改正民法2019|配偶者居住権。

改正民法2019|配偶者の生活を守る配偶者居住権を新設。

DSCF1883生命保険にかかわることは人の生死にかかわることでもあります。そのため人が死亡することで保険金が支払われたり、生命保険契約そのものが相続財産になったりと、生命保険と相続は切っても切れない関係があります。

生命保険を扱うものは保険の知識だけではなく、相続の知識も深めておかなくてはなりません。その相続を規定する民法が2018年7月、40年ぶりに改正されることが決まりました。改正の内容によって施行開始は、2019年1月から順次適用が進み、2020年(令和2年)7月にはすべての制度が改正民法に移行することになります。

保険の話も交えながら、改正民法のポイントをチェックします。この改正によって今後の相続はどのように変わるのでしょうか。報道などからなんとなくわかっているつもりの内容を、いざというときに困ることがないようできるだけコンパクトにまとめてみました。

◆ 民法改正の主な内容は以下のようになっています。

 1)配偶者の居住権を保護「配偶者居住権」の新設。

2)預貯金の仮払い制度の創設。

3)自筆証書遺言の法務局保管制度の新設。財産目録のPC作成。

4)遺留分制度の見直し、金銭請求。

5)相続財産の所有権に登記や登録を重視。

6)相続人以外の特別寄与分の請求権。

今回から、項目ごとに順次記事をアップする予定です。専門家というわけではないので、詳細な内容は他のサイトに譲り、コンパクトかつ実務的な内容を心がけました。参考になれば幸甚です。

◆ 配偶者居住権とは。

配偶者の生活を守るために新たに配偶者居住権が創設されました。居住権とは住み続ける権利であり、所有権とは異なります。平たく言えば家賃がいらない生涯借家権のようなものでしょうか。この制度では相続に不公平が出ないよう配偶者が得るのはあくまでも居住権だけで、不動産としての家の所有権は別個の資産として分割して相続できます。

ただ所有しているからと言って売り飛ばして現金化することはできないわけです。相続したのは不動産の負担付所有権ということになります。

相続税がかからない方々のほうに影響が大きい配偶者居住権と言えると思います。相続税を払うほどの資産家であれば、遺産分割で残された配偶者が住む家を取り上げられるようなことになりません。住む家以外に分けるものが少ない相続で、現金や生命保険などの代わりに渡すものがない時に配偶者居住権がものを言います。

ただこの制度は内縁の妻など法的な配偶者でない人には適用されませんから、そういう場合は先立つ被相続人が、連れ添った内縁の妻や愛人に配慮した遺言書を残す必要があります。

◆ 配偶者居住権がない相続では。

配偶者居住権がないからと言って母親を追い出すような相続人はそんなにいないとは思いますが、後妻だったり、仲が悪かったりすると家を売らざるを得ないとか、家に住み続ける代わりに生活に必要な資金をそっくり渡さざるを得ないとかいうことが起こります。相続人の中には金に困っている子もいるかもしれません。事業に失敗して急場の資金が必要な子もいるかもしれません。マンションのローンの残債に苦しんでいる子もいるかもしれません。

背に腹は代えられない骨肉の争いも相続では発生します。家裁の調停まで行く事例が多いことでもよくわかりますが、配偶者居住権がない相続では、もめることが多かったため創設されたと言うことができるのではないかと思います。

◆ 他の相続人は負担付所有権を相続。

DSCF1880他の相続人は法定相続に従い相続すれば負担付所有権を相続することになります。

金に困っていなければ一旦配偶者(母親)に相続しておき二次相続の時に売却すれば問題は起こらないのですが、相続人にすれば、それができない金銭的事情があるから相続の権利を主張するわけでしょう。

