国税庁、いよいよ網がかかるか全損保険の怪しい噂。
2021/6/5、全額損金で節税できる保険は国税庁の通達でなくなりました。下記サイトでまとめています。
法人保険は、会社が契約者となり経営者や役員、社員を被保険者として生命保険を契約します。
従って契約者である会社が保険料を負担します。法人で契約する生命保険の保険料は保険の種類によって費用にできないものや費用として経理処理できるものがあります。
法人保険を契約する目的は大きく二つあります。一つは企業として万が一に備える事業保障と、利益を費用化して将来に解約返戻金を有効に活用する、利益繰り延べという目的です。
費用化して損金で保険料を落としていくとピーク時に受け取る解約返戻金は雑収入として利益になりますが、その使い道が有効な費用であれば、節税効果が大きくなります。
そのためには、保険料を全額費用化できて、なおかつ解約返戻率の高い保険商品が求められます。一方では課税逃れや利益調整との批判もあり、これまで何度も損金効果の高い保険商品が発売され、網がかかってきた法人保険の歴史があります。
企業にとれば、税金は全く見返りのないコストです。たとえ優良申告法人であろうとも、にらまれたくないから税務署にはよい顔をしているだけで、本音で税金を多く払いたいと思っている経営者はいないでしょう。
◆ 全損保険の新発売ラッシュ。
一時期、法人契約の全損保険商品は、ガン保険も長期障害保険も、逓増定期保険まで網がかかり全損処理ができなくなっていました。解約返戻率が低く魅力がないだけでなく、返戻率のよい被保険者の年齢幅が狭くて使い物にならない保険がほとんどでした。
ところが昨年から生命保険会社各社が法人契約をターゲットにして全損で解約返戻率のよい生命保険の新商品を発売してきました。後になるほどよい商品が出てくる、いわゆる後出しジャンケンの様相を呈していました。利益の出ている2018年の3月決算企業は、かなりの額の生命保険契約をされたと思います。
法人保険の窓口を担当している実感としては、国内生保と外資系合わせて10社近くが入り乱れる、経験のないまさに全損保険の新発売ラッシュでした。あちこちの金融機関が保険代理店に早変わりして無責任な販売合戦を繰り広げたものです。
◆ 法人保険の全損半損に価値。
法人保険は事業保障を考える場合でも、長期平準定期保険などの半損商品を選ぶべきです。全損保険ほどのうまみはありませんが、長期にわたりじっくりと利益の繰り延べができると同時に、解約時期を気にせずに事業保障を継続することができるところが魅力です。
できれば、その中でも解約返戻率のよいもので格付けの高い保険会社、信用できる保険営業を選ぶことが大事です。
とは言え、事業保障を確保した上にさらに利益が出てしまうようなことも往々にしてあります。そういうときにこそ解約返戻率のよい全損保険を検討することが有効です。
ただ解約返戻率のよい全損保険は契約が集中すると網がかかるリスクがあります。もちろんこれまでのケースでは、既契約の経理処理に言及するような通達はあまりなく既得権としての全損契約は維持できるものと思います。
◆ 金融庁と国税庁の思惑違い。
生命保険の新商品を認可するのは金融庁です。生命保険会社が勝手に解約返戻率のよい新商品を作って売るということはできません。ところが生命保険の新商品の認可で大きな
影響を受けるのは国税庁です。
今回のような損金効果が高い新商品が大量に出回ると法人税の税収に影響するというわけです。ただですら法人税の引き下げ傾向がある中で税収を確保するためには節税商品は認められないということになりかねません。
どうもこのところの情報を総合すると、国税庁が出張ってきていよいよ網がかかるという全損保険の怪しい噂があります。真意のほどは不明ですが、過去の経緯からすれば、今回新発売されたタイプの全損保険の全損経理処理を認めずとするというような通達が出ないとも限りません。
そうなると考えられるのは、さかのぼって期日指定の通達でないなら期限までの駆け込み販売競争です。
間の抜けた情報もあります。M社はとても解約返戻率のよい保険商品を開発して金融庁に申請していたのが、今頃(6月)認可になったそうで、そうなると発売と同時に網がかかるかもしれないのです。外資系の社長は短期成果を求められますから、解約返戻率がよすぎるとこういうこともあるのですね。でも、これはねらい目かもしれないとひそかに思っています。
◆ まとめ
実は駆け込み販売競争は利益の出ている企業には最後のチャンスに映ることだと思います。なぜなら全損処理ができて解約返戻率のよい商品が既得権として契約を継続できるなら、長期的にもずいぶんメリットがあります。
きちんと中長期の事業計画を立てて安定的に利益が出るような場合には誠にうまい話になります。
大事な点は2点ありあります。
解約返戻率のよい商品というのは、おしなべて解約返戻率のよい時期が極めてタイトです。そこを外して解約しても利益を繰り延べたことにならずに単に損をしただけです。
人任せにしないで自己責任で解約時期を厳しく管理する必要があります。
老婆心までに申し上げおきますが(これまで何度も申し上げましたが)保険会社も代理店も保険営業も売る時は解約時期を案内するのは当然のように言いますが、それを信用してはいけません。
次の売込みにつながらない限り誰も解約時期のお知らせなどしません。
またほとんどのケースでとりあえずの利益の繰り延べですから中途半端な時期に解約することになりがちです。そのため出口対策などは絵が描けていないと思います。
というよりその日暮らしの出たとこ勝負、泥縄の中小企業に中長期計画と言っても仕方がないところです。
解約する時期に合わせて、最近では生産性が向上する設備投資には経営向上計画の承認を得れば巨額の設備投資を証明書次第で一括償却する制度もあります。出口対策としてうまい組み合わせになると思います。(解約返戻金は減額や失効などである程度発生時期をコントロールできます。)
もちろん退職金に充てられれば解約返戻金で出た雑収入を費用化できますから誠に都合がよいのですが、そんなうまい具合に時期を合わせたり、組めるものではありません。
これから決算をむかえる中小企業にとれば、網がかかる前に全損商品の既得権を確保することは美味しい話ですが、
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