医療費控除の確定申告で補聴器が使えない理由。

医療費控除の確定申告で補聴器が使えない理由。

サラリーマンをしていると会社が税金を給料から天引きし、年末調整で生命保険料控除までしてくれますから、他に収入がない限り確定申告をすることはあまりないと思います。

しかし家族の医療費が合計で10万円を越えると医療費控除の確定申告をすることで、税金が戻ってきます。

これまで医療費控除の申告に使える医療費に補聴器の購入費用は含まれませんでした。しかし平成30年度(2018年)から「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」の活用により、医療費控除が受けられるようになりました。

補聴器の購入費用が医療費控除の対象として認められるように変わりましたが、手続きがまだ浸透しておらず結局使えなかったという事例を実際の体験をもとにまとめました。

■医療費控除とは、わかりやすく超簡単に!基本のキまとめ。

◆ 医療費控除は結構なお小遣い。

医療費控除の確定申告をすれば、支払った医療費分が所得から控除されますから、控除された所得に課税されていた所得税が還付されます。それの伴い所得税に連動している住民税も翌年分が減額になります。

所得税率が人により異なりますので、いくら還付されるかは国税庁の確定申告サイトでご確認ください。大体の感じでは医療費の1割から2割程度が還付される感じです。支払った医療費が大きい場合は結構な還付金となり、お小遣いというより生活費の足しになります。

家族の医療費が10万円以上あれば申告できるのですが、あと少し足りないと言うこともよくあります。ましてや補聴器は高額な買い物ですから、医療費控除の対象となったことは大きなことです。もったいないですから、面倒くさがらず医療費控除の確定申告をおすすめします。

■医療費控除で医療費のお知らせが役に立たない理由。

医療費控除、保険金がばれるのは支払調書。

◆ 補聴器はなぜ高額。

補聴器は高額です。ちゃんとした音域の調整ができる耳穴にぴったりはまるオーダーメイドの補聴器は片耳だけで20万弱します。これでも補聴器の性能から見ると安い方です。片耳30万から50万の補聴器もあります。両耳だとこの金額が倍になるわけです。

補聴器が高い理由はいろいろありますが、機械本体より継続的なサポート料が含まれているということです。補聴器は眼鏡のように買いっぱなしではなく、幾度となく補聴器店に出向き調整したりクリーニングしたりします。調子が悪いときや、故障することもありますから、販売店とは縁が切れないのです。

また加齢とともに難聴の度合いも進みますのでどうしても調整が欠かせません。補聴器が高額になる理由はそんなところにありそうです。

医療費控除が適用できる高額な事例としては、インプラントも補聴器顔負けの価格です。

◆ 「補聴器適合に関する診療情報提供書」が必要。

補聴器の購入費用を医療費控除に加算するCIMG3462ためには、指定された補聴器相談医に診察を受けて「補聴器適合に関する診療情報提供書」を書いていただき、補聴器販売店に持参し、必要な情報を追記してもらい、その上で補聴器を購入する必要があります。

補聴器を購入した領収書だけでは医療費控除が認められないのです。

いますぐ補聴器が必要な人にはそんな時間がありません。しかし先に補聴器を購入してから医療機関に行っても「補聴器適合に関する診療情報提供書」は書いてくれません。

普通の難聴を抱える人は眼鏡を買うときと同じで、病気だとは思っていませんから医療機関には行かずに補聴器販売店へ行きます。補聴器専門店にしても貴重な顧客を医療機関に戻したら他を紹介されるかもしれないというリスクがあるでしょう。

せっかく補聴器の購入費用が医療費控除の対象に承認されたにもかかわらず、適用を受ける手順が実態とはかけ離れているので、うまく使えないのです。

難聴で補聴器が必要な人は、補聴器購入費用が医療費控除に使えるから補聴器を買うのではなく、今困っていて生活するために必要だから補聴器ができるだけ早く手に入る補聴器専門店に行きます。

この仕組みは知らなければ、後からは使えない制度です。「補聴器適合に関する診療情報提書」を断った医師はネットで調べた補聴器相談医でしたが、書き方をよく知らないという感じでした。「次回、購入するときに書きましょう。」と慰めのように言われましたが、補聴器は高額なものですから度々買い換えるようなものではありません。10年近くも大事に使いますから、慰めにもなっていない、むなしい言葉です。

詳しい内容と「補聴器適合に関する診療情報提供書」「補聴器適合に関する報告書」は下記にありますが、結構ややこしい書類です。

■一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会

◆ 利用者の立場になっていない適当な仕組み。

今回、補聴器をやむなき事情で購入しましたが、今回の制度は使えませんでした。まったく仕組み自体が補聴器購入者の立場になっていないのです。使えない仕組みを厚生労働省や財務省が承認したということになりますが、困ったものです。その理由をいくつかあげました。

1)情報が周知されていないので、補聴器販売店も医療機関も知識が中途半端で対応できない。

2)補聴器を買いたい人や買い換えたい人は、医療機関ではなくまず補聴器店にいくので、指定された手順とかみ合わない。

3)買い換えたい人は、故障して困っているから補聴器店にいくので、即日手配を希望する。医療機関に差し戻すような手間はだれも望まない。

4)自分の難聴を病気とは考えていないので、補聴器を希望する人が医療機関に行くとは限らない。

5)補聴器相談医や認定補聴器専門店・認定補聴器技能者がどこにいるのかわからない。

6)「補聴器適合に関する診療情報提供書」は耳鼻咽喉科専門で内容が複雑すぎて理解できない。

いろいろ不満を含めて書きましたが、腹立たしい思いでした。たまたま医療費控除に関する情報を発信している立場ですので、ひょっとしたら補聴器も使えるのではないかと思い検索してみたのがきっかけです。

その時すでに遅く手元には補聴器の領収書がありました。SASで定期的に通っている医療機関の医師がたまたま補聴器相談医のリストに載っていたのでお願いしてみましたが、上記に書いたとおり軽くあしらわれました。これでも情報は早いほうだと自負していますので、補聴器を購入されるご予定の皆さんには、少しはお役に立つのではないかと思っています。ちなみにシーメンスからPHONAKに乗り換えてハウリングがなくなり快調に聞こえています。

◆ まとめ

生命保険料年末調整で所得から指定金額を控除する仕組みがあります。セルフメディケーション税制まで創設されたというのに補聴器はおいてきぼりでした。

せっかく補聴器の購入費用が医療費控除に使えるようになったというのに、歯がゆい仕組みです。補聴器専門店でも医療機関でもまだ実績がないようで、きちんと説明できないどころか敬遠気味でした。

お上が作る制度というのは往々にして不完全なものが多いようです。できれば当サイトのような意見を取り上げていただき、使い勝手の良い利用者の立場に立った制度に改めていただくことを切に希望するものです。

補聴器を必要とする人は、生活を改善するためになくてはならないから、たとえ高額でも買わざるを得ないのです。ファッション性の高い眼鏡や美容整形とは違った生活の質を改善するための補助具なのです。それを考えれば、領収書だけで医療費控除ができるように改善すべきところです。

保険情報専門サイトではありますが、ネタ枠が拡大してしまい医療費控除のサイトの様相を呈しています。あしからずご了承ください。

医療費控除で自費診療が使える理由。

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