そういう相続で配偶者居住権を主張されたら負担付所有権というのは、借家と同じで価値がずいぶん低くなりそうです。

金に困っている相続人は負担付所有権を担保にお金を借りることはできるのでしょうか。居住権を相続した配偶者がなくなれば権利は喪失すると考えられますが、借家権のように権利の期限が明記されていればいいですが、配偶者居住権は半永久的、配偶者が存命している限り続きますからお金が借りられるとしても担保価値は下がるでしょうね。

◆ 配偶者のもち戻しの優遇条件。

相続には相続人間の公平を図るため「特別受益のもち戻し」という怖い制度があります。特別受益とは生前に被相続人から贈与を受けた分も相続財産に持ち戻して公平に再分割しなさいという制度です。誰にも覚えがあると思いますが、親からローンの援助をうけたり、家の頭金を出してもらったり、海外留学の費用を負担してもらったりというような費用はもち戻しの対象になります。

しかし被相続人がなんだかの方法でもち戻しを免除するという意思表示があればもち戻しは不要になります。これを拡大解釈して生前に配偶者に対し居住用の不動産が贈与されていた場合に、被相続人がこのもち戻しの意思表示をしないで亡くなった場合でも配偶者だけは婚姻期間20年以上であれば居住用不動産のもち戻しが適用されないという優遇条件が加わりました。

メモでも口頭でも贈与契約書でもよいので一言「もち戻しを免除する。」と被相続人としての意思表示をしておけば、もともと問題になることはありません。

◆ 配偶者居住権のまとめ。

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今回は改正民法の項目の中から配偶者居住権について書きました。こういう制度は施行後、実際の場面ではいろいろ未設定の問題がでてきます。

しゃくし定規にいかなかったり抜け道があったりすることがよくあります。今後の高齢化社会に向けて必要な法整備が一歩進んだといえるのではないでしょうか。

補足として申し上げることがあります。遺言書や遺産分割協議の結果、もし住居に関して配偶者の相続分がなくなったとしても「短期居住権」が与えられることになりました。これは最低6か月間、それまでの住居に継続的に住まいする権利を保証するものです。この権利は相続財産として評価されません。

6か月後の後はどうするのか、いらざる心配をしていますが、今回の改正で配偶者の老後の住居には一定の保証が加わりました。

これにより家族関係が円滑でないような家庭で相続が発生した場合、配偶者が突然住むところを失い路頭に迷うことはとりあえず防げるようになりました。ここは過去形で書いてはいけませんでした。この制度は2020年4月1日までの施行が予定されていますので「防げるようになる予定です。」と書くべきです。ただ相続発生時期は配偶者に選ぶことはできませんから雲行きが怪しくなる前に遺言書を書いてもらうことが重要ですね。

バレンタインショック後遺症に苦しむ保険業界の再編。

バレンタインショック後遺症に苦しむ保険業界の再編。

DSCF1878保険契約は個人と保険会社が契約する場合と法人(会社)が契約者となって保険契約する場合があります。後者を法人保険あるいは経営者保険とか役員保険とか言うこともあります。

今回、国税庁の通達により経理処理ルールが変わり販売が厳しくなったのは法人保険です。個人で契約する保険には影響はありません。

保険の営業というのは地道に顧客との関係を築き上げながら信頼を構築し、顧客自身のリスクに気づいていただくことで契約へつないでいきます。このため個人契約で一気に大きな契約をとることはできません。また保険契約というものは契約のタイミングがそう度々あることはなく人生の節目で責任の大きさに合わせて見直すことが普通です。

ところが法人保険の目的は大きく二つあり、ひとつは事業保障として経営者や役員などの重責を担う方の万が一により、会社の経営が一時的に厳しくなるとき保険金というキャッシュで信用を維持する目的でかけられます。

もう一つは利益の繰り延べによる節税効果を目的とした保険があります。保険契約全体からすれば節税保険は一部なのかもしれませんが、ここに集まる保険料が半端ではありません。個人契約と比べると国税庁が黙って見過ごすことができない大きさがあり、保険料の桁が二桁違う感じです。その上毎期決算前に契約のチャンスが巡ってきます。それゆえ法人の節税保険を得意とした保険会社、保険代理店がこれまで大きな成果を上げてきました。

