
法務局に遺言書を預ければ安心、そう思っていないでしょうか。
確かに自筆証書遺言の法務局保管制度は、
紛失や改ざんを防ぐうえで非常に有効です。
しかし実務では、「預けているのに使えない。」遺言書が問題になることがあり
ます。
原因は法務局保管制度の仕組みそのものに原因があります。
法務局は遺言書の「中身の有効性」までは確認してくれないからです。
この記事では、制度のメリットを前提にしつつ、
見落とされやすいリスクと失敗パターンを整理します。
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◆ 法務局保管制度で起こりやすい3つのリスク。

自筆証書遺言書の弱点が、そのまま
法務局保管制度のリスクになっています。
① 内容の不備でもそのまま保管される
② 遺言能力(認知症など)は確認されない
③ 内容の相談や修正サポートは受けられない
遺言能力の有無は確認されないので、遺言者本人が
自分の意志で書いたかどうかを証明できないという点です。
遺言者本人が、免許証などを提示して
法務局に遺言を預けるという点では、遺言書の真正性は担保されます。
しかし認知症などにより遺言書を書く意志能力が欠如していたかどうかは、
確認されないのです。
遺言者の意思能力をめぐって、
争いになるようなときには不向きかもしれません。
法務局は遺言書を保管する上での形式要件は確認します。
しかし内容には関与しません。
「遺言書保管所においては,遺言の内容についての質問・相談には応じることが
できません。」
法務局のサイトには一言、目立つように赤字で書いてあります。
ただし、遺言書を法務局に保管するメリットの一つは、
家庭裁判所での検認は不要ということがあります。
◆ 法務局保管制度は遺言書の法的効力を担保しない理由。

保管制度で注意すべきリスクは“遺言書を安全に保管する制度”であって、
“有効な遺言書を保証する制度ではない”という点です。
法務局では遺言者が、遺言能力があるかどうかは、関知しません。
本人確認と形式要件は確認してくれますが、相談に応じることはありません。
さらには遺言書の内容には踏み込みません。
遺言書で物件が特定できていなくても、文字が間違っていて無効の場合や、内容
に不備があっても、そのまま保管される可能性があります。
法務局の遺言書保管制度は、イメージとしては“通知機能付きの保
管サービス”に近い仕組みです。
法務局の立場からすれば、正しい形式の自筆証書遺言を作成する責任は、
遺言者にあるというスタンスです。
ご自分で書いた内容に自信がない場合は、
やはり安全を期して専門家に相談されることをお勧めします。
◆ 自筆証書遺言+法務局保管制度は手軽で安価。

「遺言書」は「遺書」と違い法律文書ですので、
決められたルールや形式要件があります。
難しい決まりではなく、自署、捺印、正しい日付、遺言書独特の言い回しが
あります。誤字脱字がないことは、文書としては当然のことです。
しかし慣れていない素人の方には、見落としが出やすいかもしれません。
事務仕事がお得意な方はネットで検索して、財産目録の書き方や自筆証書遺言の
形式要件、物件の特定の仕方を勉強されれば、自分で書けないことはない
と思います。
自筆証書遺言であれば、少しの知識と専門家のアドバイスがあれば有効な遺言書
を残すことが可能です。
ただ、現在のところどこの法務局でも対応できるわけではなく、法務局の出張所
では対応できないところがあります。
また予約は必要ですので、お出かけ前に法務局のサイトで対応可能かどうか確認して、予約をされるとよろしいかと思います。
何度でも書き直すこともできます。法務局保管制度にかかる費用は、かなりお安くて3,900円です。
この制度の弱点は遺言書の法的拘束力を担保しないことを押さえておけば、有効
に利用できると思います。
◆ 自筆証書遺言の保管方法と公正証書遺言。
遺言書には、自分で書いて自分で保管する「自筆証書遺言」と公証人役場で証人を立てて公証
人によって作成される「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言書は、誰にも見せずにこっそりと気軽に作れます。金庫やタンスの
奥、仏壇の底などに保管しておけば秘密にできます。
隠しすぎると、永遠に発見されないようなこともあります。旅立つ前には、遺言
書のありかを信頼できる誰かに伝える必要があります。
手堅い方法としては、貸金庫に預けておくか、
法務局保管制度を利用するという選択になります。
それでも心配な場合は、費用はかかりますが、公正証書遺言にすることです。
遺言書の法務局保管制度についてはこちらをご覧ください。
■遺言書の法務局保管制度は自筆証書遺言書が検認不要、費用激安。
◆ 遺言書を法務局に保管すると・・、まとめ。

遺言書を法務局に預ければ安心、というのは半分正解です。
紛失や改ざんといったリスクは確実に防げます。
しかし、内容の有効性までは保証されません。
つまり、「保管は万全でも、遺言として使えない可能性は残る」ということです。
この制度は非常に優れた仕組みですが、万能ではありません。
自筆証書遺言の弱点を理解したうえで、
・内容に不安があれば専門家に確認する
・判断能力があるうちに作成する
この2点を押さえておくことが重要です。
この制度により、自筆証書遺言書の手軽さと有効性が発揮できるなら、
とても便利な仕組みだと言えると思います。
少なくとも自筆証書遺言書の弱点である保管責任、改ざん、隠匿、
破棄というリスクは、ほぼ回避されます。
本記事でお伝えしたいことは、法務局保管制度により
自筆証書遺言書の弱点が、すべて補強されるわけではないということです。
また一度法務局に預けると、相続人に対して、
公平に遺言情報が提供されるという点でも安心感があります。
法務局では遺言書の存在と真正性は担保してくれますが、
遺言者の意思能力は確認しません。
それゆえ、認知症が疑われる前に自分の意志で自筆証書遺言を書き、
専門家に相談してください。
そしてご自身で身分証明をもって法務局に出かけて手続きをして下さい。
よく考えてみれば、遺言者にとればご自分が書いた遺言書が、
相続発生後どうなったかを知るすべはありません。
しかし遺言者の意志は、法務局保管制度により
確実に相続人に伝えることができます。
自筆証書遺言の法務局保管制度が始まったのを機に、
遺言書作成にとりかかる潮時かもしれません。
■遺言書を書かないリスクを体系的に解説したページ
→遺言書は「書かないこと」こそが最大のリスク|法務・実務・人間心理の落と し穴 。
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