売れない家の相続、固定資産税は誰が?

売れない家の相続、固定資産税は誰が?

相続登記を自分でする中で、田舎の相続についての問題を実感してきました。

相続人は都会でマンション暮らし、相続する価値のない、誰も欲しがらない田舎の不動産が相続登記されることなく放置されてきました。

その結果が所有者不明土地の問題に発展してきました。相続登記を義務化するだけでは解決しない問題であることは明らかです。

相続登記に必要な書類と手順を、実際にやった素人がわかりやすく。

◆ 売れない家、田舎の山林、耕作放棄田の重荷。

確かに売れない田舎の家は処分に困ります。仏壇にはご先祖様の位牌があり菩提寺のお世話や付き合いもあります。田舎の山林は昔の様に山に入って柴刈りをしなくなったので、けもの道も見分けられません。耕作放棄田には草木が生い茂っています。

ところが稲作をしている田でも相続のときに困ります。土地改良で大きな整地された田になっていますが、採算が取れない小作農家は、農業をやめて大規模農家に委託しています。

農作業はしなくてよくなりますが、農地の賃貸料で固定資産税といまだに続く土地改良の賦課金が賄えません。信じられないようなばからしい話ですが、売れない農地であり農業収入はなく、持ち出しになる点では耕作放棄田と採算は変わりません。草刈りはしなくてもよいですがね。

相続登記、自分でやる抜け漏れ想定外。

◆ 相続登記しなければ法定相続の共有。

分けられない、欲しがらない遺産は遺産分割協議でも話がまとまりませんから、そのままだと相続人が共有していることになります。

相続登記をしていませんから、それも相続人全員が法定相続割合で共有しているという、責任所在が分散する厄介なことになります。だれが管理責任を負うのか、だれが固定資産税を払うのかが問題になります。放置しても役所は相続人代表に固定資産税の納付通知を送ってきます。

この問題はひとまず先送りしたがゆえに発生します。誰が責任を持つのか、共有する不動産の管理・維持費の負担割合も話し合っておかないと、あとで関係悪化の火種になります。

相続登記義務化でも登記をしない本当の理由が深刻。

◆ 相続財産で最も多い土地・家屋が4割。

相続が発生すると被相続人の遺産は相続人で分けることになります。

遺言書などがなければ法定相続割合で分けるか、遺産分割協議で話し合って決めることになります。

国税庁のまとめによると2019年度の相続申告のうち不動産(土地・家屋)が全体の4割を占め最も多かったそうです。不動産は有価証券や現預金、保険金とは異なり、換金性が低いので相続分に合わせて分けることが難しい遺産になります。

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◆ 売れない家にも固定資産税、維持管理費が発生。

売れない田舎の家は広いですが、老朽化して住むためには手入れが必要です。空き家になっていても壁や塀の修繕、定期的な掃除と手入れ、火災保険などの費用も見込まねばなりません。

田畑は近隣の迷惑になりますから、耕作をしなくても放置しておくことはできないと思います。定期的な除草は必要ですし、価値が低くても固定資産税は毎年きちんと請求がきます。固定資産税の支払いをせずにいると、延滞金付きの物々しい督促がきます。

ましてや山林や原野などは、土地の区画どころか立ち入ることすらできない状態になっています。それでも申し訳程度の固定資産税がかかります。

売れない不動産は、売却などで処分することができれば、問題は一気に解消するのですが、決して簡単なことではありません。ご近所で買っていただければ儲けものですが、多くは老人の独り暮らしで土地は有り余っているとしたものです。

◆ 換価分割、代償分割、現物分割できない無価値不動産。

〈換価分割〉

仮に安くても売れさえすれば分けることができます。管理責任から解放され、固定資産税も払わなくてよくなります。田舎の価値が低い不動産はこれが一番難しいところです。二束三文でも処分できれば問題は解決できます。

〈代償分割〉

相続人のうち一人が不動産を相続し他の相続人には代償金を支払います。これは資金がなくてはできません。不動産を引き継ぐ相続人を受取人とした保険に入っていればよいのですが。相続が発生してからでは保険が使えません。

〈現物分割〉

できることとできないことがあります。一つの家を分割することはできません。複数の不動産があれば、遺産分割協議で引き継ぐ不動産を決めることができます。誰も引き継ぎたくない場合は、遺産分割協議が成立しません。

価値のない不動産というのは厄介なお荷物になります。縁を切ろうにも縁が切れないばかりか、永遠にコストがかかり続けるのです。

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◆ 売れない家の相続、まとめ。

売れない家の相続は出口がないのでしょうか。相続登記が義務化されれば遺産分割協議は押し付け合いになりさらに難航すると思われます。

相続した人は必要のない不動産を所有することになり、登記して固定資産税や管理・維持費の負担が発生します。

田舎の不動産活用をビジネスに、ゆったりと広い、庭がある、自然がある、ペットが飼える、駐車場を借りなくても庭に置ける、余裕のテレワークにつかえる田舎暮らしとなるでしょうか。はかなくも夢がありますが、それほど条件の揃った物件ばかりでもありません。

ただ、売れないと思い込む必要もありません。人それぞれ、時代ともに価値観も変わっていきます。あこがれの田舎暮らしを目指す都会人に、巡り合う可能性もこれからは高くなると思います。

密になろうにも人口密度が低くだだっ広い田舎の土地では、コロナ禍でも安心です。都会のマンションにすむ田舎の長男さんに向けて書きましたが、少しは慰めになりましたでしょうか。

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