節税保険の実質返戻率から見える保険業界の末路。

節税保険の実質返戻率から見える保険業界の末路。

CIMG3652保険業界の末路などと怪しい表現を使いましたが、今回の国税庁のパブリックコメン
トに示された制約条件を実際の返戻率にあてはめて実質返戻率を計算すると100%を
こえるためには単純返戻率が95%を越えないと難しいようです。

全額損金も半損も認
められないということになると利益の繰り延べによる節税効果はほとんど期待できな
くなったということになります。

◆ 節税保険に対する国税庁の一網打尽策。

今回、国税庁が提示した仕組みは最高解約返戻率という新しい判断基準を持ち出し、
保険種類に関わらず抜け道なし、節税目的の損金封じとなっています。まさに節税保
険に対する国税庁の一網打尽策といえるのではないかと思います。国税庁の言を借り
ると、「業界とのいたちごっこを解消する。」という覚悟が感じられます。

◆ 国税庁のパブコメが狙ったもの。

消費増税を前にして、租税負担の公平性を欠く節税商品の乱売合戦に終止符を打つことが最大の狙いであったように思います。

ただ国税の大物OB税理士によれば、既契約に遡及することは社会的混乱だけでなく、納税者に不利益な通達変更となるので、通常遡り適用になることはないそうです。しかし実態はそれだけではないそうです。

通達内容がもし遡及となり、既契約にさかのぼって損金算入の取扱いが変われば、節税目的が果たせなくなるので多くの契約が早期での解約に追い込まれる可能性があります。

そのようなことになると、節税保険を扱った代理店や税理士(OBを含む)は手数料の返済を求められることになります。いわゆる解約控除といわれる仕組みですが、これは存続にかかわる厳しいことになります。

税務署も国税庁もOBのネットワークは強力です。なぜなら国税庁の職員でもいずれはOB税理士として糊口をしのぐことになるのですから、落としどころを忖度するのはやむを得ないかもしれません。

◆ 節税効果がほとんどない法人保険。

国税庁の改正案によると単純返戻率が高い保険商品(最高解約返戻率85%超)は、最初の10年間においてはなんと9割もの資産計上になります。

その間、前半の資産計上期間で解約した場合、解約返戻金は保険積立金を下回ることになります。これは法人税の先取りになっています。そう考えると、保険の金融商品としての価値は、節税効果という商品力だけで売れたものが、保険を契約する目的が変わり、そうは簡単に売れなくなります。

利益が出たとき保険に加入せず、法人税を払って税引き後の利益として残すか、保険に加入して保険積立金として残すかの選択肢になり、オーナー経営者の好む簿外資金はほとんど形成されないことになります。

事業保障をすでに確保している企業にとれば、もはや節税効果のない法人保険にメリットを見いだすことは難しいと言えるのではないでしょうか。結局、税金という見返りのないコストを削減する第三の道として保険以外の損金商品や経営力向上計画のような設備投資による税制優遇を模索することになりそうです。

◆ 損金算入新ルールは保険営業に甘くない。

今回のパブリックコメントで示された改正ルールは企業の決算ごとに保険契約で莫大な収益を上げていた保険代理店には痛手を通り越して経営上の大ピンチではないかと思います。事業保障を目的とした保険を毎期追加で入ることはありません。企業の成長の節目節目で保障額を見直す程度のものです。それゆえ保険代理店にとれば売るべき主力商品を封じられたことになります。

その上今回の新ルールはこれから開発される保険商品にもあまねく適用されるわけですから抜け道が見えてきません。国税庁のパブリックコメントが腰砕けという論評も見かけますが、それは法人保険販売の実態が見えていません。何の何の、今度ばかりは酷税庁です。

経営者が法人で生命保険を契約する動機は、契約の目的に加えてGMP(義理・人情・プレゼント)と言えると思います。法人保険を契約する目的とは事業保障とか節税、あるいは退職金準備等です。しかし時として契約の目的が後付けになりGNPが優先される場合すらあります。これは売る側の立場も買う側の事情も手に取るようにわかるhokenfpとして筋金入りの保険営業論です。そういう立場から申し上げられることは、切り口を変えた保険(医療保険、介護保険、養老保険、外貨建て保険)にGMPをからめて売り込むぐらいしかなさそうです。

