長寿化で生命保険料が下がる?!ウソホントを解説。
昨年からの話題ですが、標準生命表の11年ぶりの改訂により平成30年4月から保険料が下がる保険会社が続出しています。
長寿化により死亡率が低下し死亡保険金の支払いが減少したことによるものです。しかし一律に値下げになるわけではなく、保険会社や保険商品によっても値下げになったり値上げになったりと個別の判断が必要になります。
hokenfpとして関わりの多い法人保険では保険料が下がることは必ずしもメリットとは言えないのです。解約返戻金の返戻率にも微妙な影響が出ています。
また今回の改定により既契約への影響はどうなるのでしょうか。できるだけわかりやすくポイントをまとめました。
昨年9月24日公開の生命表見直しに関するページは下記をご覧ください。
◆生命表見直しで保険料が下がる!?
クリックできる目次
1)長寿化に伴う標準生命表の改訂
平均寿命が延びると年齢ごとの死亡率が下がります。人間の死亡率は何人によらず残念ながら100%ですが、年齢ごとにみると死亡率が異なります。
この死亡率(生存率・平均余命)を統計的にまとめたものが生命表です。そのなかで日本アクチュアリー会(保険数理人の会)が保険会社の死亡率データと完全生命表を元に10年ごとに改訂するのが標準生命表です。
生命保険料(純保険料)や解約返戻金の計算をする基礎データになります。
2)保険料が下がる保険上がる保険
生命保険の種類によって保険料が下がる場合と上がる場合があります。定期保険や養老保険、終身保険は死亡保険金が主目的ですから死亡率が低下すれば保険料は下がります。
特に定期保険と養老保険は契約期間内に死亡保険金を支払うリスクが低下するわけですから、保険料が下がる幅も大きいと思います。
逆に長寿化は医療費の増加になりますから生存給付型の保険は保険料が上がることになります。生存給付型の保険とは医療保険や介護保険が該当します。もちろんがん保険も保険料が上がる生存給付型の保険になります。
3)法人保険への影響とデメリット
法人契約の保険の場合、保険料の引き下げは、契約の目的によりメリットになりデメリットになります。事業保障を考えて保険契約をする場合には同じ保障を確保するなら保険料が安いほうがメリットがあります。
しかし、多くの期末に契約する法人保険は死亡保障は二の次で、利益の繰り延べを目的としています。将来の出口設計により節税を目的としていますから、費用として落とせる保険料は解約返戻率が変わらないのであれば少しでも多いほうがよいのです。
実際のところ、保険料が下がるのは保障額を大きくすればカバーできますが、告知だけで済むところが診査の手間が余計にかかったり、あるいは解約返戻率が悪くなるケースもあります。(解約返戻率がよくなる保険会社もあります。)
4)既契約への影響
原則として生命保険契約は、一度契約するとその時点での契約条件が確定して変わる事はありません。従って標準生命表が改訂になっても、標準利率が見直されても基本的にすでに契約済みの保険契約には影響を与えません。
ただ生命保険の見直しとかいう話になるとその時点の基準が適用されることになりますので、注意が必要です。見直した方がお得な場合とそうでない場合がありケースバイケースとなります。
5)生命保険会社各社の対応
国内生保も外資系も保険料値下げの案内が連続しています、4月以降の契約から改訂という保険会社が多いようです。
節税対策の法人の場合、解約返戻率が悪くなる保険商品では3月中の契約が必要になります。解約返戻率がよくなる会社では、改訂後に契約することが有利になります。ただし3月決算を挟む時期ですので4月になれば解約返戻率がよくなるからと言っても決算ですから先延ばしできるのもではありません。
3月に解約返戻率がよい保険商品が発売になったネオファースト生命は、さすがに4月に改訂はしないでしょうからこの辺の組み合わせがベターになりそうです。
6)まとめ
今回の標準生命表の改訂は生命保険業界に大きな影響を与えます。それも4月改訂とは微妙な時期です。
また個人保険と法人保険では対応が異なります。それだけでなく法人保険では保険契約の目的により対応が異なります。特に注意を喚起させていただきます。
今のところ医療保険の値上げ情報はあまり聞きません。いずれ保険料の値上げは避けて通れないと思いますが、競争激しき分野ですからしばらく様子見が続くのではないかと思います。
いずれにしましても個別に十分検証して判断する必要があります。
ただ保険の営業マンを相手にするとき注意すべきは、こういう改訂の時期はおすすめする内容がベストは限らないことがあります。詳しいことは差し控えますが様々な事情が関与してきます。
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