がん保険は採算割れ、それでも不要と言えない3つの深刻な理由。

がん保険は採算割れ、それでも不要と言えない3つの深刻な理由。

がん保険は医療保険の一種ですが、損得勘定で考えると少し意味合が違います。

医療保険は、がん保険と違い経済的な損得勘定で考えることができます。社会保険制度が充実している日本では、損か得かと問われれば、払った保険料より、受け取った保険金や給付金で得をするという可能性は低いと考えられます。

ところががん保険は、がん特有のリスクもカバーするので、損得だけでは不要とは言い切れないのです。がん保険でも、がんにならなかったり、軽くて済んだりすると採算割れということは当然考えられます。

保険で得するかどうかという考え方に、そもそも無理があります。あくまでも最悪の事態に備えて、保険で経済的なリスクをカバーするということが基本です。

がん保険は、医療保険としては採算割れになるかもしれません。しかしがん保険がカバーするリスクを考えると、不要とは言えない深刻な理由があります。がん保険の微妙な90日免責の体験などを踏まえて、がん保険の本当の意味と価値を解説します。

■がん保険、上皮内がんはあきらめなさい。

◆ がん保険が不要とは言えない3つの理由。

がん保険は、がんという疾病に特化した保険です。一般の医療保険では、がん以外の様々な病気に対応しています。がん保険の特性を考えると、医療保険のように不要とは言えない深刻な理由があります。

今やがんは二人に一人が罹患し、命を落とす原因となっています。がんという病気がもたらす特異性に対応した、がん保険の意味について3つの側面があります。

その1)健康保険や高額療養費制度が利かない高度先進医療に対応。

通常は健康保険に加入していますから、医療費は自己負担割合が決まっています。それでも医療費が高額になるときは、高額療養費制度があり、収入により支払限度額が決まっています。治療に大きな費用がかかっても健康保険でカバーできます。そのため高額な治療費のために、適切な医療を選択できないということがないようになっています。

ところが、がんという病気は、健康保険が適用できない治療が必要なことがあります。がん細胞をたたくために、高度先進医療や自費診療という選択肢を選びたいときにがん保険は有用になります。健康保険や高額療養費制度が使えない治療に、がん保険は対応しているのです。ここががん保険に加入する理由として一番大きいかもしれません。

その2)長期の通院費負担が重くなることに対応。

がんの治療は終了したからといって、安心できるわけではありません。すべてのがんには、再発・転移のリスクが伴います。再発防止のために、治療後も定期検診の受診が必要になります。

がんの再発予防は10年以上の長期にわたります。再発確認のための定期通院が毎月必要です。ホルモン注射などの保険適用外費用が長期的に大きくかかってくる場合があります。がんが運よく除去できたとしても、治癒後の通院費用負担が大きいのです。最近では通院負担に重きをおいたがん保険も登場しています。

運よく治療が成功しても、再発というリスクはずっとついて回ります。健康保険がきかないホルモン注射など、よいと言われるものは、お金がかかってもやめるわけにはいかないものです。それも毎月、10年以上にわたり家庭経済を圧迫し続けます。それを乗り越えなければ、健康を確保できないのががんの怖いところなのです。

その3)発がんリスクに対する予防的効果。

年をとれば、発がんリスクは急激に高まります。しかしがんはある程度予防できる病気です。そためには健康診断による早期発見が最も大事です。早期に発見できれば、手術などの処置も軽くなり医療費負担や再発のリスクも低くなります。

がん保険に入っていることで、発がんリスクに敏感になります。健康診断で必要な検診を受けておれば、よほど運が悪くない限り大事には至らないと考えられます。

人間ドックなどは、それなりに費用がかかります。最低限に必要な検診を受診することで身の安全を確保することが大事です。

必要な検査を必要レベルで毎年受けて、記録が連続するようにします。ご自分の健康管理に責任を持つということが大事です。保険金や給付金は受取らずに済めば、それに越したことはありません。しかしがん保険は、がんに限らず健康管理に注意を払うきっかけになります。

■睡眠時無呼吸症候群になると生命保険に入れないのか。

◆ がん保険の弱点は死亡保障。

がん保険は医療保険の一種ですから、生前給付に重きをおいています。そのため万が一の死亡に対するリスクヘッジになっていないという点に注意が必要です。生命保険の第一の目的は、万が一の死亡事故のとき保険金が支払われて、後に残された家族が生きていくための経済的な助けになるという点です。

がんは死につながる確率が高い病気です。しかしがん保険では、死亡時の保険金額は少額となっていることがほとんどです。このためあとに残された家族の助けにならないということがあります。