国税庁から示された損金算入新ルールは決して保険営業に甘くないといえると思います。もう保険代理店で一括千金の夢は潰(つい)えたのでしょうか。

◆ それなら短期定期保険は選択肢。

CIMG3653法人保険を買う側の感覚からすると短期の定期保険も選択肢ではないかと考えていま

す。もちろん短期の定期であるからには完全に保障目的の保険契約になります。
オーナー経営者にとれば簿外に積み立てられるなら心が動きますが、保険積立金とし
て税金を払いながらキャッシュを動きのとれない形で積み上げていくのは気乗りしな
いのです。これまでは法人税を先送りしながら簿外に緊急予備資金を積み立てられた
わけですからこの結果は大違いです。

たとえばこれまででしたら20年定期保険であれば全額損金が可能でした。新ルール
によれば、定期保険として50%以下の返戻率であれば全額を損金にすることが可能と
なります。それなら割り切って高い保険料で保険積立てをするより保障を買うと割り
切って、解約返戻率は低くても全額損金になる定期保険を選択することも有力になる
と思います。保障部分の保険料をきちんと費用で処理できるわけですから、よく考え
れば意味があるのではないかと思います。

◆ まとめ

国税庁のパブリックコメントに示された改正案は税を徴収する側からみればとても優
れた仕組みです。法人契約する保険の種類ではなく問題となる最高解約返戻金に着目
して将来に渡り同様の問題が再来しないようバッサリと網をかけました。おかげで、
売る側の保険会社や保険代理店だけでなく、買う側の中小企業も財務的な選択肢が大幅に
狭くなりました。損金商品のイタチゴッコはなくなるかもしれませんが、知恵比べは
今後も続いていくものと思います。

法人契約のがん保険は保険金請求が難しい。

法人契約のがん保険は保険金請求が難しい人間模様。

CIMG3650 この手の情報は検索にあまりかかりません。どこにでもありそうな問題ですが、表面化しにくいのではないかと思います。

国税庁のパブリックコメントが公示され保険業界は新たな道を模索せざるを得ない状況となりましたが、これまでの既契約は既得権として維持されることも示されました。

以前にも同様のケースが何回かあり同じように既契約には遡及しないこととなり、残存する既契約として法人契約のがん保険があります。これも全額損金でおいしい既得権ですが、長期にわたると被保険者も高齢化したり病気になったり退社したりします。

もっともやっかいなケースは被保険者ががんに罹患することです。なぜやっかいなのか、どうすれば良いのか、悩みどころと落としどころを探ってみました。

◆ 法人契約のがん保険とは。

会社が契約者となり、従業員を被保険者としてがん保険を契約すると平成24年4月以前は全額損金で処理することができました。その後国税庁の通達により保険料の半分を資産計上にすることが示されました。

このため福利厚生は名目だけで節税のため利益の繰り延べが目的のですから、今更二分の一損金ではがん保険に追加加入する気がおきません。それまでの契約は既得権として有効継続して損金算入効果を享受しながらメンテナンスを続けることになります。会社として役員退職金や設備投資の資金需要があるときに解約して解約返戻金を雑収入で受けることになります。

ところが、

節税保険としてのがん保険ですが被保険者ががんに罹患しても契約通り保険金が支払われます。がんで死亡するような場合巨額の保険金が支払われます。

誤解のないように補足しておきますが、一時期流行した法人契約の節税目的のがん保険は個人で契約するような医療保険としてのがん保険とは異なります。仕組みとしては同じですが、保険料ができるだけ多額になることで解約返戻金も多額になるよう設計されています。個人で加入するようながん保険ではないのです。

◆ 社員ががんに罹患すると会社が困るわけ。

CIMG3651 法人契約のがん保険は契約者が会社、体を提供する被保険者が社員、保険金の受取りは会社という形態になります。

多くの法人契約のがん保険では社員は自分が会社契約のがん保険の被保険者であることを知らないか、あるいは忘れているかのどちらかです。

なぜなら契約通りであれば社員にはメリットはまったくありませんから、会社は説明もしないし、社員は聞きもしません。保険料を負担する契約者である会社にすれば解約返戻金を受け取って節税することが目的ですから社員に保険金を渡す気などまったくありません。

