
相続放棄は、単に「いりません。」と言えば済むほど簡単な話ではありません。
自分が放棄すれば終わりではなく、相続権は次順位の親族へ移る可能性があります。
その結果、被相続人の兄弟姉妹、場合によっては甥姪にまで、
突然相続人の立場が回ってくることがあります。
しかも、先順位の相続人が放棄する以上、そこにはたいてい理由があります。
借金だけなら判断は比較的容易です。
しかし厄介なのは、不動産という「見た目では価値判断しにくい財産」があ
る場合です。
一見すると土地持ちに見えても、実際には売れず、維持費だけがかかる
“負動産”であることは珍しくありません。
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◆ 知らない間に親戚が相続人、放棄で変わる相続順位。

法定相続は民法で順位が定められており、
遺言書がなければその順に相続権が移ります。
配偶者:常に相続人
第一順位:子・孫など直系卑属
第二順位:父母・祖父母など直系尊属
第三順位:兄弟姉妹(代襲で甥姪)
子がなく孫やひ孫もいない場合は、
被相続人の直系尊属である父母や祖父母が第二順位の相続人になります。
父母も祖父母も亡くなっているような場合は、
第三順位として被相続人の兄弟姉妹や甥姪などの親族に相続権が移ります。
先順位(せんじゅんい)の相続人全員が相続放棄すると、
後順位の親族へ相続権が移ります。
疎遠な親族にとっては、まさに寝耳に水です。
注意点として、兄弟姉妹が相続放棄していれば、その子(甥姪)に代襲しません。
しかし兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、代襲相続権が発生します。
代襲相続については、民法887条2項に規定されています。
【民法887条2項】
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当
(=相続欠格事由に該当)し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったとき
は、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
この規定が、兄弟姉妹についても準用されます(民法889条第2項)。
ここは誤解が多いポイントです。
先順位の相続人が、相続放棄したことを知らなければ、
後順位(こうじゅんい)の相続人は
自分が相続人となっていることを知ることはできません。
親戚も疎遠になっていると、連絡が取りづらいこともあります。
そもそも相続放棄したら、遠い親戚に迷惑をかけるかもしれない
ということを知らないということもあり得ます。
・固定資産税通知や債権者連絡で初めて知ることも。
相続放棄があったことを知らされないまま時間が経つと、
債権者から督促が来る、固定資産税の納税通知書が届く
不動産管理の連絡が来る、などして初めて
「自分が相続人になっていた」と知ることがあります。
後順位相続人にとっては、財産内容が分からない、負債の有無も不明、
不動産の価値判断も困難という三重苦になりがちです。
大事な点は、先順位の相続人が相続放棄したことを知ったなら、
後順位の相続人は「なぜ放棄したのか」をまず確認すべきです。
一方では、相続放棄したらそのことを後順位の相続人である親戚に、
正しい情報として伝えてあげる責任があると言うことです。
相続放棄には通常、合理的な理由があります。
その事情を知らずに3か月を過ぎれば、単純承認となるリスクがあります。
単純承認:借金を含むすべての財産を無制限に引き継ぐ相続方法
◆ 親戚の相続放棄の手順を整理。

相続放棄をする場合は、原則として自己のために相続開始を知った日から
3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
基本手順
① 必要戸籍等を収集
② 相続放棄申述書を作成
③ 家庭裁判所へ提出
④ 照会書に回答
⑤ 受理通知書受領
戸籍収集は、被相続人の出生から死亡まで、
先順位相続人の存否確認、放棄者自身との関係証明などが必要になり、
兄弟姉妹相続では想像以上に煩雑です。
これは司法書士などの専門家に依頼した方がよいかもしれません。
相続放棄の申立てを行うと、家庭裁判所から約1~2週間後に相続放棄の申述照
会書が届きます。相続放棄の意思確認のためですから、正確に回答し、裁判所へ
返送してください。
照会書を返送すると、相続放棄申述受理通知書が郵送されてきます。これで相続放
棄の手続きは一件落着です。相続放棄をしたことを証明する相続放棄申述受理証
明書は、必要に応じて請求できます。
◆ 田舎の土地・古いマンションは「資産」とは限らない。

