介護離職か介護放棄か!やせ我慢と無知が招く介護破産の危機。

介護離職か介護放棄か!やせ我慢と無知が招く介護破産の危機。

高齢化に伴い介護は、大きな社会問題として浮上しています。誰にも親があり、その結果として自分があります。親はいずれ年老いて、自分のことが自分でできなくなる時期がきます。これは長寿時代に避けて通ることができない、宿命的な課題です。

介護はお金がかかります。お金がなければ、半端でない手間がかかります。親の介護をするために、職を離れなければならない人もあります。コロナ禍の時代でも景気が良くても悪くても、介護は誰にでも忍び寄るリスクになっています。介護破産を避けるための介護保険(認知症保険)は意味があるのでしょうか。介護破産とならないために何をすればよいのかじっくり考えました。

■遠距離介護で夫婦別居の危機。

◆ 介護離職は介護破産への道。

最初に申し上げたいのは、介護のための離職も介護を放棄することも決して良い結果をもたらさないということです。介護離職は経済的な理由だけでなく、介護のストレス的にも避けなければならないとお考え下さい。付きっきりの介護は、いかに献身的な忍耐強い方でも身がもたないのです。

介護離職を避けるためには、介護休業や介護休暇など、まずは職場で利用できる制度を積極的に使うことが重要です。

しかし中小企業では、介護を理由にたびたび休むと、たとえそれが有給休暇であっても白い目で見られがちです。理解のある職場や上司であればまだ救いもありますが、同じ部署の他の社員に負担がかかるので、心苦しい気持ちになってしまいます。

理解を得られるように職場には包み隠さず、洗いざらい説明して状況を把握していただくよう心がけましょう。日本人的には身内のことはオープンに話さないことが多いと思います。でも介護ではそうは言っていられない、特別な事情になります。話すことで気持ちが楽になり、職場の管理者も協力や配慮がしやすくなります。また他の社員への納得感も得やすくなります。

大事なことは、なんとしても介護離職は避けなければなりません。いずれ介護貧乏への入り口となり、果ては介護破産につながっていくことが多いからです。

■生命保険と認知症は相性が最悪である理由。

◆ 介護破産とは、経済的に立ち行かない窮状。

介護破産とは、どういう状況を指すのでしょうか。介護を始める可能性がある人、あるいは介護中の自分の将来を憂えて介護共倒れを心配する人にとって、介護破産と聞くとドキッとすると思います。

そもそも介護破産とは実際に自己破産することではなく、介護により経済的に立ち行かなくなる窮状を言います。介護費用だけでなく、介護する人の老後資金も含めて、経済的に回らなくなる状態を介護破産と定義しています。

たとえば、公益法人生命保険文化センターの調査によれば、月々の介護費用の平均額は7万9000円。そして、介護経験者が実際に介護を行った期間の平均は4年11か月でした。平均ですから、これより長期の人も半分いるわけです。また一人の介護に必要な金額の平均は546万程度と言われていますが、介護期間が長引けばさらに負担は増加します。

介護離職で定期的な収入が途絶えて、親の年金と自己資金だけで乗り切ろうとすると目算が狂う時期がきます。人生には思いがけない出費がつきものです。大病をすれば医療費が別にかかります。家の修理や車の買い替えなど、ライフイベントにもお金がかかります。

先行きが見えない介護トンネルでは、将来的な介護資金不足の不安が膨らんできます。

■老後に難民とならないための耳の痛い処方箋。

◆ 介護放棄はできない?介護の扶養義務はどこまで?

誰しも一度は介護放棄が、頭をよぎることがあると思います。民法第877条によれば、直系血族や兄弟姉妹はお互いに扶養をする義務があります。親なら介護するのも仕方がないですが、兄弟姉妹の介護では降って湧いた災難のようにさえ思うはずです。

介護されている方が感謝してくれれば、まだ救いもありますが、言いたい放題の家族もあります。とくに認知症が進むとこの傾向が強くなるように思います。自分が言ったことは覚えていないのですから、なおさら厄介なのです。

認知症でなくても介護される人は体の自由がきかないわけですから、自分のことが自分でできないイライラがあります。介護者にかかるストレスの大きな要因は、介護される人のわがままにあるかもしれません。わがままと言ってしまうのは過言かもしれませんが、普段なら許せる言動が、ストレスを抱えた介護者にはプレッシャーになることは実体験としてあると感じています。

被介護者の子どもの配偶者には、法律上の扶養義務はないということは書き添えておきます。息子の嫁には、介護の責任はないのですが、そうは言えない家庭の事情もあると思います。

・介護放棄と生活保持義務。

介護放棄は、法律上は許されないということになっています。子どもは親の介護を放棄することはできないし、兄弟姉妹の介護も放棄することはできません。

生活保持義務などと難しい言い方をしますが、違反すると罰せられる可能性もあります。自分の生活を犠牲にしてどこまで介護に時間と費用をさけるか、落としどころが難しくなります。

■リビング・ニーズ特約とは、わかりそうでわからない不思議な無料特約。

◆ 介護の情報不足の原因?

