遺言書を法務局に預けると失敗する理由。

遺言書を法務局に預けると失敗する理由。

遺言書を法務局に預けると必ず失敗すると言うわけではないですが、おすすめしている自筆証書遺言の法務局保管制度に注意すべき点がありますので、本記事で補足しておきたいと思います。

遺言書には自分で書いて自分で保管する「自筆証書遺言」と公証人役場で証人を立てて公証人によって作成される「公正証書遺言」があります。「秘密証書遺言」もありますが、あまり一般的ではないのでここでは触れません。

自筆証書遺言についての記事はこちらをご参照ください。

■遺言書の勘違い総まとめ。

■遺言書の誤解、遺書の無力まとめ。

■遺言書を破棄したら罪になるかを事例で説明。

■遺言書が絶対必要な7つのケース。

遺言書の法務局保管制度についてはこちらをご覧ください。

■改正民法2019|遺言書の法務局保管、PC作成。

■遺言書の法務局保管開始、検認不要で費用激安。

■遺言書の財産目録はパソコンOK、それでも書けない被相続人。

◆ 自筆証書遺言の弱点が法務局保管のネックに。

自筆証書遺言は、誰にも見せずにこっそりと気軽に作れます。金庫やタンスの奥、仏壇の底などに保管しておけば秘密にできます。隠しすぎると永遠に発見されないようなことになりますから、旅立つ前には遺言書のありかを信頼できる誰かに伝える必要があります。誰も信頼できないなら貸金庫に預けておくか自筆証書遺言はやめて費用はかかりますが公正証書遺言にすることです。

自筆証書遺言の気軽さがそのまま弱点になり、法務局保管のネックになってしまいます。「遺言書」は「遺書」と違い法律文書ですのでガチガチのルールや形式要件があります。別に難しい決まりではなく、自署、捺印、正しい日付、誤字脱字はご法度などという文書としては当り前のことですが、慣れていない素人には見落としが出ます。もう一つの弱点は、遺言者本人がご自分の意志で書いたかどうかを証明できないという点です。遺言者本人が、免許証などを提示して法務局に遺言を預けるという点では遺言書の真正性は担保されますが、認知症などにより遺言書を書く意志能力が欠如していたかどうかは、確認されないのです。

■遺言書様式の注意事項(法務省)

■遺言書の様式例(法務省)

■自筆証書遺言書の様式(法務省)

■遺言書の様式等についての注意事項(法務省)

法務局は遺言書を保管する上での形式要件は確認しますが、中身には関与しません。「遺言書保管所においては,遺言の内容についての質問・相談には応じることができません。」とつれなく一言、目立つように赤字で書いてあります。

◆ 法務局保管制度は遺言の法的効力を担保しない理由。

法務局では遺言者が、認知症ではなく遺言能力があるかどうかは、関知しません。本人確認と形式要件は判断してくれますが、相談に応じることはないですし、遺言の内容には踏み込みません。遺言書で物件が特定できていなくても、文字が間違っていて無効の場合でもちゃんと保管してくれます。言ってみれば法務局の遺言書保管制度はお知らせ機能付きの貸金庫だと考えてください。

正しい形式の自筆証書遺言を作成する責任は遺言者にあるというスタンスですから、ご自分で書いた内容に自信がない場合は、やはり安全を期して専門家に相談されるのがよろしいかと思います。事務仕事がお得意な方はネットで検索して財産目録の書き方や自筆証書遺言の形式要件や物件の特定の仕方を勉強されれば、決して自分で書けないことはないと思います。

法務局の自筆証書遺言保管制度は、遺言者の意思能力をめぐって争いになるようなときには、遺言の法的効力を担保しないというデメリットが出てきますが、そうでない場合は、本当に便利でお得な仕組みです。

ただ、現在のところどこの法務局でも対応できるわけではなく、法務局の出張所では対応できないところがありますので、お出かけ前に法務局のサイトで対応可能かどうか確認して予約をされるとよろしいかと思います。

◆ 遺言書を法務局に保管すると・・、まとめ。

遺言書を法務局に預けると失敗する理由と見栄を切っていますが、法務局保管制度の利用に反対しているわけではありません。むしろこの制度により自筆証書遺言の手軽さと有効性が発揮できるなら誠に結構なことだと言えると思います。

自筆証書遺言の弱点が法務局保管制度によりすべて補強されるわけではないということを申し上げたかったわけです。公正証書遺言は秘密主義の資産家には向きません。結局、ご自分で相続財産の目録を整理するという点では変わらないばかりか、証人が必要であり手間と資産額に応じてそれなりに金がかかります。内容を更新するにしても書き直せばよいというものではありません。

それゆえ公正証書遺言は庶民にはハードルが高いのですが、自筆証書遺言であれば、少しの知識と専門家のアドバイスがあれば有効な遺言書を残すことが可能です。何度でも書き直すこともできます。法務局保管制度にかかる費用はあっと驚く3,900円です。

法務局保管制度の弱点は遺言書の法的拘束力を担保しないことを押さえておけば、問題はありません。法務局では遺言書の存在と真正性は担保してくれますが、遺言者の意思能力は確認しませんから、認知症が疑われる前にご自分の意志で自筆証書遺言を書き、専門家に見てもらって、ご自身で身分証明をもって法務局に出かけて手続きをして下さい。

そこまで申し上げても、遺言書の作成に手が付けられない資産家がいます。自分のエンディングを確定させるような気がして、その気になれないそうですが、ご当人にすればそういうものなのでしょうね。よく考えてみれば、遺言者にとればご自分が書いた遺言書が、相続発生後どうなったかをしるすべはありませんから、もはやどうでもよいことかもしれませんが。

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