ところが社員ががん罹患すると気の毒という反面、受け取るつもりがないがん保険金が気になる経営者が多いのです。

節税目的のがん保険は多くの場合複数社に契約があり入院給付金も10万超えなど、尋常でない契約になっているため給付金請求をすれば、保険金総額は数千万の巨額になる場合すらあり得るのです。しかし保険会社指定の診断書を医療機関に書いてもらう必要がありますから、がん保険金の請求をする場合は社員にはがん保険の存在を知られることになります。

なぜ会社が困るかと言えば、社員のがんが治癒するなら見舞金程度でお茶を濁すこともできますが、がん死亡などとなると遺族にがん保険金請求のための診断書をお願いするなど、なかなかできないところなのです。

保険金の帰属を巡る裁判になれば会社が勝てる可能性が低くなります。それゆえに社員ががんに罹患すると、欲の出た経営者ががん保険金を受け取るために頭を悩ませることになります。

 ◆ がん保険金を受取り見舞金で済ませるか。

社員が治癒するような場合、見舞金程度で済ませることはあり得ます。実際、福利厚生の仕組みとして支給規定を決めて付保規定を作成しているでしょうが、中小企業では多くの場合、税務調査対応用ですから従業員に周知しているとも思えません。

見舞金は世間の通念の範囲とするなら10万円が限度でしょう。それ以上出すなら所得と見なされても仕方がないところです。

対象となる従業員の性格も問題になります。変な話ですが会社に協力的な従業員なら多めに見舞金を渡して診断書をもらい口止めをしておくことになります。会社に非協力的な問題社員が、がんに罹患した場合は会社の規定通りの見舞金とし保険金請求はあきらめることが得策です。

従業員が、がんで死亡したような場合は、死亡退職金と弔慰金、見舞金として、たとえ受け取れるがん保険金が巨額でも保険金請求は断念する方が安全です。

継続雇用の社員のケースでは、先走りした経営者が口止め料を含めた見舞金を300万渡すと伝えてしまったことがありました。これは見舞金の枠を越えて賞与です。継続雇用給付金が打ち切られ、翌年の年金額が大幅に減額されました。こういうケースでは安易な判断をせず、内緒で渡したいのなら経営者のポケットマネーで対応すべきです。

 ◆ まとめ

法人保険にかかわっていると何度か出くわすいやな話ががん保険金請求です。なぜ社員に知られずにがん保険の契約できるのかと思われる方もおありでしょうが、そういうことが可能だった時代がありました。社員数だけ100円ショップで買った印鑑がいまでも役に立っています。

中小企業では資金繰りが逼迫するとなりふり構わずがん保険金請求に走る場合もあるのではないかと思います。かならずしも社員とトラブルになるとは限りませんが、口止めは難しいとお考え下さい。またこういうことは公平に処理できるものでもありません。相手を見極めて納得させて落としどころを考えて下さい。

もともと解約返戻金が目的ですから、欲を出すと問題も出てきます。基準はありませんのでケースバイケースで慎重にご判断下さい。

節税保険、国税庁のパブコメでトドメか?

節税保険、国税庁のパブリックコメントでトドメか?

CIMG3490ついにと言うか、ようやくにして4月11日、国税庁から節税保険に関するパブリックコメントが公示されました。

節税保険販売停止のバレンタインショックからほぼ2ヶ月、保険業界の混迷に終止符を打つのかそれとも拍車をかけるのか『「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部 改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する 意見公募手続の実施について』を読み解くと国税庁も節税の抜け穴を防ぐためにそうとう呻吟(しんぎん・苦しんでうめくこと)したと思われる内容です。

じっくり読んでも意味がつかめない項目がありますが、結論から申し上げると定期保険(長期平準定期保険・逓増定期保険)やがん保険などの第三分野をからめた医療保険など保険種類にかかわらず、すべての保険商品で損金効果(節税効果)をなくす国税庁の新ルールです。

分かりやすく言えば国税庁によると「最高解約返戻率」という急所を押さえることで資産計上率を大きくし、解約時の実質返戻率が100%を越えない縛りが節税目的の全商品にかけられたということになります。節税保険を一網打尽にしたついでに、事業保障の長期定期保険までも半損という一律の経理処理を認めず、新たに節税効果が最小限になるよう細かくルールが設定されています。

国税庁のパブリックコメントにより節税保険はこれで完全にトドメを刺されたと言えるのではないかと感じています。

 ◆ 節税保険が狙われた理由。

この辺の国税庁と保険業界との経緯は下記のページに詳しく書きました。

 ■国税庁、網がかかるか全損保険。

■全損節税保険の駆け込みラストチャンス。

■節税保険、自粛か、販売停止か、売り放題か。

■節税保険、バレンタインショックの行く末!?