介護は、先のことだと思っていると軽度認知障害などと診断されて慌てます。突然やってくるので対応が後手に回ります。とりあえず運転免許証の返納を済ませて、買い物や通院などの足をどう確保するか考えます。家族が駆けつけるか、タクシーを呼ぶしか方法がありません。

でも、調べていくと地元の市町村が巡回バスを出していたり、運転免許返納者に対するタクシーの割引制度があったりします。

こうして介護状態の進行とともに、介護に関する制度や相談窓口、ネットからの介護に関する基本的な情報が手にはいることがわかってきます。

ただ多くのケースでは、自分の家族が直面するまで知ろうとしないのです。そのため予備知識や事前の準備がなく介護に突入することとなり、慌てることになります。

認知症のような場合、まだ進行に時間的な余裕がありますが、骨折などの事故や脳梗塞の場合、突然に介護が必要ということもあります。

ここで慌てて、介護のために離職などを選択すると介護破産という悲劇につながりかねません。こういう事態を防ぐためにも、社会的な介護保険制度に関する情報収集や介護資金などについて、地域包括支援センターや医療機関の窓口でプロと相談することが重要です。またあらかじめ親と介護資金について相談し、経済状況を把握しておくことが大事になります。

・介護のプロに相談。

介護のプロと相談することが重要と申し上げましたが、それがそれほど簡単なことではないのです。ザイアンスの法則ということがありますが、人は知らない人には冷淡で距離を置こうとします。初対面の人に身内の問題を話すことには抵抗があるものです。

そこは、相談する人と単純接触回数を増やすとなじみが出てきて相談しやすくなっていきます。この法則を押さえたうえで、どこまで相談してよいか、本音を打ち明けられるかということが介護制度の利用につながってきます。最初は相談して拒絶されればどうするか、身内の恥という思いもあり言えない部分も出てきます。

ケアマネの中には、自分がかかわれる範囲と家族や身内がすべきことを、はっきり区別される方もあります。緊急時に助けを求めても助けてもらえないような気になります。

介護職員にはルールがありながら、そうは言っていられない現実もあります。支えられ上手などと簡単に言いますが、それほど簡単ではありません。しかし、そこを一歩踏み出すことで次に打つ手が見えてきます。

大事なことを項目であげておきます。

①慌てて介護離職を選択しないこと。

②社会的な介護保険制度の仕組みを知ること。

③自分で考え込まずに専門家に相談する、介護のプロに頼ること。

④できる限りの介護から、頑張らない介護、できる範囲の介護へ。

⑤介護される人(親・兄弟姉妹)の経済状態を把握すること。

◆ 公的介護保険制度の意味合い。

介護保険と言えば、公的な介護保険制度をさすことが一般的です。しかし民間の保険会社が販売する介護保険もあり区別が必要です。

公的な介護保険では、平成12年より公的介護保険制度が導入されました。国の制度として強制的に40歳以上の方全員が被保険者となり介護保険料を負担しています。介護が必要になると介護できる環境を整えなくてはなりません。家の改修や通院、日常の買い物のサポートなど、そのため必要な費用は軽くはありません。

介護保険制度で介護や支援が必要となった場合、介護サービスを低額で受けられる仕組みが公的介護保険制度です。しかし、自己負担がなくなるわけではありませんし、家庭での介護に要する時間は、介護する人に負担としてのしかかってきます。介護は誰にもやってくる可能性があります。

公的介護保険でカバーしきれない分は、若い時代から民間の保険会社が販売する介護保険で準備しておくことが大事です。介護保険とか介護保障保険とか呼ばれます。民間の介護保険では所定の状態が、一定期間続いた場合に一時金や年金形式で保険金や給付金が支払われる保険です。

公的な介護保険制度だけでは、心配な方は契約を検討されてもよいかもしれません。

◆ 介護の経済的負担は想定外の大きさ。

介護が長引くと介護をする人の負担は、精神的にも肉体的にも限界に近づきます。社会的な介護保険制度は助けになりますが、介護にかかる経済的な問題をクリアするまでに手厚くありません。

財産でもあれば換金し食いつなぐこともできると思いますが、これまでの貯金だけでは経済的に長続きしないのが介護です。できれば自分の手で親の介護をと思っても、無理な相談ということが往々にしてあります。かといって先立つものがないと、介護施設のお世話になることもできません。

