節税保険の出口対策が簡単にできない理由。

節税保険の出口対策が簡単にできない理由。

2019年のバレンタインショックによって、節税を目的とする法人契約の保険はほぼ封じられました。しかし国税庁の規制が入る直前に大量の駆け込み契約がありました。駆け込み以前も含めて節税目的の法人保険の多くは有効継続中であり、解約返戻率のピークを待っています。

節税保険は保険料を費用で落としていますから、解約すれば多額の雑収入が発生します。

何も対策を行わないとせっかく繰り延べた利益が課税対象となってしまいます。雑収入が発生した年度において、解約返戻金をうまく費用にあてることができれば節税になります。

節税保険を解約したときの雑収入を、設備投資などに当て込み相殺する戦略を出口対策と言います。ところがこの出口対策が、経営の現場では思うように簡単には設計できないという問題があります。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

◆ 節税保険は釣り合う出口対策が必要。

法人で契約する保険では、支払った保険料を保険積立金とするか、損金とするか保険の種類によって適法に経理処理をしなければなりません。世間で節税保険とか損金保険と呼ばれている保険には、保険料の全額を損金(費用)化できるものや半損と呼ばれる1/2損金の商品があります。

保険積立金とすれば税金を払った後の利益から積み立てることになりますから、有税で処理することになります。損金となれば保険料は、期間の費用となり損金処理され、利益が減り税金もその分減ります。

そうして数年保険料を支払っていくと節税保険の場合、解約返戻率のピークがやってきます。解約返戻金を受け取る目的であれば、そもそも保障としてのウエイトは低いので、このピーク時期を外す手はありません。解約返戻率とはそれまでに支払った保険料累計金額に対する返戻率ですから、ピークを外すと大きな損失になる場合があります。

解約のピークを迎えた保険を解約すると解約返戻金が支払われます。他の投資とは異なり保険の場合は契約時点で解約返戻金が決まっていますから、安全確実な投資と言えると思います。しかも損金で落としていますからB/S(貸借対照表)にのらない簿外の資金です。

簿外の資金が解約によって現金化され雑収入となりますが、何もしなければこれは営業外の利益として課税対象になります。この雑収入を予定の設備投資などに充てることで、資金確保と同時に課税が回避され出口対策となるわけです。

このように節税保険は、解約のピーク時に見合う出口対策を早めから予定しおくことが有効な節税手段になります。節税保険の解約返戻金とピッタリ釣り合う出口対策はそれほど簡単ではありませんが、出口対策をいろいろ組み合わせたり、保険の管理テクニックを駆使したりしてタイミングを合わせることで、予定以上の多額の納税を抑制することができます。

◆ 大量の簿外資金と雑収入の行方。

以下の記事に詳細は書きましたが、バレンタインショックの駆け込み契約の保険料支払いが4回目を終えたところかと思います。最後の全額損金可能な保険でしたから大量の利益が保険会社に流れたことになります。

■節税保険、バレンタインショックの行く末!?

その節税保険の解約返戻率のピーク時期が数年後に迫ってきています。一気に解約が集中することになりますから、保険会社は解約返戻金を支払うための原資を用意しなくてはならなくなります。

また契約している企業では解約を忘れていない限り、巨額な雑収入の受け皿として出口対策を考えておかなくてはなりません。それが間に合わなければ、税務署がほくそ笑むことになります。今後巨額になるであろう雑収入の行方が注目されるところです。もちろんコロナ不況で財務事情が悪化していれば、計画的かどうかは別にして見事な出口対策ができていることになります。

◆ 経営は先が見えない泥縄、出口対策が逃げていく。

中小企業にかかわらず、経営は泥縄であるというのがhokefpの主張のひとつでもあります。経営とは環境適応業であるという見解がありますが、それはコロナ禍やウクライナ戦争による環境変化を見るまでもなく、経営が事業計画通りに順調に進むことがまれです。外から見ているほど安穏とはしておらず、実際の現場では山あり谷ありドツボありが経営だということです。それだけに中小企業にとって保険は重要な役割を果たしてきました。とくに節税保険は、経営の動脈であるキャッシュをうまく回すためにはとても有効な手段でした。

