金原資を全損で簿外に準備すれば解約返戻金は全額雑収入になります。それをそっくり退職金に充てればプラスマイナスゼロになり会社の財務に影響を与えずに退職金を受け取ることができます。
この時、自社株は既に後継者に移転してることが条件になります。なぜなら自社株移転のために評価が高くなりすぎた自社株を退職金支払いによって評価減するという手が使えなくなります。
経営者の役員退職金は自社株の評価を下げる千載一遇のチャンスでもあります。
自社株の評価を下げて後継者に移転するスキームは数ありますが退職金支給は過大でない限り最も安全策ではあります。
役員退職金支給で自社株評価を下げるのであれば半損型の長期平準定期が有利になります。
終身保険などは入り口で税金というコストを支払って保険積立金として利益を積み上げていますから退職金の原資とすると大きな財務上マイナスが発生します。
もちろん自社株評価を減じるには効果が高いことになりますからそれはそれで意味があります。
しかし半損の長期平準定期保険で戻りの率がよいものを選べば財務上のマイナスを抑制しつつ50%の雑収入を退職金で相殺することが可能になります。まさに役員退職金の支給ソフトランディングです。
会社の財務事情、自社株の評価等によりこの辺の使い分けが必要になります。自社株の評価減を考えておられるケースでは半分の雑収入が邪魔に感じるかもしれませんがこれまで毎期保険料の半分を費用で落としてきたわけですから結果としては同じことです。
かといって終身保険のように税金を払いつつ保険料を資産計上して、その解約返戻金が雑収入にならないのは当たり前で、まるまる税金を払って積み立てても得なわけがありません。
役員退職金が費用で落とせるなら、利益の繰り延べで出てきた雑収入は誠にありがたいことだと言えるのではないでしょうか。
ただ一番得なのは全損で雑収入をまるまる役員退職金で受けることです。
見事に完全な出口対策になります。会社の財務にもダメージを与えずに退職金を堂々と受け取れます。ただ全損の保険商品は選択肢が狭くなりました。半損の保険商品は単純返戻率が見劣りするものが出てきました。見方によれば半損もこの低金利時代に有効な選択肢ではあります。
いずれにしても役員退職金を生命保険で準備しつつ、早いうちから後継者へ自社株の移転を進めておくことです。
自社株移転は専門家にご相談いただきリスクを理解したうえでご自身と会社に適したスキームで、できるかぎり早期に始められることが肝要です。
役員退職金の支給に際しては以下のページの注意事項をご参考になさってください。
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