 ◆ 法人保険、開店休業状態の半年間。

これまでの時系列を整理しました。この間、なすすべがない保険代理店のなかには、どうせ商売にならないのだからというわけで、バレンタインボーナスで海外旅行に出かけた優雅な人もありました。しかしながら心底穏やかでない旅だったと思いますね。

2/13 国税庁の招集

2/14 バレンタインショック 節税保険全面販売休止

2/28 駆け込み契約急増

4/10 パブリックコメント募集

5/10 パブリックコメント募集締切(既契約訴求なし)

6/28 国税庁通達発遣(短期払医療保険を10/7まで延命)

2月末の駆け込みを最後に、節税保険を売り込む保険会社はなくなりました。国税庁や金融庁に歯向かう保険会社はなかったようです。国家権力といえども一度認可した商品に対して、今の時代に無謀なことをするものです。

 ◆ 保険代理店の苦境、保険会社の行き詰まり。

保険代理店は売れ筋保険商品を失いました。保険会社も法人を主体としていた会社は完全な行き詰まり状態です。2月半ばから約7カ月以上手詰り状態の保険業界です。やり手の保険代理店は一発逆転・一括千金のような成果は残せなくなりました。

細々と個人でも法人でも保障性をメインにした保険を売り続けるしかありません。自分の努力次第で、サラリーマンではできない大きな夢が実現した保険業界も、先行きが見通せなくなりました。

  ◆ 売るものがない、ドル建て商品。

やり手の保険代理店がしばらくぶりに提案してきたのは養老保険でした。それもドル建てのハーフタックスです。養老保険は社員全員に付保し死亡保険金の受け取りを遺族にすれば半分を損金にできます。手続きさえすれば事務手数料と消費税が割引になります。

いまどき貯蓄性の高い養老保険は円建てではメリットなしですからドル建てで提案するしかないところです。代理店によると爆発的に売れているそうです。(はったりでしょうがね。)ドル建てではやはり為替リスクがあります。

下手をして入り口で円安になり出口で円高になれば為替のダブルパンチリスクがあります。うかつに手を出せないところです。実際のところ代理店にしても売るものがなくて10年の短期払い医療保険とハーフタックスの養老保険だけしかないとのことです。事情は分かりますが、選挙の最終日のように最後のお願いに来られてもそうそうお付き合いはできないものです。

 ◆ 個人契約終身保険だけでは生活できないコンスタントな契約。

どの代理店も保険営業も自分の苦境は口にしません。今回の国税庁の締め付け通達の影響を聞くと「個人契約が多いので影響はあまりありません。」と決まり文句を言います。営業としては自分が不利な立場に追い込まれたことの自覚があると、お客様の信用を失わないようにうまく説明して切り抜けようとします。

これまで節税保険しか提案したことがない代理店が同じことを言います。提案するものがない苦境は手に取るようにわかります。

保険代理店に中小企業法人保険専門の某社はどうですかと話をむけると「あそこは大変です。毎週のように代理店営業担当から電話がありますが、無視しています。」これはよく考えれば、自分の苦境を白状しているようなものですが、そこは武士は食わねど高楊枝です。

個人契約にしても法人契約でも保障性の保険は毎年あるわけではありません。一度契約すればよほど環境が変わらない限り見直しはしません。節税保険のように毎年チャンスがあるわけではありません。損保のように毎年コミッションがあるわけでもありません。

個人や法人で終身保険を契約頂けたとしても、それだけではコンスタントな契約にはなりません。生活するだけなら何とかなるかもしれませんが、身に付いたステータスや贅沢はそう簡単にやめられませんから苦しくなります。

 ◆ バレンタインボーナスが退職金に。

法人の節税保険をメインに扱っていたら今回ばかりは、廃業を考えるなら早い方がよDSCF1879いかもしれません。もう一括千金の法人保険はないと言えそうです。少しばかり嫌な言い方になり申し訳ないですがバレンタインボーナスが退職金になりそうな厳しさです。

