改正民法2019|相続人以外の特別寄与料の請求権。

改正民法2019|相続人以外の特別寄与料の請求権ができました。

DSCF1768相続では特別寄与とか特別受益とか耳慣れない言葉を使います。こういう話が相続で出てくると遺産分割協議が紛糾することが多いようです。

はっきり言って内輪もめや財産の奪い合いを小難しく言うと特別寄与とか特別受益になります。今回の民法改正では特別寄与の部分が相続人以外の親族に拡大され、要件も緩和されました。

特別寄与とは、相続人のうち誰かが特別に親の面倒をみたり会社を手伝ったりしたことで資産の増加に貢献したとき、その分お金を請求する法的な権利です。あまりにもハードルが高かったので要件を緩和し請求できる親族の範囲を拡大し「特別寄与料」と呼ぶようになりました。生命保険の受取人は姻族に拡大するとモラルリスクがありますが、特別寄与料の請求権の範囲を拡大することで争族の範囲も拡大したというわけです。

民法改正の主な項目をあげました。今回は「6)相続人以外の特別寄与分の請求。」についてです。

1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。
2)預貯金の仮払い制度の創設。
3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。
4)遺留分制度の見直し、金銭請求。
5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。
6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

従来からの特別寄与あるいは寄与分と言われているものは相続人に認められた権利ですが、今回新たに創設された特別寄与料とは相続人以外の親族が相続人に請求します。遺産分割協議で話がまとまればよいのですが、そうでない場合は家庭裁判所に調停をお願いすることになります。

それでも納得できない場合は裁判で白黒つけることになりますが、こうなればもう完全に争族突入です。今回の民法改正は本来ならおさまっていた相続がいきおい争族化する可能性をはらんでいると言えそうです。

◆ 特別寄与分と特別寄与料。

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特別寄与分と特別寄与料とは相続以外では使わないので聞きなれない言葉です。

そもそも被相続人にそれほど貢献していれば、被相続人(亡くなった人)は、その特別寄与者に遺言書で遺贈の指示をすればそれでよいのですが、何かの事情で遺言書が書けなかったか、あるいは被相続人はそれほど自称特別寄与者が貢献したとは考えていなかったかのどちらかです。

とは言え、特別寄与者にすれば被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたという自負がありますから、遺産を多めにもらう権利を主張する気持ちもわかります。自分の生活を犠牲にして尽くさないと介護などできるものではないからです。

費用も時間も体力もかかりますが、なにより先の見えない介護は精神的にも追い詰められますし、苦しい日々が続きます。介護はそれをする人にしか苦労を理解することはできません。特別寄与は介護だけではありませんが、多くのもめるケースは介護なのではないかと思います。

ただ、これまでは相続人が人生を犠牲にして必死の介護をしてもほとんどのケースで特別寄与とはみなされませんでした。いくら介護を一所懸命しても被相続人の財産の増加に特別の寄与をしたとはならないからなのです。相続人は立場上特別の寄与をしても報われないのですが、今回の改正では相続人でない親族に有利な改正になっています。

改正の要点は、相続人でない親族(息子の嫁など)が親の介護をした場合、特別寄与料が請求できるようになったということです。

特別寄与の条件:相続人

被相続人の事業に関する労務の提供又は「財産上の給付」、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をすること。

特別寄与料の条件:相続人以外の親族

被相続人の事業に関する労務の提供、被相続人に対する無償の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をすること。

特別寄与料の条件では「財産上の給付」は要件とされていません。特別寄与料の条件は、貢献の程度が一定程度を越えることでよしとされました。一定程度とはかなり線引きが難しいと思いますが、特別寄与料での持ち出しは要件ではなくなったのです。

特別寄与料の特別寄与者となり得る親族は、相続人を除く6親等内の血族と3親等内の姻族でとなります。子の配偶者はこの中に含まれることになります。

6親等内の血族と言えば、たとえばいとこの孫まで、3親等以内の姻族と言えばひ孫の配偶者、甥姪の配偶者あたりまで広がります。親族と言えどもそこまで縁が離れた人が、療養看護してくれるとは思いませんが遺産分割協議では特別寄与料のおかげで争族の範囲も広範囲になりました。しかしここでも民法では内縁の妻や愛人は除外されています。法的に血縁がない内縁の妻などに財産を残すにはやはり遺言書が必要だということになります。

