書面添付制度と税理士の自己矛盾。
そのOB税理士は相続税の申告を得意としています。書面添付制度を利用して申告するそうですが、まだ税務調査に入られたことがないそうです。考えてみれば普通の税理士とは違って元調査する側ですから調査官の問題視するツボがわかるのでしょうね。
保険から離れて閑話休題のようなタイトルですが、税理士が書面添付制度を利用したがらない理由と本音を分析しました。
◆ 相続税の税務調査、非違85%。
平成30年度の相続税の税務調査での非違割合は85%、ほとんどの調査で何だかの非違が指摘され追徴課税となっています。非違とは、法に背くこと、違法だそうですがまるで犯罪者扱いの言いようです。非違があるかないか、税務調査が入るということは調査官が怪しいとにらんだネタを押さえているからですね。成果の見込めない税務調査はパスするというわけです。
◆ 書面添付制度に乗り気でない理由。
書面添付制度とは、簡単に言えば税務調査官が申告書を見て疑念を持ちそうなところをチェックし、その内容の解説を書面で申告書に添付する制度です。書面添付制度を利用すると、いきなり税務調査にならずに税理士への意見聴取が先に行われます。
税理士が書面添付制度を利用する率は2割程度といいます。多くの税理士があまり乗り気ではないわけです。事前の意見聴取により上手くいけば税務調査の省略が可能になりますが、事前の意見聴取の手間と書面作成手間増加、税務調査立会いの業務がなくなり収入減となります。採算と損得を考えれば書面添付制度は目先のビジネスとしてはマイナスになりそうです。
◆ 書面添付制度と税務調査官の思惑。
税理士にとって相続税の申告では、よほど自信がないと書面添付はできないそうです。書面添付制度では、何をどれだけ検討したのかなどを、具体的に添付する書面に記載することで、税務署の担当者が抱く疑問を事前に解消することが必要です。
その結果として、税務調査をしても適正な申告が行われており、追徴課税などの成果が見込めないと判断すれば行く必要はないということになります。税務署の調査官が知りたいことに対して、的を得た内容が書かれている書面があれば、わざわざ税務調査に行き空振りするよりもっと怪しいターゲットに向かうということになるそうです。
的を得た書面添付というのが、納税者の協力がないとなかなかできないということのようです。OB税理士は税務調査で問題になりそうなところを明確にして、書面添付をしているというわけです。
◆ まとめ
相続税は法に従い適切に納税すべきです。しかし奥様のへそくり預金をほじくり出し、名義預金とするような課税当局のこじつけの理屈はやりすぎだと思います。
相続税の税務調査で指摘を受ける項目として8割近くが名義預金だそうですから、書面添付制度を利用するなら、名義預金がないことを証明しないと税務調査はパスできないと思われます。
税務調査が入るということは、調査官が事前調査で申告内容に関して何らかの疑念をもち、追徴課税が見込めると判断したからに他なりません。書面添付制度でこの疑問点をすべてクリアできるかどうかが問題となりそうです。
書面添付制度を税理士に求めるのであれば、納税者の方にもそれなりの手間もかかります。結局はより適正な申告が前提となるように思います。