改正民法2019|遺言書の法務局保管、PC作成。

改正民法2019|自筆証書遺言の法務局保管・財産目録PC作成。

2020年7月11日追記:自筆証書遺言の法務局保管が7月10日から開始になりました。

DSCF1887民法の中の相続に関する規定が改正され、相続のための手続きが簡素化されたり便利になったりしています。

中でも自筆証書遺言の法務局保管という新しい遺言管理制度と遺言の中の財産目録をPC作成可能に変更されたことは大きな改正と言えると思います。

民法改正の主な項目をあげました。今回は「3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。」についてです。

1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。
2)預貯金の仮払い制度の創設。
3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。
4)遺留分制度の見直し、金銭請求。
5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。
6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

遺言作成で手間がかかるのが財産目録ですが、財産は時間が経過すれば変化します。その都度全文を書き直すのは骨が折れます。PC作成なら変わった部分のデータだけを修正しプリントアウトすれば簡単です。

自筆証書遺言の法務局保管制度と財産目録のPC作成により遺言書を作成する人が増えることが期待できます。まだ施行されていない制度もありますが、できるだけわかりやすくまとめてみました。

遺言書、書き損じればただの遺書|それでも解らない経営者へ。

◆ 遺言書が一般的でない理由。

被相続人の意思は遺産分割協議より重いので、被相続人の意志を明文化した遺言書には相応の法的な拘束力があります。形式要件が揃って家庭裁判所の検認を受けた遺言書があれば遺産の名義変更などはスムーズに進みます。

しかし遺言書は思っているほど一般的ではありません。55歳以上を対象とした遺言書に関するアンケートでも85%の人が遺言書を作成したことがなく、60%以上の方が作成する気もないという結果が出ています。実際に有効な遺言書を作成される割合は2割もないのかもしれません。

この結果は意外というより普通なのではないかと思います。なぜならhokenfpは相続税がかからなくても、今すぐ遺言書を書くように言い続けてきましたが、自問すると作成する気もない60%に入るのかもしれません。全く矛盾しますが、遺言書が一般的でない理由の本質があります。

被相続人にすれば遺言書を書くことは結構ハードルが高いというだけでなく、自分の家族だけは争族にはならないという楽観があり、さらには自分の死後のことですから真剣になれないと言うこともあるように思います。

◆ 遺言書のまとめ記事はこちら。

■遺言書の誤解、遺書の無力まとめ。

遺言書に関してずいぶん記事を書き貯めました。でもまだ自分の遺言は書いたことがないのですが、書き方のポイントはわかりました。

相続人にすれば遺言書は判決文書のようなもので、親が自分のことをどう評価していたかはっきりわかります。

遺言書を書くべき経営者が遺言書を先送りする理由もわかるようになりました。親は相続人やその孫に対して判決など下せないのです。そこに悩みが深まる理由があります。揺れ動く被相続人の気持ち、遺言書の重要性、遺言書を書けない理由が記事にはまとめてあります。書けそうで書けない遺言書、せめて財産目録だけでも整理すれば気持ちの整理もつくというものです。

◆ 自筆証書遺言のリスクを軽減する法務局保管制度。

公正証書遺言は安全確実ですが、証人2人が必要ですし費用が財産額に応じてそれなりにかかります。また遺言の内容を修正するときにも同様の手間と費用がかかります。よほど莫大な財産があるか、もめそうな家庭でもない限り簡単には使いにくい制度です。使いにくい理由の本質は意外と自分の財産を証人や公証人に知られたくないという人間不信に根差していることがあるような気がしています。

公正証書遺言の費用と証人(遺言書に書く財産の合計額)

手数料
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円

総財産が1,000万の方が1,7000円払って証人を2人も頼んで公正証書遺言を残そうとするでしょうか。財産が仮に1000万としても財産の内訳には家屋敷もあるでしょうから手持ちのキャッシュはそれほど余裕があるとも思えません。やはり公正証書遺言は事業承継などがからむ資産家向けの制度としては有効だと思います。

今回の改正により自筆証書遺言の弱点が補われることになります。単に保管するだけでなく自筆証書遺言の弱点である形式要件を確認してくれます。しかし内容には踏み込みませんので、念のため。

また法務局が受け付ける段階で作成者の本人確認や形式要件の確認を行うため家庭裁判所の検認は不要になります。もちろん紛失や偽造、破棄などの心配をする必要がなくなります。

まだ始まっていない制度ですので、運用手順の詳細はわかりませんが、これは遺言書を書こうとされている方には朗報です。いまから財産目録を整理し遺言書を書き上げて準備しておくとちょうどよいのではないかと思います。

