足場節税が封じられた理由、税制改正での締め付けはやりすぎ。

足場節税が封じられた理由、税制改正での締め付けはやりすぎ。

中小企業の節税とは、決算ギリギリにならないといくら損金で落とせばよいか見えてこないということが多いので、節税対策を選定する時間が限られます。

法人保険では、大きな節税はできなくなりました。かといってオペレーティングリースは金額が稼げますが、投資リスクが心配ということがあります。以前はタイミングをうまく組み合わせて、課税の繰り延べができるものと言えば、足場レンタルがありました。

足場節税が封じられた経緯を中心に、税制改正大綱での節税封じの流れをまとめました。中小企業にとっては、節税策の外堀が埋まってしまった感じです。これで政権が変わり、法人税の増税ということになれば、まったく踏んだり蹴ったりとさんざんな事態です。

■中小企業の経営課題はその日暮らし、体験を側近が語ると泥縄経営。

◆ 副業目的の足場節税は、即時償却の対象外。

足場節税は、本業で得た利益を足場レンタル事業に投資するわけです。いわば本業以外の副業です。税制改正では、副業目的で取得した減価償却資産は、たとえ一個が10万円未満でも即時償却を認めませんということです。

資産計上して法定耐用年数で減価償却するくらいなら、利益の繰り延べになりませんから、誰も足場レンタルに投資する気になりません。今回の規制は節税目的の副業に対してであり、本業で足場レンタルしている場合は対象外です。

自民党「令和4年度税制改正大綱」でさらりと一言「取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付けの用に供したものを除外する。」ときました。

足場節税は自分で足場を使うために投資するのではなく、貸付けるための投資です。少額の減価償却資産とは足場に限らず、ドローンやLED、エアコンなどでも一個ずつが10万円以下であれば同様に貸付けの用に供するわけですから、今回の改正により損金処理ができず節税策は封じられることになります。損金とは費用のことですね。

◆ 足場節税の仕組みとリスク。

足場節税は、足場レンタルに投資することでその費用が企業の利益から引かれて税金を減らすことができます。

投資ですから足場を足場レンタル会社にリースすれば、賃料が得られますし、リース期間終了後には足場の売却益が得られます。利益の繰り延べになりますから、将来の減益や投資に利益を回すことができます。

法人保険と同じで、出口対策ができていないと節税にはなりませんが、リスクに備えて簿外に貯金ができていることになります。足場に投資することは、コロナ禍で吹けば飛ぶような中小企業にとって価値がある投資と言えると思います。

ただ、そもそも10万円未満の少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度ですから、やり過ぎると目を付けられるリスクもあります。

また法人保険のように安全性が高いわけでもないですし、金額的にはしょぼい節税策になるところです。その足場レンタルによる節税策すらも封じられたというわけです。

■M&A税制による節税効果と事業規模拡大。

◆ 足場レンタルのメリット・デメリット。

足場レンタルへの投資の一番のメリットは、比較的少額から可能ですから手軽な感じがあります。決算での利益の出具合によって、利益の調整弁として利用することができます。

またメリットかどうかわかりませんが、法人で契約する保険のように毎年費用が発生することはなく、1回限り節税投資になります。

足場節税では翌年から賃料が利益として出てきます。保険のように解約時期を選んで出口対策を行うというような調整はできません。利益の繰り延べができるのは出資した期だけとなります。言わば利益の繰り延べ分散というスキームです。

一番気を付けなくてはいけないのは、足場レンタル会社の破綻です。そうなると投資したお金はほとんど戻ってこないと考えるべきです。かといってそのために保険に入るのもいかがなものかと思ってしまいます。本業でやるには、それなりのリスクもあります。

■経営力向上計画の即時償却と節税保険の出口対策を組合せ大胆節税。

◆ 税制改正の内容をかみ砕くと。

令和4年度税制改正大綱では下記の3項目が同時に改正されています。中小企業に認められている10万円未満の少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度のほかに一括償却資産の損金算入制度では20万円未満でも損金化できなくなりました。

活用範囲の広い中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例でも、期間は延長になりましたが30万円未満でも即自償却できなくなります。

いずれの場合も「対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する。」とあります。節税目的で投資しても本業以外の場合はダメですよ、という縛りです。

【斜体部分は引用です。】自民党「令和2年度税制改正大綱」

(4)少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する。

▲10万円未満でも全額損金できません。

(5)一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する。

▲20万円未満でも一括償却できません。

(8)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外した上、その適用期限を2年延長する。

▲30万円未満でも即時償却できません。

◆ 足場節税が封じられた影響とまとめ。

足場レンタル会社の足場置き場はときおり見かけます。大量の足場が河川敷のような利用価値の低いところに野積みされています。

需要期のピークに備えて、実際の貸出量の何倍もの足場があるようで葛がまとわりついて冬場に枯れているのは、まるでモノトーン写真の世界です。

よほどうまく管理できていないと建築には波がありますから、利益を出すのは難しいのではないかと思えます。

・法人の節税手段は風前の灯火か。

一方、法人の節税手段として残されているものにオペレーティングリースがあります。足場節税のスキームとよく似ていますが、登場企業のケタが違うのと巨額な節税が見込めるという点に特色があります。突発的な利益が出た時には有効な節税手段だと思いますが、コロナ禍での投資対象には不安が残ります。

またオペレーティングリースの弱点は、節税商品が欲しいときに適切な商品が出てこないということがあります。足場節税と同じく投資先企業の破綻というリスクも考えておかなくてなりません。

今どき節税を考えなくてはならないということは、企業としての業績が伸びているわけで、運が良いと考えるべきです。しかし税金という見返りのないコストを抑制する工夫は必要です。

税金は適切な額に抑えて貯金するということが、企業の将来的なリスクを軽減することになります。節税保険だけでなく、足場節税が封じられた今、できることは限られています。納税して済ませるか、長期の計画的な設備投資による減価償却ということになりそうです。

中小企業の経営課題はその日暮らし、体験を側近が語ると泥縄経営。

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