改正電帳法の宥恕措置とは?猶予措置との違い、いつまで。

改正電帳法の宥恕措置とは?猶予措置との違い、いつまで。

改正電帳法(電子帳簿保存法改正)は、2022年1月1日に施行されました。 同法では、電子取引のデータ保存を義務化することになっています。しかし、中小企業などでは対応が難しいため、2022年度の税制改正大綱で、電子取引のデータ保存について2年間の宥恕措置(ゆうじょそち)が設けられました。翌年の2024年1月1日から、電子取引のデータ保存は完全義務化となりました。

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◆ 猶予措置による改正電帳法の腰砕け。

何とか期限までに間に合わせられるように、税務署と相談しながら対応を進めてきた中小企業では、腰砕けになったところもあるのではないかと思います。

そもそも宥恕措置とは何ぞやです。読み方すらわからない熟語が使われています。学校でも日常でも使わない意味不明の宥恕措置です。普通の人が普通に読めない漢字を組み合わせて、賢ばっている理由がよくわかりません。

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◆ そもそも宥恕とは、何を寛大な心で許すのか。

広辞苑によると宥恕とは「寛大な心で許す」ことだそうです。納税者からすれば単に猶予と言えばわかりやすいところを、ことさらに日常的でない難解な漢字をあてて、勿体付けるのはいかがなものかと思います。

ただですら複雑になって難儀している帳簿保存ルールの電子化なのに「まったく読めない漢字を使うんじゃねぇ!」という感じの気分です。

平たく言えば、電子帳簿保存法改正の最初は、デジタル化に舵を切るために強気一点張りで電子データでなければダメ、認めませんよ!と言ったものの対応できない中小企業や零細企業がかなり多く、反発が強かったため、これまで通り紙で保存してもいいよ?! 但し2年後には電子データにしてね!! ということです。

電子帳簿保存法の改正とは、もともとは国税関係帳簿書類を電子データで保存することを義務付ける法律です。2022年の改正で導入・運用の要件が大幅に緩和され使いやすくなりました。中小企業では到底できもしないがんじがらめの仕組みを緩めて、導入しやすくした分、対応しなければペナルティを課すという法律です。

わかりやすく緩和された点を箇条書きにすると、

・税務署の事前承認は不要となりました。

・適正事務処理要件という無駄な作業がなくなりました。

・タイムスタンプ付与の条件が緩和され、猶予の幅ができました。

・検索要件が緩和され、年月日・金額・取引先の3条件に削減されました。

・できなければ、青色申告取り消しペナルティの対象になります。

簡単に改正電子帳簿保存法の要点を簡潔にあげておきます。

①電子取引データ保存→2024年1月1日から完全義務化。

②国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存。→任意

③紙ベースの取引データのスキャナ保存。→任意

①の電子取引データとは、メール添付の請求書やWebからダウンロードした領収書など、電子データとして受領した書類はデータとして保存することを意味します。プリントアウトして保存することは認めませんというわけです。

②の国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存は、義務ではなく任意ですが、会計ソフトなどを導入していれば、ほぼ問題なく対応できていると思います。会計ソフトはお金がかかるからエクセルで対応していますと言う場合、細かいルールがありますので、ここでは触れませんが注意が必要です。そもそも会社法では、会計帳簿を適正に保存していないと100万円の過料という罰金が科されます。

③請求書や領収書は紙ベースで受領することもあります。これをスキャナでPDF化して、電子データとして保存しなさいと言うことです。しかしこれも任意となりました。しかし紙ベースで揃えるか、PDFにまとめて検索できるようにしておかないと、管理する方も大変ですね。

◆ 国税庁のFAQから見える読み違い。

日本の多くの企業は中小企業であり、全企業の99.7%を占めています。

さらにその中小企業の内、より零細な小規模事業者が約85%と、とにかく細かいのです。

予算も人手も知識もない、労働生産性の向上だとかDXだとか言ってもそもそも無理というレベルが大半を占めています。

ある資料によると中小企業の中央値は従業員数3人、売上は6,790万、経常利益は160万、総資産5,420万、資本金は510万とおどろくほどに日本の中小企業は規模の小さい事業者がほとんどなのです。

大半の中小企業が50人以下、というより50人近くも従業員がいればそこそこの中規模企業というべきです。従業員数が一桁というような零細企業に対して、青色申告のメリットを取り消すぞと脅してもそう簡単に変われるものではないのです。

電子帳簿保存法改正は、実態が把握できていないことによる国税庁の読み違いというより、そもそも勇み足であり無理筋だったと言えなくもありません。

国税庁のFAQに追加された解説に以下のようなものがあります。

Q:当面、電子取引の取引情報に係る電子データ保存への対応が間に合いませんが、どのような対応をすればいいでしょうか。

(参考)
A:この宥恕措置の適用にあたっては、保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません。

文言的には、若干脅されているように感じると思いますが、やむを得ない事情とはなにか?具体的には何も書かれていません。要するに、現在の対応状況と今後の見通しが説明できれば、問題ないとい解釈で大丈夫のようです。

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◆ 2年の宥恕措置の難解な意味は、まとめ。

そもそも、宥恕とは法律用語です。直接的な意味では寛大な心で罪を許すことです。別に何の罪も犯したわけではないのに宥恕とは、これ如何に!と言わざるを得ません。

実際は、それなりの会計ソフトを導入しクラウドでデータ管理をしていれば、改正電帳法には概ね対応できるはずです。しかしそれにも対応できていない零細企業はたくさんあるということです。

調査によると実際に改正電帳法に対応できている企業は、最初の頃わずかに16.4%に留まっていたようです。しかし宥恕措置の効果かどうかわかりませんが、今では電帳法改正で義務化された電子取引の電子保存へ対応している企業は8割強に上ったようです。さらに6割近くの企業では、スキャナ保存まで対応済みであるそうです。

税務署ににらまれてもあとあと困りますから、改正電帳法に従った運用の導入を検討している企業も少なからずあったかと思いますが、宥恕措置により一旦熱が冷めて仕切り直しになった感は否めません。

宥恕措置の期間が経過後も、電子データの保存義務化に対して、対応できない企業に、さらなる猶予措置が認められることになりました。この猶予措置には相当の理由と、税務署長の承認が必要です。

・宥恕措置のあとに猶予措置を予定?

猶予措置の期限は未定ですので、完全義務化を謳ったものの、実情はそれほど単純ではなかったと言うことかと思います。最初から、宥恕措置のあとさらに猶予措置の予定があったのかもしれないと勘繰りたくなるところです。

電子取引データ保存というのは、質量がありませんから頼りない感じがするのは年のせいでしょうか。クラウドと言えども人為的なシステムです。紙で保存している場合の火災による消失リスクはなくなるかもしれませんが、デジタルデータを妄信するのではなく、少なくともバックアップは二重にとっておいたほうが安全です。

経営者は自分のリスクが理解できない本当の理由がアブナイ。

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