■節税保険販売停止の無策、国税庁の暴走!

国税庁と保険業界の法人保険による節税イタチごっこはここに来て終わりを告げるのでしょうか。法人契約の保険には事業保障という目的のほかに利益の繰り延べということがあります。中小企業にとっては利益を繰り延べることである程度PLをコントロールしたり退職金準備を設計したりすることができました。国税庁にすれば法人税収減となります。

そのためには保険料をできるだけ多く損金に落とせることと、より高い解約返戻率が求められます。実質の解約返戻率が(100-実効法人税率)を越えていれば利益の繰り延べができますから、出口対策さえしっかりできていれば節税になります。

ところが何ごとも「過ぎたるは及ばざるが如し」(ちょっと意味がずれていますが)保険業界の競争が熾烈になり、全額損金の節税保険販売競争が激化しました。その結果、保険商品を認可した金融庁が保険商品の見直しを指導し始めた矢先に、国税庁が保険業界の幹部を集めマッタをかけたというわけです。

国税庁からの指導で保険会社各社は販売停止を決め、戦々恐々で国税庁のパブリックコメントを待っていたということです。おかげで契約者である中小企業も節税目的で契約したものの、国税庁の判断先送りにずいぶん振り回されました。

 ◆ 節税保険の効果がなくなれば死活問題の保険代理店。

今回の国税庁のパブリックコメントで示された締め付けが通達として出れば、一番困るのは法人保険を主にあつかう保険会社と保険代理店です。事業保障の定期保険だけではたびたび需要があるわけではありません。

節税保険なら利益の出ている企業では毎年需要があります。かといってがん保険や介護保険などでは保険料が伸びません。法人保険をメインにしている代理店の主力商品はやはり損金効果の高い節税保険です。まさに代理店にとれば死活問題、存続にかかわる重大事態です。国税庁も酷なことをするものです。

 ◆ パブコメの真意を読み解くと、国税庁の腹の内。

 ■国税庁パブリックコメントPDF

国税庁のパブリックコメントのタイトルは下記のように長々と意味不明です。

「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部 改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する 意見公募手続の実施について

パブリックコメントの内容が5ページ、法人税基本通達の新旧対照表が18ページと読み解くにも骨が折れるボリュームです。国税庁のねらいを、改正内容に絞り込んで分かりやすくまとめてみました。ただし現時点では国税庁の正式な通達として出ているわけではないですから、確定ではありません。念のため申し添えておきます。

・基本的な考え方と方向性(国税庁の立場)

法人税法上、前払部分の保険料は資産計上するのが原則
法人税基本通達(9-3-5)では保険料は期間の経過に応じて損金算入
保険の種類ごとの損金算入ルールを定めた通達を一本化し下記の新ルールを適用

解約返戻率が最高になる時点の返戻率を「最高解約返戻率」と定義しています。

イ 最高解約返戻率が50%超7 0%以下となる場合[50%<解約返戻率≦70%]

6割損金/4割資産計上となります。
実効法人税率33.8%では、 単純返戻率 70%のとき実質返戻率 ⇒ 87.8%

ロ 最高解約返戻率が70%超8 5%以下となる場合[70%<解約返戻率≦85%]

4割損金/6割資産計上となります。
実効法人税率33.8%では、 単純返戻率 85%のとき実質返戻率 ⇒ 98.3%

ハ 最高解約返戻率が85%超となる場合 [85%<解約返戻率]

最高解約返戻率×90%の資産計上、86%で22.6%損金/77.4%資産計上となります。

実効法人税率33.8%では、 単純返戻率 95%  のとき実質返戻率 ⇒ 99.9%
単純返戻率 100%のとき実質返戻率 ⇒ 103.5%

(注:被保険者一人あたりの年換算保険料が30万以下は全額損金また経過年数に応じ損金算入割合の変動があります。)

わかりやすくするため、資産計上期間の細かいルールは省略して「イ」「ロ」「ハ」の最高解約返戻率区分による資産計上ルールを適用すると実質返戻率がどのように変わるかを示しています。特に「ハ」のケースでは長期平準定期にこのルールを適用されると混乱を生じるのではないかという複雑さです。

