節税保険の出口対策、バレンタインショックの駆け込み保険が危ない。

せいめいほけんのせいめいほけんの節税保険の出口対策、バレンタインショックの駆け込み保険が危ない。

法人が節税目的加入する全額損金の保険は、保険料がすべて費用に計上できました。いずれ解約返戻金として戻ってくる保険料を費用にできるのですから、簿外積み立ての効果は大きなものがあります。

数年後、解約返戻率がピークのときに解約すると、払いすぎた保険料が解約返戻金として雑収入になって戻ってきます。保険料を払うことが、利益の繰り延べになっています。

ただ、虎の子の利益を保険で繰り延べただけでは、節税になっていません。保険で利益を繰り延べたときに出てくる、解約返戻金の使い道を設計することが、出口対策となります。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

◆ 中小企業の生き残りは保険で利益を繰り延べ、有効活用。

企業経営を考えるとき、出口対策より以前に考えるべきことがあります。安易に納税という選択肢を選ばず、利益を繰り延べることが何より重要です。コロナ禍を引き合いに出すまでもなく、中小企業の経営は、明日のこともわからない泥縄経営があたりまえです。

そういう中小企業の実情を見るにつけて、当年度で得られた利益を先の経営の役に立てるため繰り延べることが重要です。その手段として、手堅い生命保険を検討するのは当然の選択肢です。中小企業にとっては、今年度に税金を支払うか、次年度以降に支払うかは同じことではないのです。

この感覚の差は、経営者の危機感の差とも言えるのではないでしょうか。あっさり言ってしまえば、税金のような見返りのない不毛のコストは、経営という視点ではできる限り先送りするべきなのです。できれば払わずに済ませる、それもできなければ、先送りして出口対策を考えるのは、中小業の生き残り戦術と言うべきものです。

税金はほどほどに払っておく心構えこそ大事です。企業と言うものは、絶えず成長しなければ経営を維持できません。利益の出ている中小企業は、今期の利益を来期以降の設備投資に充てることができれば、これは誠にうまい話なのです。それだけに中小企業の利益の繰り延べには重、要な意味と価値があります。

◆ バレンタインショックの駆け込み契約全損保険。

令和元年に始まったバレンタインショックは、同年6月28日の国税通達により一網打尽となりました。損金算入率が、最高解約返戻に応じて制限されるようになりました。その結果、節税メリットはほとんど享受できなくなりました。

しかし国税庁のパブリックコメントから販売停止までの間に、駆け込みで大量の全損保険が販売されました。駆け込み以前も含めて、節税目的の法人保険の多くは有効継続中です。それはやがて来る解約返戻率のピークを待っています。

日本中に保険の優績者の証である、MDRTが誕生したという、まさに絶頂のラスト景気でした。それらの保険がまとめて解約時期を迎える令和10年が、徐々に近づいてきています。しかし多くの企業では保険料を払い続けるだけで、出口対策はできていないのではないでしょうか。

◆ 解約返戻金は雑収入、有効活用が絶税に。

せっかくラストチャンスを生かして、節税保険に駆け込むことができた企業は、貯めこんだ利益を税金に差し出すだけでは知恵がありません。損金で継続できる保険がなくなった今、どうすれば節税保険からでる雑収入をうまく消すことができるのでしょうか。

ここは知恵比べというべきところです。保険や財務知識の総力を結集して出口対策を考え、利益を有効に経営に回すことが何より重要になります。

節税保険は保険料を費用で落としていますから、解約すれば多額の雑収入が発生します。何も対策を行わないと、せっかく繰り延べた利益が課税対象となってしまいます。雑収入が発生した年度において、解約返戻金をうまく費用にあてることができれば節税になります。

節税保険を解約したときの雑収入を、設備投資などに当て込み相殺する戦略を、出口対策と言います。ところがこの出口対策が、経営の現場では思うように簡単には設計できないという問題があります。

◆ 節税保険は釣り合う出口対策が必要。

法人で契約する保険では、支払った保険料を保険積立金とするか、損金とするか保険の種類によって適法に経理処理をしなければなりません。世間で節税保険とか損金保険と呼ばれている保険には、保険料の全額を損金(費用)化できるものや半損と呼ばれる1/2損金の商品があります。

保険積立金とすれば、税金を払った後の利益から積み立てることになりますから、有税で処理することになります。損金となれば保険料は、期間の費用となり損金処理され、利益が減り税金もその分減ります。

そうして数年保険料を支払っていくと、節税保険の場合、解約返戻率のピークがやってきます。そもそも保障としてのウエイトは低いので、解約返戻金を受け取る目的であれば、このピーク時期の解約を外す手はありません。

・解約返戻率のピーク管理がポイント。

節税保険の解約返戻率とは、それまでに支払った保険料累計金額に対する返戻率ですから、ピークを外すと大きな損失になる場合があります。

解約のピークを迎えた保険を解約すると、解約返戻金が支払われます。他の投資とは異なり保険の場合は契約時点で解約返戻金が決まっていますから、安全確実な投資と言えると思います。しかも損金で落としていますからB/S(貸借対照表)にのらない簿外の資金です。

簿外の資金が解約によって現金化され、当期の雑収入となりますが、何もしなければ、これは営業外の利益として課税対象になります。この雑収入を予定の設備投資などに充てることで、資金確保と同時に課税が回避され出口対策となるわけです。

