節税できない法人保険、当期利益の落とし方。

節税できない法人保険、当期利益の落とし方を考えると。

DSCF1889中小企業の財務責任者にとれば、打つ手が限られてしまいやっかいなことになりました。

というのは、ご承知のように節税保険が国税庁の通達によりほぼ完全に封じられてから保険会社が提案してくる生命保険は利益の繰り延べ効果がない商品ばかりなのです。

節税保険、バレンタインショックまとめ。

 ◆法人向けの生命保険商品の切り口。

生命保険会社はそれぞれ迷いながらの新製品を投入してきました。後になるほど工夫を凝らした保険商品が出てきているのですが、残念ながら以前のような利益を簿外に留保できるような妙味は、もはや期待できません。

そうなると見込みで当期利益が出そうな企業はさてどうするかですが、まだ明確な方向性が出ないうちに令和元年も暮れようとしています。まったくもって令和元年というのは保険業界においては、激動というかバレンタインショックに始まる受難の一年でした。

最初は損金階段に合わせた商品だけでしたが、最近では相当工夫を凝らした保険商品が見られます。例をあげると為替リスクはありますがS生命の米ドル建生前給付終身保険(生活保障型)は終身保険ながら生前給付の医療保障となっているため第三分野保険に分類され、国税通達の損金算入割合の新ルールを適用して指定の割合を損金算入できます。

最高解約返戻率が70%超85%以下なら4割損金算入が可能です。10年で払済にすると十数年後には解約返戻率が100%を越えてきます。実質返戻率を計算すれば、もっと早期に100%を越えると思います。損金効果はそれほど期待できませんが、よくできた保険商品(詳細はS生命にお尋ねください。)です。

おっと、こういう言い方はご法度でした。研修を受けていないので口が滑りました。

節税できない法人保険、当期利益の落とし方。

 ◆オペレーティングリースのリスク感。

聞くところによるとオペレーティングリースが飛ぶように売れているとのことです。どうもこれまでの節税保険に投資されて資金は別の方向に向かっているようです。オペレーティングリースが中小企業の節税対策として適切かどうかは意見が分かれますが、税理士法人から保険代理店までオペレーティングリースの提案花盛りなのです。

確かにおもしろい仕組みですが、金融商品として見れば生命保険とは比較にならないハイリスクな面があります。

オペレーティングリースのリスクは生命保険と異なる事業上のリスクがあります。営業者といわれる賃借人の債務不履行や倒産などによりリース契約が中途解約されると、出資元本が毀損する可能性があります。また追加出資を求められる場合もあります。他にもカントリーリスクとしてクーデターや政変があった場合、想定外の損失を被る可能性があります。またリース終了後の残存価格によっては売却により損失が発生する可能性があり、出資元本の毀損、もしくは追加出資の可能性があります。

一般的にリース物件の売却はドル建てのため為替リスク(円貨の場合は関係ありません。)があります。リース物件が事故などで滅失した場合、保険金が支払われると事業収益が変動することになります。また、税制が変わる可能性があり、このためリース契約が早期に終了する場合、追加出資の可能性があります。

さらに匿名組合契約は中途解約不可であり、クーリングオフもできません。なかなか縛りが厳しいですし、リスクもそれなりにあります。世界の景気変動によっては損失の可能性があるので早期の減価償却が可能になっているということですね。

節税保険の行き詰りに、無駄遣いより納税が利口な理由。

 ◆法人保険の行く末と不毛のコスト。

法人保険の行く末とは書きましたが、保険業界、あるいは保険営業の行く末を案じてしまいます。法人保険を買う側としては節税保険がなくなると別の方法を模索することになりますが、それが見通せないなら最終的には納税するしかありません。

現在は、おかげ様で法人税は以前ほど高率ではなくなりました。以前では実効法人税率が40.9%、内部留保金課税があり実質の税率は50%近くになるようなこともありましたから節税保険はまことにありがたい仕組みでした。

現在の実効法人税率は33%強ですから、耐え難い税率ではなくなったように思っています。しかし、税金というコストは経営という視点から見れば、何の見返りもない不毛のコストです。吹けば飛ぶような中小企業では、せっかく汗水たらして薄氷を踏む思いでひねりだした利益を、有効な使い道を見つけられないまま納税せざるを得なくなるのはやはりつらいのです。

企業経営は水ものです。中でも中小企業は泥縄です。なかなか当期の利益見込みを予測して適切に利益の使い道を用意することは難しいのが実態です。利益が出そうだからといって期末に設備投資をしても減価償却できるのはごく一部で利益を抑制する効果はほとんど期待できません。

 ◆まとめ

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過去の記事でも書いていますが、利益が出る予定の中小企業にとってできることは限られます。

たとえば中小企業経営強化税制にかかる設備投資で投資額の一括償却を狙うか、決算賞与を支給するか、海外社員旅行を企画するかというようなことになります。

いずれを選択しても利益を落とす効果は節税保険ほど調整が効かず、戻ってくるキャッシュも解約返戻金もありませんから費用対効果はあまり期待できないと思います。

しかしなんといっても税金という見返りのないコストを払うよりははるかに経営にプラスになることは疑いがありません。注意すべき点は決算賞与や海外社員旅行などに資金を投入すると、一時的にはモチベーションアップになると思いますが、利益がでなくて継続できなければ不満という反動が結構大きくなって返ってきます。生命保険のように結果がシンプルでわかりやすくないのです。

それでも何ともならないくらい利益が出るときはオペレーティングリースを検討するという手順でしょうか。ただオペレーティングリースに投資しても法人保険のように事業保障リスクを軽減したり、決算賞与のように社員のモチベーションを高めたりする効果は期待できません。

念のため誤解なきよう申し上げておきますが、税金を納める必要はないと申し上げているのではありません。利益予想に対して何の手も打たず、成り行きで必要以上の納税をする必要はないと申し上げているのです。優良申告法人といえども納税した結果は表敬状一枚ですから、なおのこと一般法人では多めに納税することになっても税務調査で手加減してもらえるわけではないのです。

話をまとめるつもりが、混とんとしてきました。最近はとんと姿を見せない保険代理店の営業を案じながら、当期の利益予想にもとづく節税対策をまとめる時期になりました。

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