改正民法2019|相続法改正まとめ。

改正民法2019|相続法改正、ポイントまとめ。

DSCF1773民法のなかに相続に関して規定した部分があり、別に相続法と呼びます。

相続法では、相続人の指定、遺産分割のルール、被相続人の権利義務などがどのように受け継がれるかなどの相続に関する基本的なルールが定められています。

相続とは本質的には私的な行事です。法令で規定しなくても個人の自由な裁量で決めればよさそうなものですが、それではおさまりがつかないので相続法で事細かにルール決めがなされています。

相続法に従わない相続をしても、それでもめなければ誰も何も言いません。法律違反として逮捕されるわけでもありません。相続は遺産というお金の奪い合いでもありますから、相続法で基本的なルールを示すことにより遺産分割に合理的な説明をつけて納得できるようにしているのです。

生命保険を販売する保険営業は相続に関係することがあります。直接介入するようなことはありませんが、相続に関する基本的な知識は避けて通れません。相続とは人の生死に関係して財産の移動が発生しますが、生命保険も人の生死に関係する金融資産です。今回の民法改正は40年ぶりの大改正です。

生命保険や相続・事業承継設計に関わる人は基本的な改正点を押さえておき、アドバイスできると顧客からの信頼も高まるというものです。

民法改正の主な項目をあげました。今回は1)~6)までのポイントをまとめた総集編です。各項目からそれぞれのページへ飛ぶリンクがはってあります。

1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。
2)預貯金の仮払い制度の創設。
3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。
4)遺留分制度の見直し、金銭請求。
5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。
6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

本サイトは民法改正のポイントや問題点について実際の場面や庶民の立場で解説しています。改正内容は士業の先生方のサイトの方が分かりやすく詳細に書いてあります。詳細な条件や事例などを確認されたい場合はそちらをご参照ください。

◆1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。

■改正民法2019|配偶者居住権。

DSCF1883遺産分割で配偶者が住む家を追われることがないように配偶者居住権が設定されました。世の中が世知辛くなると思いもしない制度が必要になります。親の住む家を売ってでも金欲しやの相続がまかりとおるから配偶者居住権が必要になるのですね。配偶者居住権を利用した節税スキームは後日アップ予定しています。

◆2)預貯金の仮払い制度の創設。

■改正民法2019|相続時、預貯金の仮払い制度。

DSCF1881ややこしい手順はさておき、当座に必要なお金はさっさとキャッシュカードで下ろしおけば安心できます。もめそうな家庭の場合は、念のため相続時のお金の引き出しは預貯金の仮払い制度が安全なようです。便利になったのか不便になったのかはまだわかりません。

◆3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。

■改正民法2019|遺言書の法務局保管、PC作成。

DSCF1887自筆証書遺言が法務局で保管できるようになったので、家庭裁判所での検認は不要になります。公正証書遺言と法務局保管制度の違いはまだこれから明らかになりますが、公正証書遺言のほうが精度と信頼度ではまだ優位のようです。財産目録のPC作成はクリーンヒットです。

◆4)遺留分制度の見直し、金銭請求。

■改正民法2019|遺留分の現金支払と特別受益もち戻しの時効。

DSCF1917遺留分の怖いところは特別受益という生前にもらった援助はすべて持ち戻して分けなおすというとこです。分けられない財産を無理やり分ける遺留分から現金支払いもOKになり融通が利くようになりました。遺留分に関する特別受益の元戻しも時効が設けられました。金銭となると譲渡益課税がどうなるかです。

◆5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。

■改正民法2019|相続財産の所有権は登記優先。

DSCF1766せっかく受け継いだ相続財産も登記を先送りすると第三者に対抗できないなど、相続より登記を優先するようになりました。所有者不明土地の拡大に歯止めをかける目的だと思われますが、相続時に引き継いだ土地の登記を相続人が先送りしないようやんわり圧力がかかっています。

◆ 6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

■2019|相続人以外の特別寄与料の請求権。

DSCF1768相続人以外の親族に特別寄与料の請求権が認められるようになりました。特別寄与料とは被相続人の療養看護などの貢献を無償で行ったとき相続人に請求できる権利です。相続権のない息子の嫁に介護の苦労が報われるのでしょうか。相続人の特別寄与の権利は残りますが、どうも不公平感が残ります。

◆ 民法改正2019まとめ。

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相続の本音を言い表した昔の川柳に「泣く泣くも良い方をとる形見分け」というのがあります。形見分けと言っても意味が分からない世代の方もいらっしゃるかもしれません。

遺産分割協議などしなかった時代には、親が亡くなれば身の回りものや衣服などを相続人や親族が親の形見として分け合ったのです。その時代の相続はそれで終わりです。家を継ぐ者がすべての家と財産を引き継ぎ、嫁に出した娘には嫁入り道具一式と持参金で終わりです。次男には余力があれば親の生前に新屋を立てて田んぼをいくばくか渡して終わりです。三男以下は自力で家を構えるしかありません。

家長相続でもめないとは言いませんが、親の権限が強い時代ですから親の意向に逆らうものは少なかったと思います。

相続で財産が民主的、公平に分割されるよう民法が変わると争族はいたるところで激化するようになりました。

相続とは不労所得、一括千金の金銭の奪い合いですから権利を最大限主張するのも無理からぬところです。

「道は譲れても相続は譲れないのです。」と申し上げると多くの資産家は笑いながら首肯されます。財産というお金が人間を変えてしまうことを経験的にご存じなのですね。

民法改正について偏見を交えながら私見と概要をまとめてきました。改正の内容に意義を唱えるつもりは毛頭ありませんが、実際の相続の現場では役に立たなかったり、余計にもめ事の原因を作ったりするような改正もあります。もちろん時代と実務に照らし合わせて、とてもよくなった改正もあります。個別の改正の内容や問題点は各記事をご参照ください。

まだ詳細が不明で施行されてない改正もあれば、すでに施行され有効になっている改正もあります。施行後に運用上の不都合があればさらに修正的なルールが追加されることもあるかもしれません。被相続人にすれば死期は自分で選べませんので、相続発生時の法令で判断しなくてはなりません。その都度、内容をご確認いただく必要があります。

本サイトは士業の先生方が発信される情報とは立場が異なります。情報の細部の精度は下がるかもしれませんが、ビジネス視点や売込みを意図していません。ネット時代ですから少し調べれば誰でもある程度の専門家になれます。時間があれば簡単なことは自分で処理すれば節約になります。実務的な貧乏人の視点で話を進めていますから、必要のないことまでお金をかけることはないという立場です。

相続対策は資産が多い方やどうしても複雑な事情がおありの場合は、やはり専門家に依頼する方が時間の節約になると思います。もちろん本サイトの趣旨としては相続対策あるいは争族対策に生命保険が有効な切り札となることは当サイトの各記事で何度も取り上げています。

民法改正の内容については、今後の成り行きによっては私見がまちがっていることも起こり得ると考えています。実際、遺留分を金銭で渡すとなると相続では本来かからない譲渡益が発生する可能性があります。まだ判断できない要素も残っていますので、くれぐれもご自身の責任でご判断いただきますようお願い申し上げます。

 

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