改正民法2019|遺留分の現金支払と特別受益もち戻しの時効。

改正民法2019|遺留分の現金支払と特別受益もち戻しの時効。

DSCF1917相続税の法律の中でもややこしいのが遺留分です。せっかく苦労して遺言書を書き上げても相続人の遺留分を侵害していると遺留分減殺請求に発展する可能性があります。

民法では遺留分は遺言に優先することが法律上でもはっきり示されています。

遺言書で被相続人が遺産分割割合を決定する権利を認めている一方で、その但し書きにおいて「ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。」と明示されています。相反することですが、遺留分は遺言書に優先するので争族の原因になることが多いのです。

遺留分を甘く見てはいけません。その遺留分に関してこれまでの縛りから一歩進んで金銭請求ができるようになりました。生命保険で遺留分支払いをするような対策をすすめることもります。今後さらに遺留分減殺請求が想定される相続人は支払いの原資として生命保険を活用することも考えなくてはいけません。

民法改正の主な項目をあげました。今回は「4)遺留分制度の見直し、金銭請求。」についてです。

1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。
2)預貯金の仮払い制度の創設。
3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。
4)遺留分制度の見直し、金銭請求。
5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。
6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

遺留分に関しては減殺請求する方もされる方も遺留分の権利について知識が必要です。知らなければ遺言書が優先されて、それで終わりです。遺留分減殺請求にも期限と時効がありますから、注意が必要です。

遺留分権利者が、相続の開始を知った時から1年間権利を行使しないときは時効となり、また相続開始の時から10年を経過したときも時効となります。

◆ 遺留分減殺請求は弁護士の出番、遺留分侵害額請求。

一般には「遺留分」とは聞きなれない言葉です。相続の時にだけ出てくる専門用語と言えるでしょう。法定相続人には遺言で財産分けを指定されたとしても、最低限の遺産の取り分が規定されています。通常の法定相続枠の半分と覚えておけばよいと思います。二分の一が法定相続なら四分の一、三分の一が法定相続なら六分の一という具合です。

遺留分減殺請求は他の相続人に対して行います。現在では言い方が変わり「遺留分侵害額請求」というそうです。こちらの方がわかりやすい言い方ですがなじみがないですね。

遺言書の指定に従い多く遺産を引き継いだ相続人に対して自分の遺留分を主張して侵害している分をすんなり返してくれれば問題は起こりませんが、大抵の場合は込み入った話し合いが必要になります。利害がからむ当事者同士では話がまとまらないことも多くあります。その場合遺留分減殺請求調停や訴訟に進むことも珍しくありません。

そうなると話し合いは素人ではまとめられなくなり、弁護士などの士業の先生の出番になります。遺留分の割合が決まっていれば、それに従いおとなしく渡せばもめることもなさそうに思います。

しかしそうはいかないのは財産が金銭ばかりではなく、不動産のように評価が分かれるものがあり、また特別受益のもち戻し(後述)という厄介な問題があるからなのです。また遺留分減殺請求を申し立てると遺産の分割が成立していないことになり、すべての財産が相続人全員の共有状態になってしまいます。

◆  遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは争族のなれの果て。

遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求と言い方は変わりましたが、相続人間の話し合いで決着できれば遺留分侵害額請求は必要がないわけです。それができないから遺留分侵害額請求を内容証明郵便で送達することになるわけですから、もらった相続人にしても気分のよいものではありません。

一般の相続の素人が遺留分侵害額請求の知識を持ち、正確に手続きをできるとは限りませんから、やはり弁護士などに依頼することになります。そういう時は相続人同士の争族が激化することがあります。片方の相続人が弁護士に依頼をすると、もう片方の相続人も弁護士に依頼せざるを得なくなります。そうすると弁護士は依頼者の利益の最大化を目指すのが仕事ですから、双方の主張が衝突し、争族が激化することもあります。

その方が弁護士は収入が増えるため、中には辛辣な内容の書面を作成する弁護士もいます。言ってみれば遺留分侵害額請求に進むということは円満相続とは縁遠い、やはり争族のなれの果てと言えなくもありません。

◆ 弁護士は正義の味方ではなく依頼人の味方。

弁護士の利益を最大化するためには成功報酬を大きくすることです。依頼人の利益を最大化することが自身の利益に直結します。弁護士もビジネスですから決して公平なジャッジをする立場ではありません。