介護を続けるためには、返済の当てがなくても借金を重ねるしかありません。介護が長引くと工面する額も大きくなります。その先は、いずれ親の貯めた葬式代も食いつぶし、先の見えない泥沼の介護トンネルが延々と続くことになります。

経済的にも精神的にも追いつめられ、切羽詰まると考えることは自死か破産かということになります。人間なかなか簡単に自らを仕舞いにすることは、できるものではありません。それゆえ自己破産という選択肢を考え、ネットで自己破産を検索し始めます。

介護は経験するとわかりますが、3カ月くらいは必死に頑張ろうとします。しかし最初の緊張感は徐々に変わり、時折、厭世的な倦怠感と絶望感に襲われます。長期の介護で感じる先の見えない苦しさは、味わってみないとわかりません。

◆ 介護破産を未然に防ぐ介護保険と認知症保険。

介護破産を未然に防ぐ方法として、民間の介護保険や認知症保険があります。ただし契約内容をしっかり理解してからでないと、後で後悔することもあり得ます。

たとえば民間の介護保険で保障の対象となる条件は「公的介護保険の要介護2や要介護3以上の状態」となっている場合が多くあります。要支援や要介護1では介護度が低く保障されません。

また、増加する認知症に対する保険として、民間の認知症保険も販売されています。要介護度に関係なく医師により認知症と診断確定されたら、その時点で保障の対象となる商品が一般的です。

認知症と要介護認定との関連性はありますが、同じことではありません。払える保険料ということもありますから、介護保険と認知症保険は別枠で考えるとよいかもしれません。保険会社や保険商品により契約の条件にかなり差があります。

各社の保険を比較しながら、ご自分の目的にあった条件を選ぶようにしてください。

認知症保険は、認知症と診断されると保険金を受け取れます。保険会社の独自基準であれば、介護状態にならなくても保険金を受け取れる場合があります。認知症の治療費や介護保険金を受け取るまでの経済的な負担を軽くできると思います。

・指定代理請求人を家族と共有。

認知症保険に加入したら、そのことを家族に伝えておくことが大切です。この病気では、記憶が定かでなくなり、正しい判断ができなくなることがあります。認知症になった際に、代理人が保険金を請求できるように契約時点で忘れずに指定代理請求人を設定してください。

■生命保険の指定代理請求の落とし穴。

一方で、民間介護保険は保険会社から販売されている介護保険のことです。加入は任意で、保険会社の求める条件をクリアできれば契約できます。公的介護保険は、介護サービスを割り引いて自己負担を軽減する仕組みですが、民間の介護保険は現金給付です。要介護状態になると、契約時の条件により、一括もしくは年金形式で介護保険金を受け取れます。

上記2種類の認知症保険と介護保険を組み合わせることで、要介護状態になったときの経済的な負担を大幅に軽減できます。

長期的にみると介護保険や認知症保険も医療保険です。通常採算割れになると考えて間違いないですが、採算が取れるかどうかの分岐点は見極めておく必要がありそうです。

・できる範囲で頑張る介護。

介護保険や認知症保険で介護破産のリスクを軽減することはできますが、決して万全ということではありません。そもそも介護は出口の見えないトンネルと同じです。

介護にかかる費用も、終わりが見えないということがあります。頑張らない介護とはよく言いますが、それは人ごとだから言えることです。できる範囲で頑張る介護、とでも言い換えた方がよいかもしれません。

◆ 介護破産まとめ。

運転免許証を返納し、悠々自適の暮らしができるころには目は見えにくくなり、耳は遠くなり、足腰は弱くなり、散歩も杖なしではしんどいようなことになります。

悟れるようで悟れない、あの世へは順番ということもありますが、当事者になるとあきらめきれずに焦りが出てきます。

こんなはずじゃなかったのに、という思いが駆け巡ります。しかし、財産があればなんとかなるかもしれませんが、普通のサラリーマン家庭ではそれほど財産に余力があるとも思えません。

人間そうあっさり旅立つことができるとは限りません。言い方はよろしくないですが、新型コロナ肺炎でぽっくりいけば、悲劇ではありますが、それはそれで介護の苦労ということで考えれば、それほど不運とも言えません。介護するほうも、される方も苦労がなくなります。何が幸せで何が不幸かはそう簡単には、人間の価値観や経験で推しはかれないものです。

なぜ自分だけがと思うかもしれませんが、介護はそもそも不公平なものです。身に降りかかってきた介護では、介護を組み込んだ生活設計を考え、生活を介護オンリーにしない工夫が必要です。

また介護により、助け合い学びあうこともあります。誰にも親があり、老いた後、長い老後があります。それは自然なことです。人とのつながりに感謝すること、そして介護の試練も順調な学びと受け止めることも大事です。

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