死亡保障は、別の保険で備えておかなくてはなりません。がん保険に入ったからと言って、保険は事足れりと考えるのは大きな間違いになります。

保険の目的と優先順位を間違えると、万が一のときの悲劇になります。がん保険は、家族を守るための保険ではないのです。この点はがん保険の性質上やむを得ません。がん保険をはじめとする医療保険は、被保険者の生前に給付される保険金であり、死亡保障とはそもそもの目的が異なることを、認識する必要があります。

がん保険の注意事項を箇条書きにしました。

・死亡保障が少額、別途備えが必要

・がん以外の病気は保障の対象外

・リスクが高い高齢になると半額保障

・入院給付金が出ると医療費控除が使えない(診断給付金は別)

・入院期間は短期化、再発予防の通院を重視した保障内容が必要

◆ がん保険の免責は90日、これをはずすと無意味。

がん保険は基本的に90日免責です。がん保険に加入して90日以内にがんの確定診断がでると、保険金は支払われません。

もう少し詳しく定義すると、がん保険の免責とは、契約から90日が過ぎるまでに悪性新生物に罹患していることが、病理検査等で確定診断されれば保険金は支払われません。

もちろん90日を一日でも過ぎていたら、何の問題もなく保険金は支払われます。

がんの確定診断は医師のさじ加減で、微妙な場合があります。しかしがん保険は90日の免責があるからといって、疑わしい診断がくだっているとき手術を延期する人はいません。

数日のことでガン細胞が転移して、再発リスクが高まるかもしれないのです。それを思うと居ても立ってもいられないのが、がん患者やその家族の普通の心理です。

手術すればその場でがんの判定をして、切除する範囲を決めます。つまりその時点でがんであることはわかっています。しかし医師によっては、ガンの種類を病理検査で調べるため、確定診断は検査結果が届いてからというケースもあります。

知識があれば診断書を書いてくれる担当医に、確定診断の時期を相談することもできます。世の中融通性と知恵比べという面があります。

・がん保険の免責90日の意味。

この免責90日が、人生に波紋を投げかけることがあります。

胃が痛くて胃カメラで診察を受けたとき、怪しいポリープが見つかって組織診断に出しているときに、あわててがん保険に入っても保険金はでませんよと言うわけです。ただし結果が出て、胃が痛いだけならがん保険に入れます。

でも医者に怪しいと言われて、90日放置しておく度胸は普通の人間にはありません。がんの疑いは、人間の生き続けたいという気持ちを心底刺激します。耐えられるものではありませんから、なるほどの90日です。

■告知義務違反のリスクと知っておきたい告知のさじ加減。

◆ がん保険が不要と言えない理由、まとめ。

がん保険に加入することは、発がんリスクに対する予防的効果があると申し上げました。しかし加入したからと言って、がん保険にがんを予防する効果はありません。

がんは、予防・早期発見がとくに重要です。がんリスクに敏感になり、がん予防・早期発見に積極的になることが身を守ることになります。そのためには人間ドックなどの健康診断と自己管理の心がけがとても有益です。

がんに対してはがん保険だけでなく、何よりも早期発見に努めることが大事です。

ここでいう「がん」とは、基本的には悪性新生物を指しますが、保険会社によっては上皮内新生物も保障対象なることがあります。通常の医療保険でもがんは保障対象に含まれますが、がん保険であれば保障内容ががんに特化されているため、より手厚くがんに備えることが可能です。

保険金や給付金を受け取ったということは、運悪く、それに見合った保険事故があったからにほかなりません。医療保険は医療費の貯金のようなところがありますが、がん保険はガン独特のリスクに対する、まさに保険としての役割があります。

・がん保険は生き延びるためのリスク保険。

医療保険は出費のあてがない貯金、がん保険は生き延びるためのリスク保険と言えるのではないかと思います。

従来のがん保険では、がんと診断されたとき一時金として診断給付金が支給され、入院・手術に備えた入院給付金と手術給付金がベースになっているタイプが主流でした。しかし、近年では、高度先進医療対応を重視したものや、長期の通院・抗がん剤治療などの治療を重視したものもあります。

がんに罹患すれば、生きるために可能性のある治療は、金額にかかわらず選択したいと思うのが人の気持ちの本音です。お金はあの世に持っていけないこの世だけの方便です。金に糸目をつけない、少しでも長生きできる治療法を探します。そのためにはがん保険が必要になります。

hokenfpの例でいえば、がん保険には加入していますが、今はやりの医療保険には加入する気はありません。家族に対する責任は重いですから、定期付終身保険で死亡リスクはヘッジしますが、生存給付型の医療保険にはそれほど必要性を感じません。

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