節税保険、解約逸機の恐怖。

節税保険、解約逸機の恐怖。

このところの節税保険ラッシュは、以下に詳しく書きました。保険会社各社ともに販売合戦をやりすぎて、国税庁による規制の噂が飛び交っています。

■国税庁、網がかかるか全損保険。

法人契約の節税保険は、課税の繰り延べ効果が高いのですが、解約時期を逸すると一大事です。今回ブームになった節税保険は、解約返戻率がピークになると間違いなく解約する必要があります。機を逸することなく必ず解約して、解約返戻金を受け取らなくてはなりません。

すでに前期のこととして、契約した内容もうろ覚えの経営者の皆様に念のためのご案内です。よろしければご一読ください。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

◆ とりあえずの全損保険契約リスク。

とくに出口対策が設計できていないような、とりあえずの全損保険契約が問題になります。解約返戻率を管理するには、ピークが5年から10年の保険は中途半端な期間です。

経験的に申し上げると、この間合いは危ないところです。せっかくの返戻率のよい全損保険の解約時期を逸するリスクがあるように思います。

保険のテクニックには、失効とか減額という手もあります。しかし保険商品や保険会社により条件が異なりますので、確実な根拠がなければお勧めできません。

これをうっかりぼんやりで見逃したりすると、半端でない損失が発生します。

◆ 節税目的の全額損金可能な法人保険は解約返戻金が目当て。

もともと決算前に加入する全額損金の法人保険は、保険の目的として事業保障をほとんど考えていません。当期の利益の繰り延べが本当の目的ですから、保険料が大きくて、診査が手間いらずで、解約返戻率が1%でもよいものが集中的に売れます。

最終的な目的は、何年か後の解約返戻率のピーク時に解約して解約返戻金を受け取ることです。そのとき会社に利益が出ていなければ、解約返戻金を赤字の穴埋めに使えるし、設備投資の減価償却や修繕費用などにあてることで、解約返戻金として発生した雑収入に対する課税を回避することができます。

節税保険の経営として大事な視点は、利益を簿外にプールして緊急予備資金として貯金できることです。保険料は全額費用化できますから、解約返戻金があってもP/LやB/Sにのらない簿外の資金となります。

◆ 全額損金タイプの法人保険、返戻率は良いがピークは短い。

全額損金タイプの法人保険は、解約返戻率をよくするためにあの手この手が使われます。保険営業のコミッションを削ったり、ピーク時期を短くしたり、初期の解約返戻率を極端に落としたりします。保険会社もビジネスですから、すべての条件をよくすることはできないのです。

一般的な傾向として全額損金タイプの法人保険は、解約返戻率がよいとピーク時期が短くなるようです。せっかくのよい保険も、解約時期を逸すると保険会社がもうけただけで、単なる損失でしかなくなります。

とくにピーク時期が短い商品ほど、解約時期を逃すと契約返戻率が短期で大幅に落ちる傾向がありますから要注意です。

◆ ピーク時期の管理は自己責任が原則。

自己責任とは経営者の自己責任です。他の誰にも依存してはいけないところです。毎年かなりの保険料を5年10年も積み立てれば相当な額の解約返戻金になります。

かりに解約時期を誤り、解約返戻率が5%下がっても失うキャッシュは大きなものになります。呼び名は解約返戻金ですが、降ってわいたお金ではなく、実質的には経営資金の積み立てです。

保険業界は成果が出なければ、保険代理店でも保険会社の営業でも廃業を余儀なくされます。そこまで厳しくないと保険は売れないという商品特性もあります。

それゆえ保険代理店や保険営業が、メンテナンスはしっかり面倒みますと言ったところで、信用することはできないのです。嘘を言っているのではなく、そのときまで保険の営業を続けていることができるかどうか、保証できないからです。

ましてや証券会社や銀行系の保険代理店など、最初からあてにしてはいけないのです。売りっぱなしと考えておくのが、無難なところです。次の契約につながらない保全など、興味がなくても仕方がないのです。

買う側になって10年以上になりますが、実際のところ、まともな解約時期の案内はほとんどありません。解約返戻金をあてこんだ出口対策の保険提案はありますがね。

◆ 全額損金タイプの法人保険はピークを逸すると大損に。

解約返戻率が高い保険ほど、解約時期の管理は厳しくなります。うっかりして数年も過ぎれば、解約時期を逸したどころではなく、まったく大損したことになります。今さら解約しても仕方がないので、死亡事故を待つというわけにもいかないのです。

そうなると法人保険のデメリットだけが強調されます。法人税を支払った方が手許に残る資金が多くなるような、後悔しか残りません。

実感から言うと、保険契約内容の詳細は3日で忘却の彼方です。基本的なことや注意すべき解約時期は、手帳に書き込んでも数年で意識に上らなくなります。

担当者が変われば、引継ぎは形だけになります。保険契約の意味が薄れてしまい、口座振替と経理処理だけが残ります。あるときの会計報告会で指摘され、あわてるというストーリーが見えてきます。

ピーク時期が5年以内で、退職金などの出口が予定されていると比較的に見逃すことはなくなります。でも最近の全損保険の契約を見ていると5年先や10年先にピークがあり、とりあえずの繰り延べですから、出口のことはあまり考えていないのではないかと思われます。

5年10年は実感としては短く感じられると思いますが、実務的には長いです。組織も変わり人も変わり、財務状況も変わります。

中小企業というのは規模にもよりますが、予定外の欠員が発生したら中途採用で補充します。生え抜きの社員は数えるほどしかいないとしたものです。したがって中小企業の引継ぎは計画的ではありません。幹部社員でも引継ぎがきちんと行われることはあまり見かけません。

そんな環境で法人保険の管理を正確に引き継ぐことは、難しいと言わざるを得ないところです。

◆ 解約逸機の恐怖、まとめ。

金融機関も保険代理店も、もちろん窓口の保険営業、幹部の経理担当者も解約時期の管理に関して信用してはいけません。

自分の腹が痛まないことに対して、責任をもつことは本質的に無理があるのです。だれも口だけで、責任をもつことはないのです。解約時期を逸して損をするのは会社と経営者だけです。

保険会社にしてみれば解約時期を逃していただければ、こんな美味しい話はないのです。積極的に解約時期の案内をするような仕組みは今後も生まれてこないと考えてよいと思います。(例外はありますが。)

全額損金タイプの節税保険は、ピークを逸すると大損になりますから、自己責任で経営者自らがしっかり管理するという覚悟が必要です。

保険代理店や銀行などの金融機関などからすすめられて、節税目的で全額損金の法人保険を契約された中小企業のオーナー経営者の方への警鐘になれば幸甚です。

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