実質返戻率が100%を越えなければ節税効果はありません。事業保障を考えなければ、結果的に保険会社に利益を貢いだだけとなります。

また上記の計算シミュレーションは、解約返戻率のピーク時の解約を前提とした資産計上期間の実質返戻率を試算したものです。詳しくは国税庁パブリックコメントPDFでご確認下さい。

 ◆ 逓増定期の名義変更は生き残るか。

CIMG3492全額損金で販売されていた節税保険はこれにより意味をなさなくなります。長期平準定期保険も事業保障として考えれば意味がありますが、利益の繰り延べ効果(節税効果)はほとんどなくなることになります。

逓増定期保険は利益の繰り延べという意味では契約する意味がなくなりますが、名義変更スキームは存続するかもしれません。

ただし最高解約返戻率は「ハ」のグループに属すことになりますからなんと9割の資産計上になります。名義変更した時には巨額の雑損失が法人側に発生することになりますが、それはそれで利益が出ている法人では有効な使い道があるように思います。この雑損失は決算書で目立つでしょうから、税務署も目をつける可能性があります。さてどうなるか今後の動きを見守りたいと思います。

 ◆ 経理処理ミスが山積。

国税庁のパブリックコメントによると、おかげさまで既契約には遡及しないようなことが記述にあります。

以下は引用です。

「改正後の法人税基本通達9-3-4から9-3-7の2までの取扱いは、平成31年○月○日(改正通達の発遣日)以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料について適用します。」

なぜ国税庁のパブリックコメントの締め切りが5月10日(金)で改正通達の発遣日の元号が平成なのか意味不明ですが、駆け込み契約は既得権を得たということのようです。とりあえず契約いただいたお客様に迷惑をかけずに済み、安堵している保険営業の顔が見えるようです。

それはさておき、既契約と新契約の経理処理が同じ保険でも異なるようなことになります。すでに過去において国税庁の通達が出るたびに経理処理が複雑化し経理処理ミスが多い中、さらなる混乱の要素になりそうです。このルールでは保険積立てが正確に処理できるとも思えません。

節税効果がなくなり、もはや今後の契約は出口対策を考える必要はなくなりそうですが、経理処理を正確に行うことはかなり難しそうです。今後は保険会社が経理処理の案内にさらに力を注ぐべきでしょう。

 ◆ 国税庁のパブコメから見える保険業界の行く末。

今回は一連の節税保険シリーズのまとめのようになりました。保険を買う側ではありますが、一連の国税庁発のバレンタインショック騒動はhokenfpとしてはとても興味深く追いかけました。過去に例のない事態ですからまだまだこれから保険会社各社、保険代理店も存続をかけて戦略を練り直さないといけないところでしょう。ただ国税庁のかけた網は最高解約返戻率という節税効果一網打尽策ですから、保険商品設計はさらに難しくなるように思います。

国税庁も大人の態度を示して既契約への遡及なしとし、過去の通達を見直し全体に通用する網をかけ直してきました。既契約への遡及はないのではないかという見解はOB税理士によると国税庁の考え方として「納税者に不利な通達変更は、通常遡り適用はありません。」ということのようです。節税保険の大量の駆け込み契約は出口対策が残りました。

気にかかる点はやはり保険代理店の苦境により業界の再編や廃業が相次ぐと、せっかく既得権で手に入れた全額損金の節税保険の出口対策がおろそかになりそうです。解約時期を誤ったり、出口対策もないまま解約したりするような無策は避けたいものです。

とくに保険設計をきちんと考えずに、とりあえず節税で駆け込み契約をしたようなケースが危ないと思われます。hokenfpの主張として再三申し上げていることではありますが、保険契約管理はあくまで自己責任でと繰り返し申し上げておきます。

取り急ぎhokenfpとして法人保険全体にかけられた節税に対する国税庁のパブリックコメントの内容を分析しましたが、不十分なところがあるかもしれません。お気づきの点がございましたらお知らせいただきますと幸甚です。

生命保険・損害保険、保険営業の違い。

生損保、保険営業の違いを買う側でまとめました。

CIMG3488生損保(せいそんぽ)という言い方があります。生命保険と損害保険という異なる分野をひとまとめにした総称です。

同じ保険商品を扱う分野ですが、生命保険は人を対象とする保険なのに対して損害保険は物を対象にした保険です。似ているようにも思いますが、内容的にはまったく異なります。

