OB税理士に節税を相談できるか?不思議な関係を暴露。
国税OB税理士という先生は、税理士全体の3割から4割と言われています。税務行政に一定期間かかわることで、税理士試験が免除され税理士を名乗ることができます。思いのほかOB税理士は多いというのが実感です。
れっきとした税理士の先生には違いないのですが、普通の試験合格組の税理士とはちょっと違います。税務署勤務で要件となる資格を満たして、定年退職後、あるいは途中退職後税理士として独立されます。税理士として活動を許された、元税務署長クラスのOB税理士のことです。
◆ OB税理士は税務調査対応の専門職。
得意は税務調査ですから、ツボは心得ています。優良申告法人はお上の意向を受けて、OB税理士の先生を一定期間顧問として契約します。持ちつ持たれつの関係ですね。
それで自分が署長時代の表敬状がかかった社長室で、税務調査対応専門の税理士としてアドバイスを仕事とするわけです。
今はさすがにお上の紹介はなくなりましたが、税務署長として権勢を誇っていても定年後は税理士として食っていかねばなりません。顧客となる可能性がある優良申告法人など、あまり敵は作りたくないのが本音です。
全く立場が逆になりますから、頭の切り替えも必要です。節税指南でもなんでもしなければ、経営者に気に入られるはずがありません。
何しろ元税務署長ですから、税務署に顔が利きます。調査内容や調査官の履歴などには詳しいですから、良い面もあります。しかし、どうも会話がかみ合わなくて、うかつに本音で相談できないところもあります。手の内を明かさずに付き合う、不思議な関係です。
ただ実感としていえるのは、相撲の土俵が東西入れ替わっても大差ないですが、警察と泥棒が入れ替わったような無理があります。泥棒の手口がわかれば、逮捕率は上がるかかもしれませんが。
人にもよりますが、どうもこの手のOB税理士の先生は、丁重に扱いつつも距離を置いてしまうところがあります。
◆ OB税理士の先生、有税で節税保険はかけまへんで!
税務署上がりの元署長、OB税理士の先生に節税目的のガン保険の経理処理について相談したことがあります。ガン保険を既得権で抱えている企業は、退職慰労金の支給時期までなるべく解約したくないところです。
平成24年4月27日以後に契約するがん保険の保険料の取り扱いが変更になり、新たにガン保険に加入しても1/2損金でしか処理できなくなったからです。全額損金で課税が繰り延べできて、解約返戻率が長期にわたりすこぶる良いガン保険は、既得権として残しておきたいわけです。
ところが中小企業では、数年もすれば社員は次々止めていきます。名目上は福利厚生ですが、実質は節税を目的とした簿外積立です。福利厚生目的で法人契約している保険であれば、退職者が発生した場合解約するのが当たり前です。
でもそれでは簿外積立が目減りして、無駄な雑収入が発生し税金というコストが大きくなります。税務調査を前に、解約せずに切り抜ける方法はないか一生懸命考えてみます。しかし調査対象年度の前年度までに、退職者の解約をするほかないという結論に達します。
それでOB税理士の先生に恐る恐る相談すると、解約しなくても大丈夫とのこと、エエッと驚いてよく聞いてみるとその分税金を払えば問題がないというわけです。おっしゃっていることは、有税で保険をかけるなら被保険者が在籍しようが退職しようが、税務署は知ったこっちゃないというわけです。
在籍しない社員の保険料を損金で落とすのは、認めませんよというわけです。そりゃそうですが、有税で節税保険を掛けるほど愚かなことはできません。
OB税理士の先生にひとつ聞きたいところですが、有税で保険料を払えば在籍しない社員の契約を解約しないで引っ張ることは、許されるのかどうかです。数年分の税金はもったいないですが、これまでの簿外に貯めた貯 金をはたいて税金を納めるよりは幾分ましかもしれません。
どうも視点が違うの で聞きにくい先生もいたものです。
◆ OB税理士の先生、まとめ。
存じ上げている元署長クラスのOB税理士の先生、数名とかかわらせていただいた所感です。いずれの先生も普通の税理士とは違い、態度はでかいです。
禁煙の社長室で、灰皿を所望されるのでやむなくご用意したこともあります。税務職員はそれぞれ専門分野があり、OB税理士さんによっては、税務申告が適正にできるとは限りません。しかし税務調査の立ち合いでは、やはり威圧感が違います。
税務調査が無事終わり、お礼に食事にお誘いしたこともあります。お酒が入ると税務署の裏事情や税務調査のエピソードなど面白い話が聞けました。国税調査官も統括官も人の子という話です。
ただOB税理士の先生には、すごい方も存じ上げています。定年を待たずに若くして独立されたOB税理士の方です。バランス感覚がよくて、いかにも切れ者です。もちろんOB税理士としての違和感もありません。
定年退職後の片手間税理士と本気で独立したOB税理士とでは、向き合い方が違うのかもしれません。ただ独立OB税理士に、景気はどうですかと尋ねたら、笑いながらジェットコースターのようですね、と一言。軌道に乗せるのは並大抵のことではなさそうです。
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