遺産分割協議がまとまらないときは、被相続人が亡くなったこととその相続人のことを知ってから6ヶ月以内又は被相続人が亡くなってから1年以内のいずれか早い日までに、家庭裁判所に審判の申し立てを行うことができます。 内輪で話し合いがまとまるなら期限はありません。

忘れてはならないのは特別寄与料にも相続税がかかるということです。相続税がかからないレベルの相続なら何もしなくてよいのですが、そうでない場合は相続税の申告が必要になります。

◆ 相続に口出しできない親族の胸の内。

今回の改正では、相続人以外の親族を交えて遺産分割協議をすることも起こり得ます。相続人でない息子の嫁が口出す相続という場面はできれば避けたいところですが、たまりにたまった胸の内もあるでしょう。相続での遺産分割協議では理性がおいてきぼりになることも少なくありません。

話が決裂すれば調停か裁判しかないわけですが、世間の常識と家庭裁判所の常識が、一番食い違うものの一つが、この特別寄与と言われています。 相続人や特別寄与料を請求しようとする特別寄与者に対して裁判所は、特別寄与は「財産形成の対価」に過ぎないととらえるのですが、普通の感覚では特別寄与は「被相続人への貢献に対する恩賞」と考えるのが自然な感覚です。家庭裁判所や調停委員会は理詰めですから、人の気持ちはわかりません。この食い違いは今回の改正によりわずかながらも人間的な判断が下る可能性はあります。

世の中はなんでもそうですが、言いたいことを言ってしまってはまとまる話もまとまりません。相続に口出しできない親族の胸の内は察するに余りありますが、できる限りの辛抱も大事ではないかと思います。

◆ 特別寄与料のまとめ。

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裁判所は特別寄与にすこぶる厳しい立場です。息子の嫁が義父や義母を懸命に介護したとしても特別寄与とはなりません。昔から家の嫁という立場は相続人から相手にされない悲しさです。

自分の親なのに何の世話もせずほったらかしでも、相続人という立場があれば遺産相続の権利があります。親の世話をしない相続人を責める気もありませんし、そんな時代でもないのでしょうが、それでも誰かが老親の世話をし、最後は介護に身を尽くし看取らなければなりません。

相続とはわかりやすく言えば元家族の財産争奪戦なのです。それが家族から親族まで拡大されたのが今回の特別寄与料の請求権と言えると思います。特別寄与料の請求権がある親族の範囲は広いですが、通常は親と同居している場合の嫁になると思います。まれには兄弟や甥や姪の世話になる方もいらっしゃいますが、まずは親族と言ってもこの辺までのことかと思います。

これまでは如何に介護や看病で貢献しようが相続人でなければ遺産分割協議で物言うことはできませんでしたが、公式に特別寄与料に関する発言権が嫁に認められたようなことでしょうか。裏で糸を引いていた相続人の配偶者にも権利が与えられたわけです。

遺言書があれば、世話になった相続権のない嫁や親族に財産を遺贈しても問題は発生しにくいと思いますが、遺言書がなければ泥沼争族の範囲が広がっただけということになりはしまいかと危惧するところです。

くどいようですが、相続はむき出しの本音で自己主張をするところです。日頃の建て前が剥がれ落ち人間の本性が出てくる場です。仲の良かった兄弟が相続を境に法事にも呼ばないような争いになる事例も見ています。自分だけは大丈夫などと思わないことです。うちの家族に関しては心配ないなどと思わないことです。

大人げないことですが、それが人間の本質ではないでしょうか。どうも相続となると悲観的性悪説に傾倒するのはhokenfpのこだわりのような気がします。それゆえかどうかわかりませんが、感情論が入る余地のない、権利関係が徹底して明快な生命保険に傾倒するのかもしれません。

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