節税保険販売停止の無策、国税庁の暴走!

節税保険販売停止の無策、国税庁の暴走!

バレンタインショックを皮切りに、節税保険販売の過当競争に国税庁が介入して2カ月弱が経過しました。駆け込み販売も一段落したようで、国税庁のパブリックコメント待ちのような状態が続いています。

この先どうなるか、保険業界は戦々恐々の有様です。影響は保険業界にとどまらず、中小企業の経営に及んでいます。この先出されるであろう通達の落としどころと、節税保険販売停止による各業界の混乱をまとめました。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

◆ 節税保険販売停止で混乱する保険業界。

平成31年の2月14日のバレンタインショックから始まった節税保険全面的販売停止は、3月決算が締まろうとする時点で国税庁から何の音沙汰もありません。

販売停止とは言わず、自粛という名目です。しかし実際は、保険会社が販売を自粛すれば、保険代理店にとって完全な販売停止と同じです。保険会社が閉めてしまえば、抜け駆けするような手はありません。それゆえ保険で生計を立てている保険業界の方々は、国税庁の判断を待つよりありません。

社会批判を恐れて、保険業界は今のところ無抵抗ですが、国税庁の今回の介入は、過去の例から見てもやり過ぎの感があります。ここに至ってさらに判断を先送りするかのような国税庁の無策は、さらに事態を深刻化します。

実際に困るのは、顧客である中小企業であり、保険販売で生計を立てている保険営業や保険代理店です。

◆ 保険代理店の現状報告。

金融機関系の代理店の話を総合すると、開店休業状態だそうです。2月末に多数の駆け込み契約をいただいたお客様の、お礼参りをしているということです。売るだけ売ったので、一息ついている感じはありますが、この先に来るであろう経営不安がのぞいていました。

これから何を売るかと聞けば、がん保険かドル建て保険ぐらいとの話もありました。がん保険というのは名義変更を前提とした、解約返戻金がない法人向けのがん保険です。

これだけでは、節税保険のように毎年、企業決算の度ごとにチャンスが巡ってくる訳ではありません。契約が取れなければ、保険代理店の経営は苦しくなると思います。

◆ 国税庁の通達が遅れるほど保険業界は苦境。

バレンタインショック時点では、すぐにもパブリックコメントで方向性が決まるような話がありました。ところがその後、全面的な販売停止が進む中で、保険業界の悲鳴が聞こえるようになりました。

国税庁としても今回の大鉈は振り上げたものの、影響の大きさに戸惑いがあるのでしょうか。パブリックコメントがなくなり通達が出るという話が3月はじめから、4月になり、さらに先という情報が出てきたのです。さらに最近の不確かな情報では7月以降などとささやかれています。

通達時期の情報が、まるで逃げ水のように先送りされています。それまで保険業界は、指をくわえて待つしかないのでしょうか。法人専門の代理店にすれば、まさに死活問題です。駆け込み加入した企業にしても、決算を迎える場合、判断が難しくなります。最悪の場合、決算修正が必要になります。

◆ 保険業界の沈没は不況へ、景況悪化は税収減へ。

節税保険とは言いながら、加入した時点では節税になっているわけではありません。利益を保険会社に預けているだけです。預けた保険料は保険会社では収入保険料として儲けになります。銀行は預かるだけですが、保険会社は保険料をお預かりするとは言いますが、収益として計上されます。必要経費を引いた残りが、保険会社の利益となり課税されます。

節税保険に加入してもお金は周り巡って利益となり、結局どこかで余剰分は再び利益となり課税されます。また、解約すれば損金で保険料を落としていた分の戻りは、解約返戻金として雑収入になりますから、ここでも課税が待っています。

出口対策ができていれば、保険の雑収入は費用化できますが、費用化した分はまたどこかの会社の利益となり、課税対象になります。節税保険が拡大すると一時の法人税減収となると思います。しかし長い目で見れば、キャッシュは周り巡って、景気を活況化させ利益となって課税対象として戻ってきます。

今回の国税庁の判断が、保険業界の不況の要因になれば、まさに官製不況というべきです。

◆ 国税庁通達の落としどころを考える。

保険業界は国税庁の強引な介入が、不当であることをもっと主張すべきです。節税保険では、日経新聞やその他のマスコミも批判的な論調を掲載しました。それゆえ保険業界は、後ろめたさから温和しい対応となっています。しかし被害者は保険業界だけでなく中小企業全体です。

半分費用化できる長期平準定期保険まで販売停止では、すでに中小企業に根付いている保険による退職金準備が崩れるという可能性もあります。この問題は影響の範囲が大きく、落としどころが難しいのですが、先送りは許されません。国税庁の通達はいつ、どのような制約をかけてくるのでしょうか。

ソフトランディングの落としどころとしては、例をあげると

1)既契約には遡及しない。

2)5月1日以降の新規契約に適用する。

3)全額損金の定期保険の損金率を半分にする。(短期の定期保険は除く。)

混乱をきたさないようにするための要件についてhokenfpとしては上記のように考えます。虫が良すぎるでしょうか。

◆ 節税保険販売停止、まとめ。

平成最後のミスショットとも言うべきバレンタインショックは、どうも平成中には解決が見えないようです。新時代の保険業界に禍根を残さないよう、国税庁には穏便な処置をお願いしたいところです。

節税保険は、加入する企業も売る方の代理店も節税しか頭にありません。ところが解約するまでは、保障機能がちゃんとあるのです。5年か10年かは保険の種類によりますが事業保障になっています。

もともと中小企業でも同族会社でなければ、節税保険に加入する意味がありません。会社の利益を簿外に貯蓄して喜ぶ一般株主はありませんから。

日本の中小企業は、事業承継でも経営環境でも厳しいものがあります。たとえば働き方改革などは、大企業の話です。それが大手を振って中小企業の経営を圧迫しています。

せっかく納税猶予制度などの改革をすすめ、中小企業の育成と継続を支援しようというときに、国税庁も思いつきで無策なことをすべきではないと思います。国税庁の暴走!などと過激なタイトルにしましたが他意はございません。

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