また弁護士は法律には明るくても不動産鑑定の専門家ではありません。不動産の鑑定評価は不動産鑑定士により評価額が変わるものです。それだけではなく不動産鑑定には評価額を下げる裏技もあります。相手方が提出してきた不動産鑑定書をそのまま公式書類のように、うのみにする必要はありません。

遺留分減殺請求に弁護士が絡んできたからといって弁護士の主張に巻き込まれてはいけないのです。物事には常に別の見方や意見もあるということを押さえておく必要があります。

◆  遺留分の金銭請求と現金支払いが可能に。

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一般的な感覚ではピンとこないのですが、遺留分を請求者に渡すルールは現物返還が基本的なルールだったのです。

遺産が家屋敷ならその持ち分を共有することになります。自社株だったら自社株の現物を渡すことになります。

遺留分の金銭での支払いは例外だったのです。これはもめ事を先送りしているようなものです。遺留分権利者にしても現物支給では厄介な荷物を抱えることになりかねません。売れない不動産を引き継げば逆に固定資産税などの負担が増加してしまいます。

今回の改正で「遺留分侵害額請求」と呼称がリニューアルされましたが、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができるようになりました。これまでのような現物返還は一切認めないということなので、支払うべき現金がないと逆に困ることも起こります。

遺留分権利者から遺留分侵害請求を受けた相続人はキャッシュで支払うことができない場合、支払いを猶予してもらうほかないです。これは裁判所に請求して認めてもらうことができます。こういうことがあり得るからこそ生命保険でキャッシュを用意する必要があるのですね。

契約する生命保険は基本的に終身保険でよいのですが、被相続人が契約者でかつ被保険者、受取人指定は遺留分侵害請求を受ける可能性のある相続人にしておきます。被相続人が自分の書いた遺言書で後に残る相続人が遺留分侵害額請求を受けて困るようなことを避けるには、生命名保険で対策をされるのがベストです。

◆  遺留分の特別受益もち戻しの時効。

遺留分の計算というのはそれまでの家族の清算でもあります。遺留分の算定の基礎になる特別受益のもち戻しは時期や金額にかかわらず、すべてもち戻しに算入されていました。嫁入り道具からローンの頭金、海外留学の費用まで含まれます。当然、事業承継のために贈与した自社株も含まれます。もち戻しで自社株は現在の時価評価になります。自社株を安い時期に後継者に贈与していても、遺留分を侵害してもち戻し評価になると、自社株はとんでもない額になっているはずです。

相続における特別受益の恐怖については以下の記事をご参照ください。

■特別受益と遺留分減殺請求は経営者の落とし穴。

■特別受益の泥沼相続。

■相続┃特別受益持ち戻しの恐怖。

今回の改正では遺留分に算入される特別受益(生前贈与)のもち戻しの範囲が相続開始前10年間に限って遺留分の対象財産とするとされました。ということは10年以上前なら特別受益にあたる生前贈与は遺留分算定に関して時効となるということです。この10年が長いか短いかはわかりませんが、自社株贈与をするなら早いうちが良いわけです、それも相続発生の10年以上前がベターというわけです。

死期は自分で選べませんから、生命保険の加入と自社株贈与はできるだけ早い時期にされると後々の憂いが少なくなるというものです。

◆ まとめ

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遺留分制度の見直しに関する改正民法は、2019年7月1日より施行されています。

遺留分の現金支払いは一見、使い勝手のよい改正に思えます。しかしよく考えれば、換金が難しい家屋敷のような不動産を相続した相続人にとれば、遺留分権利者に遺留分を請求されると手許キャッシュが足りないときは困ったことになります。

やむを得ず不動産を売却すれば、譲渡所得税までかぶることになります。仮に相続した不動産を売却して換金することで遺留分侵害額請求に応じるとしても、不動産の売買は買い手も必要ですし、売買には時間もかかれば、こちらの希望価格で売却できるわけでもありません。足元をみられて買いたたかれるのがオチです。

特に相続する財産が家屋敷だけの場合、今回の改正は、相続した人にとっては逆に苦しくなるかもしれません。やはり法改正後も遺留分侵害額請求という事態を念頭におきながら遺言書を書くこと、そして生命保険で対策をしておくことが重要です。

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