詐欺メール被害は雑損控除にならない|盗難との違いを税法から解説。

※本記事ではフィッシング詐欺や特殊詐欺などを含めて「詐欺メール被害」と表現しています。

詐欺メール被害や特殊詐欺被害は、原則として確定申告の雑損控除の対象になりません。医療費控除は利用したことがあっても、雑損控除は使ったことがないという方が多いと思います。

雑損控除とは、災害や盗難などによって資産に損害を受けた場合、その損失の
一部について所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。

ところが近年大きな社会問題になっている詐欺メール被害や特殊詐欺被害は、
この雑損控除の対象外です。

私個人としては少々首をかしげたくなります。

泥棒に現金を盗まれれば雑損控除の対象になるのに、巧妙な詐欺で何百万円も
だまし取られても対象外だからです。

被害者から見れば、失ったお金は同じです。
しかも最近の詐欺メールは驚くほど巧妙です。

証券会社、銀行、税務署、宅配業者などを名乗るメールが毎日のように届きます。
用心していても被害に遭う方がおられます。

そこで今回は、詐欺メール被害が雑損控除の対象にならない理由を考えてみたいと思います。

◆ 詐欺メールは迷惑メールでは済まない。

詐欺メールによる被害は年々深刻になっています。
単なる迷惑メールなら削除すれば済みます。

ところが悪質な詐欺メールは違います。

偽の証券会社サイトへ誘導したり、銀行口座情報を入力させたり、
クレジットカード情報を盗み取ったりします。

中にはウイルス感染を目的としたものもあります。
とくに最近は実在する企業や官公庁を装ったメールが増えています。

一見しただけでは本物と区別がつかないものも少なくありません。

証券会社を装ったフィッシング詐欺では、多額の不正取引が発生し
大きな問題になりました。

私のところにも税務署や宅配業者を名乗るメールが頻繁に届きます。
慣れている人間でも、一瞬本物かと思うことがあります。
高齢者だけがだまされる時代ではなくなったという印象です。

■e-Taxの偽装メール“税務署からの【未払い税金のお知らせ】”

◆ 雑損控除とはどのような制度か。

雑損控除は、一定の資産について災害や盗難などの被害を受けた場合に
利用できる所得控除です。

対象となる原因は次のようなものです。

・震災、風水害、雪害、落雷などの自然災害
・火災や爆発などの人為的災害
・害虫などによる異常な災害
・盗難
・横領

こここで興味深いのは、盗難や横領は対象なのに詐欺や恐喝は含まれていないことです。

税法は、本人の意思とは無関係に財産を失った損害については救済の対象とする
一方、詐欺については「だまされたとはいえ、自ら財産を交付した」という考え方を採っています。

この違いが、盗難は雑損控除の対象になり、詐欺は対象外となる理由です。

例えばシロアリ被害です。シロアリに家を食べられたくて食べられる人はいません。盗難も同じです。勝手に持っていかれます。

ところが詐欺の場合は、だまされたとはいえ最終的には本人がお金を渡している
という考え方になります。

この線引きが税法上の考え方です。

■No.1110災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)(国税庁)

なお、趣味の美術品や高額なコレクションなど、日常生活に通常必要ではない資
産は対象外です。この点も意外と知られていません。

◆ なぜ盗難は対象で詐欺は対象外なのか。

ここが一番わかりにくいところです。盗難と詐欺の違いは何でしょうか。

被害者から見れば、どちらも財産を失っています。
ところが税法は両者を区別しています。

盗難は本人の意思とは無関係に財産を奪われます。

一方、詐欺はだまされているとはいえ、本人が振り込みを行ったり、
お金を渡したりしています。

そのため税法上は本人の意思による行為が介在していると考えられています。

理屈としては理解できます。しかし感情的には納得しにくい話です。

高齢者が何百万円もの老後資金を特殊詐欺で失った場合でも、
税法上は雑損控除の対象外です。

一方で泥棒に盗まれた場合は対象になります。
これは、かなり厳しい線引きです。

私だけでなく、違和感を覚える方は少なくないと思います。

◆ 保険金で補填された場合はどうなるのか。

雑損控除にはもう一つ注意点があります。
損害額の全額が対象になるわけではありません。

保険金などで補填された部分は差し引かなければなりません。
例えば台風で屋根が破損し修理費用が発生したとします。

その修理費用に対して火災保険から保険金が支払われた場合、
その保険金部分は雑損控除の対象になりません。

これは医療費控除でも同じ考え方です。

医療費に対して給付金が支払われた場合は、その分を差し引いて計算します。
保険料は自分で払っているのだから関係ないではないかと思いたくなります。

しかし税法は実際に自己負担した損失だけを対象にしています。

■医療費控除で保険金がマイナスされる本当の理由。

◆ 詐欺メール被害は雑損控除にならない、まとめ。

国税相談専用ダイヤルにも確認しましたが、詐欺メール被害や特殊詐欺被害は
雑損控除の対象にはならないとのことでした。

税法の理屈としては理解できます。

だまされたとはいえ、自分の意思で振り込みや送金を行っているという考え方です。しかし最近の特殊詐欺やフィッシング詐欺の巧妙さを見ると、本当にそれだけで片付けてよいのだろうかとも思います。

高齢者を狙った特殊詐欺では、老後資金そのものを失うような被害も珍しくありません。社会的な影響だけを考えれば、盗難や横領以上に深刻なケースもあります。

それでも現行制度では雑損控除の対象外です。税金は助けてくれません。

結局のところ、一番の対策はだまされないことになります。
身も蓋もない結論ですが、これが現在の税法ということなのでしょう。

※税務上の取扱いは法改正や個別事情によって異なる場合があります。
具体的な判断は税務署や税理士へ確認してください。

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