買う側で新しく開発された保険の説明を聞いていても残念ながら財務的なメリットが少なすぎます。

保険会社もあの手この手で知恵を働かせた新保険商品を出してくるかと思いきや、はっきり申し上げて金融庁に媚(こび)を使うばかりで、音なしのかまえです。保険営業や保険代理店の行き詰まりは、そもそも保険会社の行き詰まりに他なりません。

全く酷い話ですが、すでに一部の保険会社では整理と合従連衡が始まっていると聞きます。その結果、被害を受けるのは保険営業と顧客です。(保険会社の合併・統合は破たんではありませんので契約条件は引き継がれます。破綻した場合も生命保険契約者保護機構が機能し責任準備金の9割が保証されます。)

 ◆ まとめ

バレンタインショックに関するまとめ記事は以下に書きました。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

これで打ち切りにしようと考えていましたが、保険業界ではまだまだ尾を引きそうです。買う側の中小企業でも正直困っているところです。あまり手を出したくない航空機や船舶、果ては足場まで検討せざるを得なくなりました。オペレーティングリースは保険に比べれば使い勝手がすこぶる悪いのです。

かといって税金を払うほど馬鹿らしいコストもないので、冗談抜きで社員旅行を海外へ、そして決算賞与まで考えることになります。社員は大盤振る舞いに喜ぶでしょうが、しょせん一時的なものです。それで売り上げが伸長したり利益が出たりするものではありません。できることは虎の子の既契約を大事に守ることぐらいになりました。バレンタインショックの被害者は保険業界だけではないということです。

遺言書の誤解、遺書の無力まとめ。

遺言書の誤解、遺書の無力、記事のまとめ。

CIMG3614遺言書については過去に何度か記事に書きました。そして遺言書は元気なうちに!と何度も進言しました。それでも遺言書が書けない理由を問いただすと、なんと遺言書と遺書の区別がついていないのです。

遺書の間に「言」の一字が入るだけで遺言書は意味も役割も機能も全く異なります。

関連記事を検索しても専門家以外のサイトでは完全に混同が見られます。誤解の多くは遺言書も遺書扱いで最後に言い残す言葉になっています。

世間一般では遺言書が家庭裁判所の検認を必要とする厳格な法律文書であるという認識がありません。故人の思いを伝える私的な手紙と区別ができていないのです。考えてみれば遺言書にかかわる専門家でもないとエンディングノートと同じで単に最後に書き残す家族への手紙としか考えないと思います。

Wikipediaには遺言のことを「日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいう。」とあります。民法で言う遺言と日常用語としての用途が混同を招いているようです。

世間には無理解からくる遺言書の誤解があります。手順を踏んだ遺言書には法的な拘束力がありますが、遺書は遺産分割において個人の気持ちは伝えられますが、ほぼ無力です。

遺書と遺言書の区別がつかないと遺言書を遺書のように死ぬ間際に書くものと思いがちです。遺書は病気で先が長くない人や自殺者が思いを書くもの、遺言書は民法に定められた遺産の分割を指定することができる法律文書です。

◆ 遺言書記事のまとめ

今回は過去に書いた遺言書に関する記事のまとめになります。読みかえしてみると重複する部分もありますし、誤字脱字も見かけますが、我ながらよく切り口を変えて書いてきたものです。

その中で主張していることは、遺言書が世間にいかに理解されていないか、いかに有効に利用されていないか、そして遺言書が手遅れになるケースがなんと多いことか、ということです。興味がある記事があればご一読ください。

 ■遺言書は保険。

CIMG3381遺言書が書けない理由を箇条書きにしました。遺言書が書けない、取り掛かれないあなたの自己分析に役立つと思います。普通の家でこそ書いてほしい遺言書。遺産5,000万以下で76%の争いがあり、家裁調停まで進んでようやく遺産分割成立となっています。

 ■遺言書の勘違い総まとめ。

CIMG3316ゆえに田舎でも都会でも遺言書。金持ちでも貧乏でも遺言書。悲しいかな人は道はゆずり合えても財産はゆずり合えないのです。二次相続にこそ遺言書。えっ!過料を払って遺言書を確認する、奥の手まで書いています。

 ■生命保険の見直しと遺言書はお盆に!

