生命保険で思わぬ課税に要注意!みなし贈与の注意点あれこれ。
OB税理士に聞くと相続税務調査については調査のポイントを教えてくれます。
ここは元本職ですから的外れはありません。
一番多い指摘は名義預金だそうです。
名義だけ変えていても実質的な所有者は被続人というわけです。
奥様のへそくりも子ども名義の預金もこれに該当します。
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◆ 贈与の基本。
一般庶民は贈与に税金がかかるとは実感できるものではありません。日常生活では縁のない話です。しかし税法では1年間に110万円(贈与税の基礎控除)以上もらうと贈与税の納税義務が発生します。
勘違いが多いのはいくらあげても、あげる人には贈与税はかかりません。贈与税はもらう人単位です。例えば両親から100万ずつ同じ年にもらったとします。合計200万から110万を引いた残りの90万に贈与税がかかります。
では車を買ってもらったらどうなるのか、というような疑問が出てきます。通常一般的な扶養の範囲であれば贈与などを意識する必要はありませんが、500万の車を成人している子に買い与えればまぎれもない贈与です。車の名義は親にしておくことです。
もともと贈与とは民法上でいえば契約書も特別な手順も必要ではなく単に「もらう側」と「あげる側」の双方が合意して成立する契約と定義されています。よくおすすめにある贈与契約書はあくまで傍証であり、双方の合意が基本です
ここで問題になるのが、どちらかが一方的にあげたとしたとしても、もらった側の認識がなければ贈与は成立しません。これがよく問題になる名義預金のパターンです。
通帳も印鑑もあげる側が管理して、もらったお金をもらう側が自由に使えなければ相続税調査では名義だけを借りた、あげる側の名義預金とされるのです。当然、相続財産に合算されて課税されることになります。
◆ 贈与のつもりがなくてもみなし贈与。
もう一つの相続税調査の視点は「みなし贈与」という聞きなれない言葉です。当人にしてみれば贈与をした認識がないのに贈与とみなし課税するという税法独自の理不尽なやり方です。
一番わかりやすい事例で言うと、1億円の不動産を子に5,000万で譲渡すればその差額5,000万はみなし贈与ということになります。買う側からすれば贈与を受けた認識はなく安く買えただけです。しかしそこは得をした認識があると思います。
こういう取引は後日発覚すると、最初から適切な取引をするか、贈与税の申告を行っていた方がはるかに得になることになります。もちろん、残念ですが、後日発覚すれば時計は巻き戻せません。
あとでとやかく言われないためには、1億円の不動産を不動産鑑定士にお願いして鑑定結果を基にした取引を行うことです。もちろん不動産鑑定士さんもいろいろで結果に幅はありますが、有資格者としての一線は引いてこられます。
その結果1億円の不動産の鑑定が8,000万になっても、専門家の鑑定評価があればみなし贈与などと指摘を受けることはありません。鑑定費用は結構かかりますが。
◆ 生命保険でみなし贈与が適用されるケースについて。
みなし贈与は形としては贈与ではないけれど、もらう側が何らかの得をしていればその分はみなし贈与として贈与税がかかるというものです。
生命保険の場合では、死亡保険金を受取人が受け取る場合は相続税の対象になりますが、保険料を親が負担し満期保険金の受取人が子の場合、完全に贈与になります。
これは贈与ですから相続税の死亡保険金控除の500万も関係がありません。
お金に変わった時点で受取った満期保険金から110万円(贈与税の基礎控除)を引いた残りに贈与税が課税されます。
もちろん、受取金額が100万円を越えれば、保険会社から税務署に支払調書がいきますから隠し立てすることもできません。できれば税務署から「お尋ね」が来る前に申告するのが安全な道です。
不動産でも、何でも本来の時価より安く譲り受けた差額はみなし贈与とされます。
また親が子に金を貸し、返却しないからといって債務免除しようものなら、やはりみなし贈与です。もっと細かい話なら、例えば親子間で利息の設定をせずにした金銭の貸し借りですらみなし贈与とされる場合があります。
生命保険でも不動産でも対価を支払わずに名義変更すればみなし贈与です。
身に覚えのある方もいらっしゃるでしょうが、課税当局の網にたまたまかかっていないだけで、支払調書(平成30年より記載事項の変更注意)が税務署に行けばバレバレです。
◆ まとめ
みなし贈与は生命保険や不動産だけでなく、いろんなケースがあります。家族間のやり取りで得をしたかなと感じた場合、ほとんどはみなし贈与となっていると思います。
親にローンの肩代わりをしてもらう場合も、一時払の生命保険に加入して相続税対策で名義変更するような場合も同様です。
現金をもらうだけが贈与ではないと言うことです。
生命保険の名義変更など、すぐに使えるお金でなし、実感がないのでもらったつもりがないのもわかります。しかし後で泣きを見ないためには得をしたかなと思ったら税理士さんか税務署に相談に行くことです。くれぐれも、あわよくば、などと思ってはいけません。
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