不動産は、所有しているだけで資産になるとは限りません。
次のような不動産は、実質的にマイナス資産となることがあります。
・買い手のつかない地方宅地
・老朽化マンション
・管理不能な空き家
・維持費だけかかる山林・農地
・修繕積立金負担が重い区分所有物件
・売れない土地は、想像以上に重い。
売れない不動産は、固定資産税・草刈り等維持費・火災保険・
修繕費・管理費・積立金が延々とかかります。
借金ならいつか完済できますが、売れない不動産は出口がないことがあります。
この違いは非常に大きいです。
・経験者として申し上げるなら。
一見すると「土地持ち」は聞こえがいいものです。しかし現実には、
「値下げしても売れない」、「問い合わせすら来ない」、
「毎年コストだけ発生する」ということが普通にあります。
地方では、スーパー撤退、学校統廃合、バス減便、高齢化進行が重なると、
不動産価値は静かに、しかし着実に目減りします。
費用ばかりがかさんで、いつまでたっても処分できないという、
まさに「負」の財産となり果てることがあります。
負動産のマイナス面を見抜くことは、さらにむつかしいと思います。
売れない、換金できない不動産は負債と考えるべきなのです。
負動産と負債との違いは、負動産には完済がないということです。
負動産の相続には、リスクがあることを理解していても
いつか売れるかもしれないという期待があります。
しかし気が付いたときは、売るに売れない負動産にかかる
維持管理コストに泣かされることになります。
◆ 相続放棄に落とし穴、放棄できない管理責任。

相続放棄をしても、一定の場合には不動産の保存義務が残ることがあります。
・現行民法上の整理
2023年改正後は、相続放棄時にその財産を現に占有している者
は、次の管理者等へ引き渡すまで保存義務を負う場合があります。
つまり、「放棄したら一切無関係」ではありません。
相続放棄をしても、その不動産を現に占有している場合には、
次の管理者等へ引き渡すまで保存義務が残ります。
・典型例
被相続人と同居していた空き家
実際に管理していた土地
鍵を管理していた建物
などは注意が必要です。
◆ 相続放棄連は親戚に迷惑、無価値不動産相続人、まとめ。

相続放棄は、本人だけの問題で完結しないことがあります。
先順位相続人の放棄によって、
・親族へ相続権が移る
・負債や負動産の判断を迫られる
・3か月以内に対応を迫られる
という負担を生じさせるからです。
・負動産は“資産”ではなく“維持費付きの責任”になり得る。
地方不動産の実勢を見る限り、「土地だからそのうち売れる」
「道路が通れば化ける」という期待だけで引き継ぐのは危険です。
不動産は、持っているだけでコストが発生する以上、
収益を生まなければ負担です。
長年住んだ実家や、思い出の詰まった田畑を手放しにくい気持ちは理解できます。
ですが、感情で残した不動産が、生活の足かせになることもあります。
相続権が回ってきたからといって、安易に「とりあえずもらう」は禁物です。
“先順位が放棄した理由”には、それなりの理由がある。
その前提で判断することが重要です。
被相続人の財産がどうなっているのか、負債がどれくらいあるのか、
不動産の価値はどうなのかという情報が十分でないこともあります。
相続放棄をするということは、結構難しい判断になるということです。
さらには、相続放棄によって迷惑をこうむる可能性がある親戚などに
配慮する必要があります。
無価値どころか、経費倒れの負動産を間違って相続してしまうと、
結局処分に困り、次の代まで禍根を残すことになりかねません。
「相続放棄は親戚に迷惑?|無価値土地で後悔しないための管理責任と注意点。」への2件のフィードバック