CIMG3200お盆は遺言書を書くチャンス、ついでに生命保険の受取人も見直すことが必要です。相続は家族の札束の奪い合いです。なんと言っても争族防止の切り札は遺言書です。お盆はご先祖様を迎え供養する厳かな時です。

■遺言書が絶対必要な理由。

CIMG3122遺言書が絶対必要になる7つのケースをまとめました。配偶者、内縁の妻、おひとり様遺贈、自社株相続、不動産、お二人様相続など遺言書がないと起こりえる悲劇があります。遺言書を書くことで、家庭円満と世界平和が維持されるということです。

 ■遺言書が書けない本当の理由。

CIMG3086やる気がでない本当の理由、遺言書が書けない理由を応用行動分析の視点でまとめました。遺言書を書くメリットを強化する必要があります。まず財産目録をエクセルでまとめることから始めてください。

 ■遺産分割協議は法律行為|遺言書は法律文書。

CIMG2909遺産分割協議や遺言書は民法に定められた法律行為。生命保険の確認と遺言書の検認はお早めに。遺言の検認には2か月かかります。遺言があったとしてもゆっくりしている時間はありません。10か月以内に話をまとめ申告する必要があります。

 ■遺言書優先の原則と遺産分割協議の矛盾について

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遺言書と遺産分割協議の優先度を検証しました。遺言でも遺産分割協議でも争いさえなければどちらが優先でも誰も文句は言わないのですが、骨肉の争族になるなら遺言書が優先になり法律文書としての力を発揮します。

 ■遺言書、書き損じればただの遺書|それでも解らない経営者へ。

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遺言書が絶対必要なのにどうしても先送りして遺言書が書けない経営者の話です。遺言書と遺書は区別が必要、遺言書を書くには気力と体力と知力がある元気なうちに書くことです。認知症や物忘れは静かに密かに近づいてきます。

■遺言書とはグレーなものに白黒をつけること。

cimg2517遺言書が書けない本当の理由は、相続人への思い、孫の可愛さが日々揺れ動くからです。遺言書を書くためにはグレーな心の内を白黒はっきりさせることです。ご自分の気持ちに決着をつけないと迷い続けて遺言書を書くチャンスを失います。

 ■遺言書は元気なうちに遺書は間際に生命保険は早めに!

CIMG1759遺言書は頭が明晰で体力のあるうちに、遺書は間際に書けばよろしい。生命保険の保障額や受取人は早めに見直しておくことです。遺言書がないと争族になり、情けないことですが果ては縁切り法事になります。

 ◆ 遺言書の誤解と威力、まとめ

遺言書があると開封せずに家庭裁判所の検認を受ける必要があります。検認とは難しい言葉ですが、相続人に対して遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、家庭裁判所で遺言状の形式要件を確認します。

遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認して遺言書の偽造、変造を防止するための手続きですから遺言の有効性や無効を判断する手続きではありません。たとえば検認では本人の筆跡確認とか相続内容の承認というようなことはしません。相続はあくまでも民法で言われる「私的自治の原則」が基本。裁判所は訴訟にならない限り介入しません。

しかし検認を受けた遺言書は有効な法律文書として相続手続きで活躍します。財産があってもなくても遺言書は争族を防ぐとても有効な手段です。エンディングノートや遺書を書くくらいならぜひ、今すぐ遺言書をおかきください。