このように節税保険は、解約のピーク時に見合う出口対策を早めから予定しおくことが、有効な節税手段になります。節税保険の解約返戻金とピッタリ釣り合う出口対策は、それほど簡単ではありません。

しかし出口対策をいろいろ組み合わせたり、保険の管理テクニックを駆使したりしてタイミングを合わせることで、予定以上の多額の納税を抑制することができます。

◆ 大量の簿外資金と雑収入の行方。

節税保険を契約している企業では、解約を忘れていない限り、巨額な雑収入の受け皿として出口対策を考えておかなくてはなりません。それが間に合わなければ、税務署がほくそ笑むことになります。

今後巨額になるであろう雑収入の行方が、注目されるところです。もちろんコロナ不況で財務事情が悪化していれば、計画的かどうかは別にして、見事な出口対策ができていることになります。

経営とは環境適応業であるという見解がありますが、それはコロナ禍やウクライナ戦争による環境変化を見るまでもなく、経営が事業計画通りに順調に進むことがまれだからです。外から見ているほど安穏とはしておらず、実際の現場では山あり谷ありドツボありが経営だということです。

◆ 出口対策がうまくいかない理由。

それだけに中小企業にとって保険は重要な役割を果たしてきました。とくに節税保険は、経営の動脈であるキャッシュをうまく回すためにはとても有効な手段でした。

ただ実際の事例を見ていると、多くのケースで出口対策が機能しない事態や、出口対策そのものを有効に設計できていないケースがなんと多いことか。

例えば、現実的には、生命保険の解約返戻率ピークに合わせて、設計通り退職する社長はほとんどいません。みなし退職で役員退職慰労金を支給しても、実質的な引退ができず、退職金を否認されるリスクが高まることもあります。

設備投資は計画通りに進まなかったり、償却できる金額が少なくなったりして、あてにしていた節税保険の雑収入が使えなくなったりします。

出口対策のために投資したり引退したりするというのは、やはり本末転倒になってしまうようです。経営をしていると、どこかでかならず不測の事態が発生します。それをどうにかしのぐことができても、また次の問題が生起します。

絵に描いたように事業計画が進むことはほぼありません。出口対策が必要なことは理解していても、実際は逃げ水のように出口対策が逃げていくということが、経営は泥縄という所以(ゆえん)です。

◆ 中小企業にとって課税の繰り延べこそ価値。

節税保険は課税の繰り延べに過ぎない、という意見に対する反論です。出口対策ができなければ、課税の繰り延べは無駄だと言えるのでしょうか。経営という視点で申し上げれば、中小企業にとって決して無駄ではない、むしろ万が一のキャッシュ保険というべき仕組みなのです。

保険は本来一定期間の保障を買うものです。その間に保険事故がなければ、保険料は無駄だったということにはなりません。仮に保険事故が発生して、保険金を受取ったら儲けたと考えられるでしょうか。いえいえそんなことはありません。

無駄なように思える保険料が、経営のリスクを支えているのです。課税の繰り延べで将来の利益減や万が一の事態に簿外のキャッシュで備えているというのが、節税保険なのです。キャッシュこそ企業の動脈、生命線ですから課税の繰り延べこそ価値があるということを、ご理解いただけるのではないかと思います。

◆ 出口対策の類型は経営戦略に直結する。

出口対策は簡単にできないと申し上げました。でもできることなら知恵を出し、手法を組み合わせて、せっかく汗水たらして稼いだ利益を少しでも多く残すように対策を組み合わせてください。

詳細は他のサイトで検索いただければよいかと思いますが、考えられる出口対策を使い勝手の良い順位並べました。参考になさってください。

・役員退職金の支給(予定利率が良い契約は保険現物支給)

・経営力向上計画の一括償却活用

・計画的な設備投資(大規模修繕・LEDなどの一括償却)

・オペレーティングリースに投資(資金凍結に注意)

・決算賞与支給、海外社員旅行

・4割損金の法人保険契約

・法人保険の減額(一部解約)・失効による解約の繰り延べ

・出口に年金支払い特約付加(保険商品、会社によって異なります。)

・貸倒損失や固定資産の除却損、棚卸資産の評価損

・法人所有不動産や株式の売却による評価損

・法人保険の名義変更による評価損

各項目に関しては詳しくは書いていませんので、検索してお調べください。

◆ 節税保険の出口対策が簡単でない、まとめ。

バレンタインショックの駆け込み契約で契約した、大量の節税保険の解約時期が近づいています。しかしそのときに発生する雑収入に合わせた出口対策は、それほど簡単ではないことを申し上げました。たとえ出口対策がうまく設計できなくても、中小企業には利益の繰り延べは十分価値があるとも書きました。

出口対策がずれ込んだとしても、各企業の実情にあわせてできることはあるはずです。本記事をご参考にしていただき、できることを今から対策すれば間に合います。

税金を払うなと申し上げているわけでは、決してありません。必要以上の納税をしても、何の見返りがあるわけではありません。景気は乱高下していますから、毎年同じように利益がでるとも限りません。中小企業がこの荒波の中で雇用を守りつつ生き延びるためには、工夫も知恵もそして節税も必要です。

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