逓増定期保険の名義変更に網がかかるか!?
国税庁から昨年の6月28日に出されたトドメ通達で保険料の損金算入ルールは、法人保険業界を震撼させました。多くの法人保険を扱う保険営業、保険代理店、その他税理士や法人保険得意の方々には開店休業のような厳しい一年となり、いまだに道が見いだせないなか2年目のホワイトデーを迎えようとしています。
そんな中で国税庁の網からすり抜けたように生き残ったスキームが逓増定期の名義変更です。今のところ逓増定期の名義変更を扱う保険代理店のみ、気を吐いています。その唯一残るウルトラスキームにかかる不穏な噂があります。これまでも同様の噂がなかったわけではありませんでしたが、これまでといくばくか状況が異なります。
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◆ 逓増定期保険の名義変更とは。
逓増定期保険とは死亡保障が短期で逓増する定期保険です。おおむね前期期間の5倍程度の保障額になることが多いようです。定期保険ですから後期期間の保険料を含めて平準化(全期間保険料が同じ)していますら、保険料には保障額が大きくなる後期保険料の前払い部分が多く含まれることになります。このため早期に解約すると前払い部分の保険料が解約返戻金として戻ってくることになります。
この仕組みを利用して法人で逓増定期保険を契約し前期期間の解約返戻率の低い時期に経営者などに名義変更します。低い解約返戻金で譲渡を受けた経営者は、解約返戻率が急増するタイミングで保険料を1回払った後に解約して多額の資金を手にすることができます。それも、もうけた部分の保険料は一時所得になり所得税が大幅に安くなります。この逓増定期の名義変更スキームで法人の利益を経営者や後継者などに付け替えることができるのです。事業承継設計には非常に有効なスキームと言えると思います。
■逓増定期保険の名義変更で落ちると怖い落とし穴を経験者が語ると。
◆ 逓増定期保険のこれまでの経緯。
逓増定期保険は全額損金で処理できる時代がありました。細かいルールがありますが、割愛して端的に申し上げれば平成20年2月27日までは全額損金が主流でしたが、同年28日以降は半分を資産計上する取扱いに変わりました。それでも逓増定期の名義変更は美味しいスキームとして生き残っています。
そして、昨年の6月28日に出されたトドメ通達では、最高契約返戻率による損金算入割合が規制されましたので名義変更に使う逓増定期などは、最高解約返戻率が高いことが前提ですから保険料の損金算入メリットは完全になくなりました。しかしそれでも逓増定期保険の名義変更は損金の発生時期こそコントロールが難しくなりましたが、法人から個人への資金移動の手段としてはしぶとく生き残ったという経緯があります。
◆ 逓増定期の名義変更はバレンタインショックの生き残り。
ほとんどすべての、損金算入率を売り物にする節税保険に網がかかり売るべき保険商品を見失った保険業界ですが、一部の逓増定期の名義変更を得意とする代理店だけがバレンタインショックをしり目に逓増定期保険を売りまくっているという実態があります。
そうなると保険販売で食えなくなっている他の代理店や税理士なども最後の強力スキームに集中せざるをえなくなります。それが過剰に拡大するとまたまた国税庁が横暴な権力をふるうことにつながりかねないのです。
◆ 逓増定期の名変にかかる噂を分析。
実は前項で書いたような逓増定期の名義変更が拡大しつつあるのを感じています。これまで保険をすすめることをよしとしない税理士法人まで逓増定期の名義変更とオペレーティングリースをすすめてくるのです。これまでのリスク感覚はこの際ご破算にして、売りの一手でアプローチしてきます。銀行系の代理店も背に腹は代えられないとばかり逓増定期の名義変更を提案するようになりました。
こうなるとまた同じことの繰り返しです。そんな中、不穏な噂の信ぴょう性が高くなってきます。
◆ まとめ
気の毒なのは、保険会社所属の保険営業です。自社の保険商品に有利な条件の逓増定期保険がなければどうしようもありません。
せいぜい生き残りをかけてハーフタックス養老保険かドル建ての返戻率のよい保険をすすめるぐらいしが手がないのです。
切り口を変えた説明をされても、買う側からすれば目の前の今期の利益をどうするかに応えきれていないのです。
そういう点では逓増定期保険の名義変更は節税保険と目的が違います。目先の節税ができなくても出口ではそれなりの損金が発生します。利益が出る体質の企業にとれば数年後の損金発生をうまく組み合わせれば使えるのです。しかし何より美味しい仕組みは役員報酬でなく、役員賞与でなく、配当でもない手法で個人資産を増加させることができます。それも一時所得という美味しい税制で。
ここでは不穏な噂をまとめなければいけないのですが、逆に逓増定期の名義変更をおすすめしてしまいました。
今回はそういう意図ではありません。それなりのルートの情報によると逓増定期の名義変更はけしからんという話が聞こえてきますので、ここは用心しつつ損得を考えるときだと申し上げたいのです。
結論から申し上げると、名義変更をする場合の譲渡金額に関して通達で解約返戻金相当額から保険積立相当額とされれば万事休すです。ところがこれはそれほど簡単なことではないので「所得税法基本通達36-37」で規定されていることとの矛盾をどう説明するかということがあります。
そこは詭弁の国税庁、いざとなったら何とでも言いつくろうでしょうから、絶対的な安全はないということかと思います。また既得権云々ではなく名義変更時の評価額の問題ですから既契約も一網打尽になるものと推測されます。ただ逓増定期保険は資産計上さえ通達に従い正しく処理しておけば、単なる逓増定期保険でしかありません。ダメになったらピーク時に会社で解約すればそれで何も起こりませんしお咎めもありません。もちろん保険料の多くは資産計上していますから、出口としての雑収入もほとんど発生しないでしょう。
しかしよく考えてみれば名義変更の価値がなくなった時点で逓増定期保険の価値もなくなっています。不要な保障を短期で上乗せして税金を払いつつ保険会社と保険代理店に貢いでいるだけになります。それなら何もしないで税金を払った方がましになります。そういう見方もありますから、逓増定期の商品を選ぶときは最高解約返戻率が少しでも高いものを選んでおけばまだ網がかかっても救われるというものです。それはどこの保険会社かいう問いは各自お調べください。
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