家督相続から法定相続が招いた家族崩壊。

家督相続から法定相続が招いた家族崩壊について。

CIMG3774交通網と情報網が発達し、経済構造が地域農業から都市集中型に変わり家督相続時代の家族は崩壊し核家族化が進みました。

地方の都市や村落では人口減少が進み、シルバーマークの車ばかりが目立つようになり、耕作放棄田と人が住むことをやめた家があちこちに放棄され社会問題にまでなっています。

確かに生活は便利になり、居ながらにして世界中の情報が手に入ります。よほどの離島か山間部でもない限り流通網が発達していますから、欲しいものは手に入れることができます。

しかし家族はバラバラに住み盆暮れに顔を合わせる程度になります。親は子の心配をし、子は親の老後生活を憂いつつ、自分たちの生活を優先するしかないので、できることは限られます。

この日本社会の有り様は正しい選択だったのでしょうか。老いて気が付く社会構造への疑念はどんどんふくらんできます。保険には直接関係がありませんが、保険から相続、そして家族とつながると家族崩壊の深刻さに気が付きます。

 ◆ 家督相続時代の家族。

親に相続の話をするなど家督相続に時代にはあまりなかったのではないかと思います。家がありそれを継ぐものと、それ以外のものに分かれていた時代ですから相続の在り方も決まっていたようなものです。

他家に嫁に出した娘には嫁入り道具と持参金一式で実質的な相続放棄です。次男は分けるお金があれば近所の敷地に家を建て新屋として村入りです。それ以外は自分の器量で独立して家を構えることができれば運がいい方で、どこかの家に養子に入ることで糊口をしのぎます。

結局、地域の共同体としての村組織に力があり、その枠をはみ出ては生きていくことが難しい時代だったと言えるのではないかと思います。

それはその時代の長所であり短所でもあります。少なくとも家族は一つ屋根の下に暮らすか近所に住まいしています。老親は孫の手を引きながら散歩しています。若者の自由は制限されましたが、親が老いることに心配のない社会であったと思います。

 ◆ 法定相続時代の家族。

昭和22年に民法で家督相続が廃止され法定相続制度が導入されました。これにより配偶者や長男以外の子に相続権が与えられました。家という概念が廃れ個人の権利が伸展した結果、年齢や性別を問わず均等に財産を分ける「諸子均分相続」が始まりました。

田舎ではそうはいっても稲作農業が主体でしたから田を分けると家としての生計がなりたたなくなるため、長子相続を基本とした分け方が残っていました。「たわけもの」愚か者の意味をもつこの言葉は田を分けることはおろかであることを意味しています。

法定相続は確かに公平な財産の分け方のように思います。ところが、この法定相続は家の崩壊を促進させる一因になったのではないかと思います。

モータリゼーションが進化した時代では、日本全体が一つの枠組みとなり、高収入を得るためには学歴社会で結果を残し、有名大学を卒業し優良企業に入社することが成功への近道でした。田舎に残っても社会で飛躍することができないし、家を継ぐという概念や責任感が薄れ、長男といえども親の代からの財産を引き継ぐことができないのですから、仕方がないかもしれません。

権利が分散すると昔からの本家を維持することすら難しくなることがあります。こういった事例は相続の現場で多数見られます。いまでも長男の責任という感覚は残っています。

 ◆ 家族崩壊時代の相続。

家族が最小単位に分散し、日常のコミュニケーションが弱くなると相続での意思疎通も難しくなります。お互いを思いやる心がなくなり権利の主張が幅を利かせてきます。

家族崩壊時代の相続が争いになりやすいのはこの辺に原因があるのかもしれません。マンションに住んでいるとお隣のご主人の顔も知りません。15年住んでいても、です。ガレージであいさつもしないほど、隣人のことを知らないのです。家族崩壊だけでなく地域社会のコミュニティも崩壊の危機に瀕しているといえると思います。

一人一人は誰もフレンドリーでよい人です。でも触れ合う機会がないと知らない他人なのです。近所の人でも知らない人は他人です。他人には妙に冷たい態度をとるのが日本人の特性です。

