みなし相続財産としての生命保険の区別をわかりやすく。

みなし相続財産としての生命保険の区別をわかりやすく。

相続財産に合算される生命保険は、大きく2種類に分けて考えたほうがすっきりします。

相続財産の目録を作るときには、生命保険を評価する基準が違うので別枠で書いて集計します。みなし相続財産としての生命保険をどこで区別するかを分かりやすく一言でいえば、相続のときに死亡保険金というお金になるかならないかです。

相続財産の目録作成で、みなし相続財産として保険金に変わる保険と引き継ぐ生命保険の違いを説明しているときに気が付いたことがあります。

保険に慣れない方は、意外と理解がすすまないのです。生命保険を扱う人にはあたりまえのことなのですが、そうでない方にわかりにくいということがありそうです。

■間違いやすい生命保険の権利とみなし相続財産。

◆ みなし相続財産としての生命保険は2種類。

できるだけみなし相続財産としての生命保険を、生命保険金に変わる保険と相続財産として引き継ぐ生命保険の違いについて、かみくだいて書いてみました。

1)みなし相続財産、受取人が受取る保険金(死亡保険金額で評価)

ひとつのケースでは親が契約者で、同時に被保険者(生命保険で体を提供する人)という場合です。親は契約者ですから、自ら保険料を負担しています。被保険者である親(被相続人)が死亡し、相続が発生したときに受取人に保険金が支払われる生命保険です。

(親=被相続人ですが、相続人ではなく、死亡して財産を相続される人)

2)みなし相続財産、引き継ぐ生命保険の権利(解約返戻金相当額で評価)

もう一つは親が契約者で保険料を負担していますが、被保険者(生命保険で体を提供する人)は親本人でない場合(例えば被保険者が配偶者や子)です。親の相続が発生しても、まだ被保険者である子が存命中ですから、死亡保険金は受け取れません。

どちらも保険料は親(被相続人)が払っていることが、条件になります。保険料負担者は、契約者である親(被相続人)です。

みなし相続財産としての生命保険は、相続発生時に生命保険金が契約で指定された受取人に支払われます。

しかし、引き継ぐ生命保険では、相続時にはまだ保険金にはなりません。引き継ぐ保険契約は相続時に保険金にはなりませんが、被相続人が保険料を払っていますから、相続財産に含まれるということになります。

それぞれ相続財産として評価する基準が異なります。相続が発生したときに死亡保険金としてお金になる保険と、相続が発生したときはお金にはならず、保険契約のまま相続財産として引き継ぐ保険を区別して考えることがわかりやすくするコツです。

生命保険は契約者が毎月、毎年保険料を払います。被保険者が死亡したときは、受取人に保険金が支払われます。契約者が被保険者ということは、フツーにあります。契約者が受取人ということも当然あります。しかし被保険者が受取人ということはありません。

・生命保険を確認するときに大事なこと。

「契約者は誰か?=保険料負担者は誰か?」

「被保険者は誰か?=体を提供している人は誰か?」

「受取人は誰か?=保険金を受け取る人は誰か?」

ということです。ここを見れば、みなし相続財産としての生命保険か契約を引き継ぐ生命保険かの区別をすることができます。

■生命保険金を分けると相続税がかからなくても贈与税が。

◆ みなし相続財産としての保険。

生命保険金は受取人固有の財産です。しかし、みなし相続財産として相続税がかかります。生命保険金は保険契約で指定された受取人の固有の財産として、判例がほぼ確定しています。

相続発生で受け取る保険金ですが、相続財産ではありませんから他の相続人と分ける必要はありません。それで民法上では相続財産と考えないので、相続税法ではみなし相続財産というのですね。

保険料負担者(=契約者)は親(=被相続人)ですから、受け取った保険金は相続財産と見なして相続税が課税されます。相続税がかかる場合は、他の相続人に内緒で保険金を受け取ることはできない相談です。

生命保険金の受取りは、個人で行う単独行為です。保険会社によっては、差入証なる書類があり、他の相続人の確認を求めてくる場合があります。また、保険金支払いの明細など郵便物も届きますからか、内緒にしたくても無理があるかもしれません。

■年金受給権の相続税評価をとことんわかりやすく説明。

◆ 相続財産として引き継ぐ生命保険。

親が契約者(保険料負担者)で子が被保険者という保険があります。平たく言えば、親が子にかける生命保険です。親が亡くなっても保険金は出ません。

子(=被保険者)が亡くなった時に保険金が出ます。親の相続の時には保険金になりませんから、保険契約そのものを相続することになります。

その場合の相続では保険契約が解約返戻金相当額で評価され、相続財産として課税対象となります。相続が発生してもお金にならない保険契約も相続財産なのです。

でも、その保険契約の金額的価値を決めなくてはならないのです。まだ受け取ってもいない死亡保険金額で評価するのはおかしいです。それで相続発生時点で解約した場合、いくらのお金になるかで相続財産に合算します。

つまり解約はしなくても、解約返戻金は保険会社に問い合わせればわかります。解約返戻金の評価額を証明する書類をもらっておけば大丈夫です。

親が子に変わって、契約者となり子に保険をかけることがあります。親としては子の死亡保険金が欲しいからではなく、保険契約を子に引き継ぐつもりで保険をかけます。

親がかけてくれていた保険を子が相続すると、子が新しい契約者となります。子は相続した生命保険の受取人を配偶者や子に変更することで、自分が万が一の保険として継続することができます。もし保険料が払えなければ、解約して現金化することもできます。

・みなし相続財産は課税対象。

みなし相続財産は、生命保険以外にもいろいろあります。亡くなった人が持っていた財産ではなく、亡くなるタイミングで保険会社や勤務先から受け取ったりするものをみなし相続財産としているわけです。

みなし相続財産としての生命保険金や死亡退職金などは、被相続人の死亡を原因として財産が発生しますから、相続財産かどうか意見が分かれるところです。

しかし、相続税の立場では、相続財産の一部として課税対象としているわけです。相続税がかからなければ関係ありませんが、相続税がかかるなら非課税で保険金を受け取ることはできないと言うことです。

◆ みなし相続財産としての生命保険の区別、まとめ。

みなし相続財産としての生命保険は、相続時に生命保険金に変わるかどうかで区別すればわかりやすいと申し上げました。区別を明確にして、一覧表を作成されるとき、保険金の受取人指定を見直してください。

生命保険の受取人指定は、遺言書よりも確実に受取人固有の権利となります。その結果、相続人間の公平さと遺留分の侵害がないか、よくよく確認しておいてください。

生命保険は他の財産とは違い金銭的な評価が見えにくかったり、受取人の確認が必要だったりします。保険契約の中身を理解していないと、財産目録に書いても明確に指定できないことがあります。

遺言書を書くお立場の親御さんは、自分が死んだとき保険金が出るのか出ないかだけを見極めてください。ご自分が死んだとき保険金が出るなら、生命保険金としての見なし相続財産です。保険金の受取人を確認して、保険金を相続させたい相続人に変更してください。

ご自分が死んだとき、ご自身が被保険者ではないので保険金にならない生命保険契約は権利ですから「引き継ぐ生命保険」として誰に相続させるかを決めて下さい。

その引き継ぐ生命保険契約は、次の代で保険金というお金に変わり子や孫の生活の助けになります。感謝されるのはずっとずっと先の法事のころですから、今のところはあきらめてください。

生命保険の非課税枠で相続税をクリア、無告知で入れる相続保険。

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