相続土地国庫帰属制度の損得勘定、売れない家はどうする!?

相続土地国庫帰属制度の損得勘定、売れない家はどうする!?

所有者不明土地の問題から一歩進んで、相続登記の義務化が令和6年4月1日からスタートします。それに先立ち令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まっています。誰も相続したがらない価値の低い土地、固定資産税や管理費用がかかる土地を国が引きとってくれるというならありがたいことです。しかしながら、よくよくルールを読み込んでいくと、それほど甘くはできていない制度です。条件が厳しく、無条件で引き取ってくれるわけではないので、どうにも使いづらい制度であることが分かってきます。もっとも5年後に必要があれば見直すそうですから、そのときには、少しは改善されているかもしれません。

■所有者不明土地の原因と無責任を問えない3つの理由。

相続登記に必要な書類と手順を、実際にやった素人がわかりやすく。

◆ 相続土地国庫帰属制度の狙いと的はずれ。

相続する土地に価値があれば、売ることができるかもしれませんから、お金になるわけです。売れるなら相続土地国庫帰属制度のお世話になることもありません。相続したくない土地というのは、どうにも売れそうにない問題の多い土地のことです。

実際の不動産取引というのは、買い手と売り手の思惑が一致しないと売買の話はまとまりません。売りたさを見せると足元を見られますし、売値を高望みすると逃げられます。決まるときはあっさり決まりますが、そうでないときは、何年待っても話は流れるばかりということもあります。

売れる可能性がある土地でも、そう簡単に売れるものではないということがあります。その間は、固定資産税や土地の除草などの管理費用がかかり続けます。

相続土地国庫帰属制度を使うくらいなら、二束三文でも手放したいところなのですが、不動産の売買となると欲が出て話は、簡単に進みません。

相続土地国庫帰属制度は、全く新しい制度です。実際の運用でどうなるかはまだわかりません。単純に考えてもいくつも疑問があります。相続放棄したいくらいの売れない土地というのは、ほぼまともな管理がされているとは言えないところがあります。

土地というのは手を入れないをと荒れ放題となり、境界など埋もれてしまい簡単にわかるものではありません。土地家屋調査士を頼まないで、法務局の職員と現地確認しても、測量なしの公図だけで正しい境界がわかるとも思えません。

対象となる土地の条件は下記のようになっています。(以下斜体部分は引用)

・建物が建っている土地
・担保権または使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
・通路用地、墓地、境内地、水道用地、用悪水路、ため池が含まれる土地(令2条)
・特定有害物質により汚染されている土地
・境界が明らかでない土地など、所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

●申請しても承認されない土地(不承認事由)
・勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用・労力を要するもの(法5条1項1号、令4条1項)
・土地の通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木そのほかの有体物が地上に存する土地(法5条1項2号)
・除去しなければ土地の通常の管理・処分をすることができない有体物が地下に存する土地(法5条1項3号)
・以下の土地であって、現にほかの土地の通行が妨げられているもの(法5条1項4号、令4条2項1号)
 a.公道へ通じない土地
 b.池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に至ることができない土地
 c.崖があって公道と著しい高低差がある土地
・所有権に基づく使用または収益が厳に妨害されている土地(その程度が軽微で、土地の通常の管理または処分を阻害しないと認められるものを除く)(法5条1項4号、令4条2項2号)
・以下のいずれかに該当する土地(法5条1項5号、令4条3項)
 a.土砂崩れなど土地の状況に起因する災害が発生し、その災害により生命・身体・財産への被害が生じるおそれがあり、その被害の拡大・発生を防止するために、土地の現状に変更を加える措置(軽微なものを除く)が必要なもの
 b.動物が生息する土地であって、その動物により人の生命・身体や農作物・樹木に被害が生じるおそれがあるもの(その程度が軽微で、土地の通常の管理・処分を阻害しないと認められるものを除く)
 c.主に森林として利用されている土地のうち、市町村森林整備計画に適合していないことにより、追加的に造林・間伐・保育を実施する必要があると認められるもの
 d.国庫帰属後の法令に基づく処分により、国が通常の管理に要するもの以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実な土地
 e.法令に基づく処分により、承認申請者が所有者として金銭債務を負担する土地であって、国庫帰属後に国が法令に基づきその金銭債務を承継するもの

上記の条件がクリアされている別嬪の土地なら、国庫に差し上げるより売れそうな気がします。ただ、田舎には相続土地国庫帰属制度の条件に適合するけど、足の便が悪いとか奥まった土地など悪条件の物件があり、売ろうにも買い手がつきそうにない土地もありますから、建物さえ建っていなければこの制度も使えるかもしれないと思います。

相続土地国庫帰属制度は、対象が土地だけです。建物はご免こうむるということですから、どうしても制度を使いたいときは自費で建物を撤去するほかありません。建物の撤去処分にはかなりの費用がかかります。売れない土地の処分というのは、心ならずも相続した相続人に大きな経済的負担をかける代物だということです。

土地というのは、売れないと思い込む必要はありません。ひょんなことから話が舞い込んで売れることもあります。次の代に残さなければよいぐらいに考えて、あせらないことがよいと思います。まだまだ相続土地国庫帰属制度は、実態にそぐわない的外れな部分が多いので、最後の手段と言えるかと思います。

■住民票の除票と戸籍附票の除票とは、わかりやすく。

◆ 売れない土地の管理にお金を出せるか、20万も。

相続土地国庫帰属制度の条件が、厳しすぎると感じている方は大勢いらっしゃると思います。要するに問題が多い売れない土地は、国もいらないということです。

 

サラリーマンの感覚で申し上げれば、売れない土地の管理に20万も出せるか、と言ったところです。実際は、土地の広さや筆数によってもっとずっと管理費用がかかることもあります。最低金額が20万ということです。

損得勘定で言えば、確かに固定資産税の呪縛から逃れられますが、草刈り機を買って自分で草刈りしとくがな、そういう気がするところが本音です。

相続登記で改製原戸籍がいる理由がわからない。

◆ それでも今後に期待、相続土地国家帰属制度、まとめ。

そうは言っても、いつまでも老体に鞭打って草刈りができるわけでもありません。どこかで、あきらめなくてはならないときがきます。あきらめたとき必要な費用が払えるかどうかということが問題になります。

年を取れば年金生活にもガタが来て、預貯金が底をつくときがきます。そのときに売れない土地の処分にお金がかかるというのは辛いことです。

できるときに片を付けておくということも、大事なことです。それやこれやを考えても相続登記は急ぐなかれ、相続土地国庫帰属法は早まることなかれという気がします。hokenfpは、士業ではありませんから、一般人の損得勘定で書いています。ただし今回の記事は極めて主観的は見解をもとに書いていますかから、その点はご容赦いただきますようお願いします。

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