 ◆ 親の心配は相続よりお金と孤独。

親の心配ごとは相続税の節税とは限りません。よく考えてみれば相続税を払うのは相続人です。被相続人として親が相続税を払うことはないのです。親が相続の話を本気で聞けない理由がこの辺にあるように思います。

老いていく身の心配事は老後のお金、経済力と孤独なのです。どうしても若い時のように体は無理がきかなくなり、あちこちに人には言えない不具合が生じます。生命保険の告知でひっかかるような病気も経験します。

子供たちが独立して家庭を持つと親二人暮らしになりますが、いずれどちらかが介護され先立ちます。老いての一人暮らしは、やはり孤独になります。そうなったときに必要になるものはまとまったお金です。お金がなければ老人ホームにも介護施設にもはいれません。

老いて行く親にすれば心配事の優先順位から言えば、お金と孤独、相続のことはそのあとのことです。

 ◆ まとめ。

CIMG3775子供の将来を思い一生懸命勉学の支援をし、塾に通わせ、受験に一喜一憂し有名大学に合格することが子供と自分の将来に大きく花開くと信じていた親御さんは多いと思います。

ところが有名大学に合格し一流企業に合格すると我が子は自分の手元から離れていきます。ついでに息子の嫁も孫も年に数度しか会えなくなります。

我が子の将来を思い骨身を削って支えてきたことが果たしてよかったのかどうか、気が付いた時には遅いという現実があります。

勉強なんかできなくてもよい、一流企業になんか就職しなくてもよい、近くの工場で働いて近くの嫁をもらってくれたら毎日孫と散歩できたものを。親とは悲しいものですね。

法定相続がすべての原因とは言いません。しかし法定相続は家と家族を崩壊させる一因には違いありません。せめて生命保険だけでも家族がつながるようにしっかり受取人を見直しておいてください。

借金の法定相続には理屈がある。

借金の法定相続には債権者保護の理屈。

CIMG3772相続と借金は常々関連があります。会社を経営していれば借金は避けて通れません。

また身内や親戚は借金の保証人としてかり出されることでしょう。

中には債務超過に近い会社もあると思いますから財産はあっても差し引きプラスかマイナスか判断が難しいケースもあります。

借金が遺産を上回るなら相続人は相続放棄を考えなくてなりません。

相続放棄は短い期間(3ヶ月)で判断をしなくてはなりませんし後戻りが許されません。より慎重な判断が求められます。ただ債権者としては相続人に債務を引き継いでもらわないと取りっぱぐれになり自分が苦しくなります。相続人の相続放棄と債権者の権利を見ていきます。

◆ 民法は債権者保護の立場。

日本の民法のなかに相続について定められた項目があり、相続法と呼ばれています。この民法における相続の考え方は債権者保護の立場に立っています。

お金を貸している人を債権者、借りている人を債務者とすると債務者から借金を取り立てる人が債権者と言うことになり、いかにも悪者のイメージがあります。しかし親切にもお金を貸してくれた善意の第三者ですから債務者が亡くなり相続が発生したからといって債務がなくなるわけではありません。相続財産があればそこから債権者に弁済するのが筋です。

相続人は遺産より借金が多いときは相続放棄をすることができます。しかしそれで済むわけではありません。相続順位が第一位の相続人(配偶者・子)が相続放棄をしても借金はどこまでも追いかけてきます。相続の第二順位の相続人(親)、第三順位の相続人(兄弟姉妹)に相続権が移り借金が引き継がれることになります。

仲がよくても悪くても、後々憂いがないように世界中どこにいようとも事前にきちんと相続放棄したことを伝えなくてなりません。

 ◆ 借金を集中して自己破産は奥の手か。

浅知恵が回るといろいろ考えます。遺産分割協議で事業に失敗した相続人に債務を集めて自己破産させておいて、他の相続人は相続放棄せずプラスの遺産を引き継ぐという作戦です。

