逓増定期保険が全損でかけられる条件を整理すると。

逓増定期保険が全損でかけられる条件を整理すると。

逓増定期の名義変更が安全な根拠をOB税理士に確認。

※2021/2/20追記。令和元年6月28日に発遣された国税庁の通達により、損金算入できる割合が解約返戻率によることとなり、全額損金でかけられる新規の逓増定期保険はなくなりました。しかし経理処理が変わり、損金メリットはなくなりましたが、逓増定期保険の名義変更による資金移動のスキームは依然有効です。

CIMG2503全損でかけることができる逓増定期保険の条件と注意事項を整理しました。利益が出ることがわかっていて30歳前後の後継者や役員がいらっしゃる中小企業には使える保険です。

もちろん利益の繰り延べではありますが、経営にとっては身を守るためのキャッシュフロー管理のテクニックになります。リスクも伴いますから慎重にと申し上げておきます。

◆ 全損から半損へのショックと既得権。

逓増定期保険はもはや半損としたものですが、平成20年2月28日付けで国税庁から、逓増定期保険の取り扱いに関する改正通達が出されるまでは、定期保険として全額損金が可能でした。法人保険業界にとっては改正の覚悟はしていても激震でした。その中でも救いになったのは既契約に関して全損で処理を継続することが認められたことです。保険を買う側というか、言わば買った側にすれば救いの神ですが、売る側のショックは大きかったと思います。

経理処理の複雑化。

これで困るのは逓増定期保険を契約する時期によって経理処理が異なるというようなことになりました。わかっている人は当たり前なのですが保険に明るくない経理担当や税理士さんは混乱します。以前に法人契約のガン保険でも同様の取り扱いの変更があり、全損と半損が混在する経理処理を区別しなくてはならなくなりました。あちらこちらで経理処理の間違いがあったように聞きます。

逓増定期保険は役員退職金準備がメインの役割。

もともとこの逓増。定期保険はイメージ的に、退職前のそこそこのお年の経営者が短期的に役員退職金簿外に蓄積するという目的があります。逓増定期保険の特色は保険料が伸びる、多額の損金が可能というところに魅力がありましたから、若い被保険者では保険料が伸びないのであまり使わないという傾向がありました。

全損逓増定期保険の条件。

逓増定期保険の全損商品がなくなったわけではないのです。被保険者の年齢と保険期間を合わせて設定すれば保険料的には伸びにくいですが設計可能です。保険料を伸ばしたければ死亡保障を積み増せばよいように思いますが、逓増定期保険は死亡保障が逓増して5倍になりますから被保険者一人に加入できる範囲が意外と少ないのです。全損の逓増定期保険の条件は「契約期間が45歳を超えるものは保険料の1/2を資産計上」の逆パターンです。契約期間が45歳を超えなければ全額損金がOKというわけです。二代目で被保険者がお若い場合は使える逓増定期保険です。

全損といってもいろいろ条件。

実はこれまで全損が可能であっても保険設計的に魅力がなかったので振り向かなかったのですが、某都市銀行がM社の逓増定期保険を提案してきました。もちろんお若い後継者が被保険者になっています。これが存外返戻率がよいのです。保険料の伸びもまあまあです。返戻率のピークは逓増定期保険ですからマッターホルンのようにとんがっていますが、一時的な利益の繰り延べ効果は高いと思います。これは使えますが若い被保険者が足りません。役員でもないものに逓増定期保険を億単位でかけるのは、やはりやりすぎですから、後継者に限るのは仕方がないところです。

使える全損逓増定期保険の登場。

このM社の逓増定期保険の返戻率の推移を見ていると初期の2年から3年は甚だしい低解約返戻率になっており4年目から一気に返戻率が上がります。これってそのまま逓増定期の名義変更に使えそうな商品です。どうしても被保険者の年齢に制限がありますから以前の逓増定期保険のように何度もつないでいくわけにはいませんが、使える商品には違いありません。誠に保険会社もあの手この手の新商品です。

それでも逓増定期保険は自己責任。

注意すべきは、逓増定期保険の特色として解約返戻金のピークを過ぎると解約返戻率は急降下しますから解約を忘れたり、出口対策を怠ると一大事になります。この辺は短期勝負の逓増定期保険のような法人保険のリスクのあるところです。解約時期を忘れて損をしても誰も責任は取ってくれませんし、売り込んだ銀行の担当者は転勤していることがあります。このサイトでは至る所で申し上げておりますが、逓増定期保険はとにかく自己責任であることをご理解いただく必要があります。

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