ただ実際の事例を見ていると、多くのケースで出口対策が機能しない事態や出口対策そのものを有効に設計できていないケースがなんと多いことか。例えば、現実的には、生命保険の解約返戻率ピークに合わせて設計通り退職する社長はほとんどいません。みなし退職で役員退職慰労金を支給しても実質的な引退ができず、退職金を否認されるリスクが高まることもあります。設備投資は計画通りに進まず、償却できる金額が少なくなったり、あてにしていた節税保険が使えなくなったりします。

出口対策のために投資したり引退したりするというのはやはり本末転倒になってしまうようです。経営をしているとどこかでかならず不測の事態が発生します。それをどうにかしのぐことができてもまた次の問題が生起します。絵に描いたように事業計画が進むことはほぼないので、出口対策が必要なことは理解していても逃げ水のように出口対策が逃げていくということが、経営は泥縄という所以(ゆえん)です。

◆ 中小企業にとって課税の繰り延べこそ価値。

ここは下記の記事をご参考にしていただきたいのですが、節税保険は課税の繰り延べに過ぎないという意見に対する反論です。

出口対策がはまればよいのですが、それほど簡単でないことは申しあげました。

では出口対策ができなければ課税の繰り延べは無駄だと言えるのでしょうか。

言いたいことはここからなのですが、中小企業にとって決して無駄ではない、むしろ万が一のキャッシュ保険というべき仕組みなのです。保険は本来一定期間の保障を買うものです。その間に保険事故がなければ、保険料は無駄だったということにはなりません。仮に保険事故が発生して保険金を受取ったら儲けたと考えられるでしょうか。いえいえそんなことはありません。

無駄なように思える保険料が経営のリスクを支えているのです。課税の繰り延べで将来の利益減や万が一の事態に、簿外のキャッシュで備えているというのが、節税保険なのです。キャッシュこそ企業の動脈、生命線ですから課税の繰り延べこそ価値があるということをご理解いただけるのではないかと思います。

■法人保険の解約返戻金を整理してキャッシュフローを把握せよ。

◆ 出口対策の類型は経営戦略に直結する。

出口対策は簡単にできないと申し上げましたが、できることなら知恵を出し手法を組み合わせて、せっかく汗水たらして稼いだ利益を少しでも多く残すように対策を組み合わせてください。詳細は他のサイトで検索いただければよいかと思いますが、考えられる出口対策を使い勝手の良い順位並べました。参考になさってください。

・役員退職金の支給(予定利率が良い契約は保険現物支給)

・経営力向上計画の一括償却活用

■経営力向上計画と法人保険の出口対策。

・計画的な設備投資(大規模修繕・LEDなどの一括償却)

・オペレーティングリースに投資(資金凍結に注意)

■節税できない法人保険、当期利益の落とし方。

・決算賞与支給、海外社員旅行

・4割損金の法人保険契約

・法人保険の減額(一部解約)・失効による解約の繰り延べ

■法人保険の失効と自動振替貸付にまつわる恐い落とし穴。

・出口に年金支払い特約付加(保険商品、会社によって異なります。)

・貸倒損失や固定資産の除却損、棚卸資産の評価損

・法人所有不動産や株式の売却による評価損

・法人保険の名義変更による評価損

各項目に関しては詳しくは書いていませんので、検索されるか、それでも不明点があれば、わかる範囲で回答させていただきますのでお問い合わせください。

法人保険の出口対策プランは事業の中長期戦略である。

◆ 節税保険の出口対策が簡単でない、まとめ。

バレンタインショックの駆け込み契約で契約した大量の節税保険の解約時期が近づいています。

しかしそのときに発生する雑収入に合わせた出口対策は、それほど簡単ではないことを申し上げました。

たとえ出口対策がうまく設計できなくても泥縄経営の中小企業には利益の繰り延べは十分価値があるとも書きました。

出口対策がすれ込んだとしても、各企業の実情にあわせてできることはあるはずです。本記事をご参考にしていただきできることを今から対策すれば間に合います。税金を払うなと申し上げているわけでは決してありませんが、必要以上の納税をしても何の見返りがあるわけではありません。それこそ世の中乱高下していますから、毎年同じように利益がでるとも限りません。中小企業がこの荒波の中で雇用を守りつつ生き延びるためには、工夫も知恵もそして節税も必要です。

節税保険、簿外資金の使い道。

法人保険、節税対策の行き詰りにウルトラC。

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