遺言書のメリット、とことん書けない本当の理由を行動分析で。

遺言書のメリット、とことん書けない本当の理由を行動分析で。

物事に取り組むには、それから得られる見返りとしてのメリットがなくては行動が生起しません。行動の原理から言うと遺言書に取りかかるという行為は、被相続人にとってそこから得られるメリットが直接的でなく、茫漠としているのです。

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 遺言書にメリットを見いだせない経営者。

遺言書が、なかなか書き始められない経営者がいらっしゃいます。ハナから書く気のない方もいらっしゃいます。

個人なら身内のもめ事で、他人様に迷惑を及ぼすこともありません。しかし、こと中小企業のオーナー経営者ともなると、事業承継・相続設計がうまくいかないとステークホルダーでも特に従業員とその家族に多大な迷惑が及びます。

それでも遺言書が書けないのは、自分が築いた財産を相続人に渡したくないからでしょうか。それとも遺言書に効力がないと考えているのでしょうか。いいえ違います。遺言書を書くことにより得られるメリットより、遺言を書くことによるデメリットが大きいと感じているからに他なりません。ご本人が自覚することはありませんが人の行動の基本原理です。

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◆ 遺言書を書くことによるメリットは、60秒以内に生起しない。

行動分析によると、その行動のあと60秒以内にメリットを受ける行動は、強化されるとしています。動物である人間の行動の原理の本質です。

例えばお酒を飲んだ時は、60秒以内に美味しいと感じるメリットが発生し行動は強化されます。しかし翌日の二日酔いは時間が経過しているので、お酒を飲むという行為が、二日酔いというデメリットにより弱化されません。その結果、飲酒は繰り返されるというわけです。

遺言書を書くことによる被相続人への直接のメリットは、あるとすれば会社を守り家族仲良くということでしょう。でもそれは自分の死後ですから、遺言書の結果に関知することが元々できないという、宿命的な側面があります。この遺言書を書くことによるメリットは、生前には実感できないので、動機を強化するにはまだ弱いのです。

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◆ 遺言書を書くことのデメリットは。

遺言書を書くことは、自分の死亡を前提にしています。ある程度弱ってきて諦めがつくまでは、あまり考えたくない恐ろしいことでもあります。

また自分が刻苦してひそかに貯めてきた財産を整理して、披露しなくてはならないということも心理的な抵抗につながります。相続人に知られたくないことも、一つや二つあるかもしれません。

他にも相続人たる子供の格付けをしなくてはなりません。会社を継いでくれる子、嫁いだ娘、孫の数、仲のよくない次男などに対して、相続財産を分けるという行為で格付けしなくてはなりません。

どの子もかわいいが、やはり微妙な差があるのが親心です。また子らの配偶者の顔やら孫の顔が、判断を曇らせます。これらの悩み苦しみは、遺言書を書くことのデメリットと言えるでしょう。

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◆ 遺言者を書くメリットを強化する。

遺言書を書くことにメリットはないのでしょうか。いいえそうではありません。もしメリットがないのであれば、行動の原理からすれば世の中に遺言書という仕組みが機能するはずがありません。

遺言書に取りかかるには、適切な時期があるということです。遺言書を書きあげて腹を決めることで、ほっとするというメリットを得ることができるまで、その行動は生起しません。

腹を決める時期は、やはり体力と健康に相談することになりましょうか。自分自身の体に自信があるうちはデメリットが勝っていますが、年とともに弱り始めると精神的にも弱気が出てきます。相続のことも会社のことも大きな心配事になります。

遺言書を書くことで、一件落着のような安ど感が得られれば、それはメリットとなりえると思います。

◆ 遺言書のメリット、まとめ。

行動分析的理屈はそうですが、万が一ということもあります。人間年を取るにつれて万が一のリスクが高まります。だから生命保険料も高くなるのです。生命保険も相続財産です。受取人変更も忘れずに考えてください。

経営者にかかわらず、財産のあるなしにかかわらず、ある程度のお年になれば財産を整理して目録を作成してください。財産目録ができれば遺言書に取りかかりやすくなります。

自筆証書遺言書の法務局保管制度も始まりました。自筆の遺言書につける財産目録はパソコン作成してもでよくなりました。時代とともに、遺言書のメリットを強化する環境も整いつつあります。

遺言書を作成するタイミングは、時期があると申し上げました。しかし、老いると知力も気力も低下します。やる気が出なくなる前に、どうでもよくなる前に、遺言書は頭の明晰なうちに仕上げること大事です。責任ある遺言書を書きあげることこそ、やがてこの世を去るもののつとめと言えるでしょう。

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