遺産分割協議の知恵が勝つか債権者の権利が強いかですが、これでは債権者がたまりません。遺産があればそれで弁済せよと言うのはあたりまえです。

言い方をかえれば、相続人同士で決めた遺産分割協議の割合が第三者である債権者に有効かどうかですが、民法は債権者を保護する立場ですから、債務の分け方を遺産分割協議でどのように決めようとも遺言で一人の相続人に集中させようとも法定相続分で債務は引き継がれることになっています。

 ■生命保険の受取人変更12の実務ポイントをどこよりも詳説。

 ■生命保険で同居の嫁の相続悲劇は救えるか。

◆ 連帯保証の恐怖、借金も法定相続。

借金で恐いのは連帯保証人です。単なる保証人と違い抗弁ができず無条件で取り立てを受けてしまいます。知人や親戚に頼まれてよく考えもせずにハンコを押すことは危険です。連帯保証人の責任はとても重く、それは相続にも影響してきます。その辺は以下のページに詳しく書きましたので参考になさってください。

連帯保証人としての責任と覚悟を決めて連帯保証人になったとしても、そのまま相続になれば迷惑を被るのは相続人です。

■保証人の地位は相続されるという理不尽。

 ■相続人の連帯納付義務は重い。

上にも書きましたが債権者は相続人全員に対して法定相続分に応じた部分を請求することができます。もうひとつ連帯保証でやっかいなことがあります。連帯保証している債務は借金ですから相続財産から差し引けそうなものです。ところが理屈があります。

借金はもともとの債務者が返済すべきもので、連帯保証人が肩代わりするようなことになった場合は、この時点ではマイナス財産ではなく債務者に責任を持って返済してらうべきものですからプラスの財産と考えます。

債務者が破産したり死亡したりすることで返してもらう見込みがなくなってはじめて相続税の課税対象から差し引くことができるようになります。連帯保証人などは家族が知らない場合もあり、後になって連帯保証人としての債務責任が判明することもあります。

◆ 後戻りできない相続放棄。

相続放棄は相続の発生を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。一度相続放棄をすると、後で撤回することはできません。3ヶ月は長いようで短い期間ですので、その間に被相続人にどのような借金があり、連帯保証人としての債務がどれだけあるかを見極めなくてはなりません。

間違って相続放棄をしても、相続放棄をしなくても後戻りできません。後悔先に立たずですから、有給をとってでも徹底的に洗い出すことが必要です。

うちの親に限って無いと思っていても、あるのが隠し子と連帯保証人と心得て下さい。

知らぬは相続人ばかりなりです。ただ後からわかった連帯保証人としての債務は諦めるしかないのでしょうか。実際はそうとばかりも言えないので、やり方によっては諦めるにはまだ早いと覚えておいてください。

 ◆相続、生命保険が有利な理由、まとめ。

「保険は相談するな!」は保険の情報サイトですから、相続に関して生命保険がいかに有利な仕組みかについては以下にも書きました。

 ■親の借金は相続放棄しても受け取れる保険金の有り難さ。

なにがすごいかと言ってもすごいのは相続放棄しても生命保険金は受取人の立場で受けCIMG3773取ることができると言うことです。

親の借金や連帯保証による債務が遺産より大きくて相続人全員が相続放棄せざるを得ないようなときでも、生命保険金は受取人固有の財産として堂々と受け取ることが可能です。

相続財産に合算されない個人的な生命保険金を受け取る権利なのです。

ただ相続により請求権が発生しますから相続税は払わなくてはいけません。さすがに丸取りはできないのです。ただ契約者(保険料を払ってきた人)が親(被相続人=亡くなった人)で被保険者(体を提供する人)も親の場合で、生前に親が指定した受取人だけが保険金を受け取ることができます。

生命保険金と言えばサラリーマンでは一生手にすることができない一財産になることもあります。だから借金が多い親であっても、虫が好かない親であっても、親孝行は形だけでもしなくてはいけないのです。