柔道と剣道くらいは違いますから、勝ち負けを競う点では同じですがルールも仕組みも道具も違います。

保険という点ではリスクを評価して保障(生命保険では保障、損害保険では補償、債務は保証)するという点では同じですが、生保と損保は区別して考え相談する相手も分けて考えなくては適切なアドバイスは期待できません。

買う側の立場では、同じ保険ですから誰に相談しても同じように思います。しかし内科の問題を外科に相談するようなミスマッチになります。生損保乗合代理店もありますが、適切な保険設計を考えるならよくよくお考えになる必要があろうかと思います。

◆  生命保険と損害保険の営業は共存しない。

保険営業が自信をもって売れるか、十分な知識と経験をもって扱えるかというとこれは生損保では共存しないと言えると思います。

保険営業は生命保険の営業と損害保険の営業とに別れます。同じ保険という形のない商品を販売する営業ですが、ずいぶん営業スタイルも必要とされる知識も異なります。

生損保兼営という代理店もありますが、生損保共に販売する商品特性や分野により得手不得手があります。得意分野に特化しないと十分な顧客サービスが提供できないという面がありますから生命保険と損害保険では両方取り扱いができたとしても、両方とも満足できる対応ができるとは限りません。

 ◆  入りやすい損保と入りにくい生保。

この続きは「出やすい生保と出にくい損保」となります。生命保険は診査や告知があり加入には一定のハードルがあります。申込書や必要書類も多岐にわたります。しかし保険事故が起きたときは、必要書類さえそろえれば速やかに保険金が出ます。

損害保険に加入するときは三文判でも何でも押しておき保険料さえ払えば加入できます。加入時のハードルは比較的低いのですが、保険金の支払となると支払条件が詳細に規定されていて少しでも要件を満たさないと保険金は支払われません。

どちらも契約通りという点では変わりがないのですが、生命保険の事故と言えば死亡か病気入院でありシンプルです。ところが損害保険は自動車保険にしても火災保険にしてもさまざまなケースがあり、保険金の支払要件は詳細かつ多岐にわたります。それゆえ生保は保険金が出やすく、損保は保険金が出にくく感じるのですね。

◆  損保は一年契約、生保は複数年契約。

この続きは「損保は一年更新、コミッションは毎年。生保のコミッションは初年度限り。」となります。このため、どうしても生保の営業は一発勝負、損保は継続が目的となりますから営業スタイルも変わります。

生保営業は押し半分、損保営業はリスク訴求が中心(hokenfpの個人的所感)です。

また保険商品としての多様性も異なります。損保の保険商品は基本的には掛け捨てで補償に特化しています。しかし生保の保険商品は法人契約などで金融商品としての性格も併せ持ちます。いわゆる損金効果を活用した節税保険としての機能です。

また長期にわたる契約となりますから、事業承継や相続設計に有益に取り込むことが可能です。そのため、生命保険営業と損害保険営業では必要とする知識範囲が大きく異なります。専門性の領域がまったく違いますから生損保の共存は難しいと言わざるを得ない理由がここにあります。

 ◆  生損保の相互参入と兼営について。

CIMG3489「生保は人、年齢と性別のみで保険料が決まる。損保は物、財産や物の価値で保険料が決まる。」と申し上げました。

そのためもともとは生命保険業と損害保険業は、その商品特性の違い(引受けるリスク、保険期間等)から兼営が禁止されてきました。

ところが平成8年から保険業法が変わり国内大手生保の保険のおばちゃんが自動車保険を売れるようになりました。あちこちの保険会社で生損保の相互乗り入れが始まり損害保険募集資格をもつ生保営業が多数生まれました。

その時代に保険業界にいましたので、そのときはチャンスのようにとらえましたが、今にして思うと「何でもできるは何もできない。」になってしまったように思います。

保険営業に限らず、得意分野を作り自分のスタイルに特化した専門営業が強いということが、今にしてわかります。話が保険を売る側にそれる傾向があるのは毎度のことで、失礼しおります。

買う側で申し上げれば生保でも損保でもベストな保険設計を求めるならその分野を得意とする専門家に相談すべきです。しかしhokenfpもそうですが、FPが保険の専門家かと言えば、必ずしもそうではありません。この辺の見極めは確かに難しいものがあります。

そういう場合は相手の人柄を見定めるより手はありませんが、それが眼力として意外と正解の場合があるのです。