読めない漢字を使うんじゃねぇ!2年宥恕措置、改正電帳法。

読めない漢字を使うんじゃねぇ!2年宥恕措置、改正電帳法。

改正電帳法(電子帳簿保存法改正)が迷走しています。2022年度の税制改正大綱では、宥恕措置が2年間設けられました。

何とか期限までに間に合わせられるように、税務署と相談しながら対応を進めてきた中小企業では腰砕けになったところもあるのではないかと思います。

そもそも宥恕措置とは何ぞやです。読み方すらわからない熟語が使われています。学校でも日常でも使わない意味不明の宥恕措置です。普通の人が普通に読めない漢字を組み合わせて賢ばっている理由がわかりません。

電子帳簿保存法の狙い、恐怖の質問検査権。

◆ そもそも何を寛大な心で許すのか。

広辞苑によると宥恕とは「寛大な心で許す」ことだそうです。納税者からすれば単に猶予と言えばわかりやすいところを、ことさらに日常的でない難解な漢字をあてて勿体付けるのはいかがなものかと思います。ただですら複雑になって難儀している帳簿保存ルールの電子化なのに、まったく読めない漢字を使うんじゃねぇ!という感じの気分です。

平たく言えば、電子帳簿保存法改正の最初は、デジタル化に舵を切るために強気一点張りで電子データでなければダメ、認めませんよ!と言ったものの対応できない中小企業がかなり多く、反発が強かったため、これまで通り紙で保存してもいいよ?! 但し2年後には電子データにしてね!! ということです。

電子帳簿保存法の改正とは、国税関係帳簿書類を電子データで保存することを義務付ける法律です。そのために2022年の改正で導入・運用の要件が大幅に緩和され使いやすくなりました。中小企業では到底できもしないがんじがらめの仕組みを緩めて、導入しやすくした分、対応しなければペナルティを課すという法律です。

・これまでのように税務署の事前承認はいらなくなりました。
・適正事務処理要件という縛りが外れましたので無駄な作業がなくなりました。
・タイムスタンプ付与の条件が緩和され、猶予の幅ができました。
・検索要件が年月日・金額・取引先の 3つの条件に削減されました。
・その代わりできなければ青色申告取り消しペナルティの対象にされます。

◆ 国税庁のFAQから見える読み違い。

日本の多くの企業は中小企業であり、全企業の99.7%を占めています。

さらにその中小企業の内、より零細な小規模事業者が約85%と、とにかく細かいのです。

予算も人手も知識もない、労働生産性の向上だとかDXだとか言ってもそもそも無理というレベルが大半を占めています。

ある資料によると中小企業の中央値は従業員数3人、売上は6,790万、経常利益は160万、総資産5,420万、資本金は510万とおどろくほどに日本の中小企業は規模の小さい事業者がほとんどなのです。

大半の中小企業が50人以下、というより50人近くも従業員がいればそこそこの中規模企業というべきです。従業員数が一桁というような零細企業に対して、青色申告のメリットを取り消すぞと脅してもそう簡単に変われるものではないのです。

電子帳簿保存法改正は、実態が把握できていないことによる国税庁の読み違いというより、そもそも勇み足であり無理筋だったというわけです。

国税庁のFAQに追加された解説に以下のようなものがあります。

当面、電子取引の取引情報に係る電子データ保存への対応が間に合いませんが、どのような対応をすればいいでしょうか。

(参考)

この宥恕措置の適用にあたっては、保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません。

文言的には、若干脅されているように感じると思いますが、やむを得ない事情とはなにか?具体的には何も書かれていません。要するに、現在の対応状況と今後の見通しが説明できれば問題ないとい解釈で大丈夫のようです。

◆ 2年の宥恕措置の難解な意味は、まとめ。

宥恕とは法律用語です。直接的な意味では寛大な心で罪を許すことです。別に何の罪も犯したわけではないのに宥恕とは、これ如何に!と言わざる得ません。

実際は、それなりの会計ソフトを導入しクラウドでデータ管理をしていれば、改正電帳法には概ね対応できるはずです。しかしそれにも対応できていない零細企業はたくさんあるということです。

調査によると実際に改正電帳法に対応できている企業はわずかに16.4%に留まっているそうです。税務署ににらまれてもあとあと困りますから、改正電帳法に従った運用の導入を検討している企業も少なからずあったかと思いますが、宥恕措置により一旦熱が冷めて仕切り直しになると思います。

今回の電子帳簿保存法改正について宥恕措置ということは、猶予されたわけですが、期限付きですので延期というのが正しい表現ではないかと思います。それにしても猶予期間は2年とされた訳ですから、第二次宥恕措置でも出ない限り電子保存の義務化は避けて通れないということになります。電子保存というのは、質量がありませんから頼りない感じがするのは年のせいでしょうか。クラウドいと言えども人為的なシステムです。紙で保存している場合の火災による消失リスクはなくなるかもしれませんが、デジタルデータを妄信するのではなく、少なくともバックアップは二重にとっておいたほうが安全です。

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です