自筆証書遺言の法務局による保管制度は、作成した遺言書とエクセルで作成した目録に自筆で日付と署名・押印したものを封筒に入れ、封をせずに法務局に持っていけば相続開始まで保管してくれます。法務局では原本を保管するだけではなく画像データとしても保管してくれます。また相続が開始すれば相続人の申請によって写しを送ったりデータを公開したりすることになっています。

誰か一人の相続人が申請を行ったら他の相続人にも通知されます。抜け駆けはできないようになっています。費用面ではまだ明らかでないところもありますが、公正証書遺言よりははるかに安価であると予想できます。また保管された遺言書の内容は相続が開始しない限り相続人が申請しても公開されません。

遺言書、書き損じればただの遺書|それでも解らない経営者へ。

◆ 財産目録のPC作成は超便利。

DSCF1890遺言書の一部をPCで作成することができるようになりました。

財産目録のPC作成とは、財産のリストをエクセルで作成すると言い換えてもよいと思います。

財産というものは毎年変化していくものです。正確な遺言書にするためには見直し・修正が必要になりますが、財産目録のリストを手書きで作成していると書き直しの手間が半端ではありません。

財産目録をエクセルで作成するときれいに作成できますし、内容の修正や追加が容易です。遺言書の本文は被相続人本人の自筆でないと認められませんが、財産目録をエクセルで作成し、添付できるので、財産内容が変わればエクセルを修正してプリントアウトし署名・捺印すればOKです。

これだけでも価値ある改正です。遺言書作成のハードルを下げる効果があると思います。

遺言書を書く気のない方でも財産目録は一度整理しておく必要があります。所有する財産をエクセルのシートにまとめると頭がすっきりします。精度をあげるためには所有する不動産などの登記簿をあげて確認するとよいと思います。また生命保険なども「契約内容のお知らせ」が毎年届いていると思いますから、保険証券と照らし合わせて証券番号ごとに整理すると生命保険の見直しが必要になったり、問題点が見えてきたりすることもあります。

田舎などでは耕作放棄田や山林がありどこにどれだけの不動産があるが把握できていないこともあると思いますが、一気に整理がすすみます。できれば若干お金はかかりますが、公図もあげて位置を把握しておくとよろしいかと思います。

遺言書を書くのがベストですが、仮に遺言書は書かなくても財産の整理ができていると遺産分割協議がスムーズに進みます。

hokenfpも遺言書を書くような資産家ではないですし、争族になるような家庭でもないのですが、自分と家内と合わせた田舎の不動産を整理し固定資産税納税通知書をたよりに登記簿を上げて確認しました。整理ができるとそのことは頭の中の引っ掛かりがとれてすっきりします。エクセルのリストと登記簿、公図を残しておけば、一旦忘れても差し支えなくなります。

従いまして、相続財産が多ければ多いほどありがたい改正です。財産目録のエクセル作成は超便利と申し上げておきます。

ところが、資産家ほど秘密主義でPC苦手で、エクセルが使えなかったりします。財産リストは人任せにできないが(相続人に見せたくないという心理があります。)、自分で作成するほどのPCスキルがないという場合は一刻も早くパソコン教室に通ってください。エクセルで財産目録を作成できるという改正はそれだけの価値があります。

◆ 遺言書の法務局保管と財産目録のPC作成、まとめ。

DSCF1889

財産目録のPC作成に関する改正施行時期は2019年1月13日ですから、以後の遺言書作成には有効です。

エクセルのフォームや書き方、項目などは他のサイトに譲りますが、きれいに枠を作成する必要はありません。

財産としてその物件が確実に特定できることが重要です。生命保険でしたら保険証券番号、不動産なら地番が一番大事な項目になります。

作成した財産目録を相続人に見られるのが嫌な場合は、PCかエクセルファイルにパスワードをかけておいてくださいね。パスワードは付箋に書いてモニターに貼り付けたりせずに、忘れないようにご自分の手帳にメモしておいてください。

自筆証書遺言の法務局保管制度はまだ施行されていません。予定では2020年7月10日から施行されることになっています。それまではお書きになった自筆証書遺言は金庫にしまっておいて健康に気を付けて下さい。

この制度が有効に機能するのであれば、わざわざ高いお金を払って公正証書遺言にする必要がなくなります。公正証書遺言は変更手続の手間が大変です。よほどの財産家で、もめ事が予測される場合とか、事業承継に関係する内容が記載されているような場合に限定されるのではないかと推測しています。

また法務局で遺言書の管理が完結しますので、家庭裁判所の検認が不要になれば相続手続きがスムーズにすすむものと思います。

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