経営力向上計画の即時償却と節税保険の出口対策を組合せ大胆節税。

経営力向上計画の即時償却と節税保険の出口対策を組合せ大胆節税。

中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)の適用期限は2025年3月末(令和5年税制改正により延長)までとなっています。

この先、延長されるか新しい中小企業支援策が出てくるかはわかりませんが、投資額の即時償却ができればこれは使える仕組みです。節税保険の出口対策として検討することで大胆な節税が可能になるかもしれません。

■法人保険の目的の第一は事業保障という当たり前を噛み砕くと。

◆ 節税保険の雑収入と出口対策。

法人保険には、事業保障目的と節税目的の2つのパターンがあります。その内、節税目的の方は利益を保険料という形で費用化しておき、簿外に解約返戻金として蓄積する仕組みです。

全額損金などで保険料を損金処理していると、解約時に大きな雑収入が発生することになります。この利益の受け皿がないと、解約返戻金による雑収入は課税対象の利益となり節税効果はないことになります。

・節税保険、既得権の出口対策。

法人契約の保険には、損金にできるものがあり利益を繰り延べる効果があります。バレンタインショック以前に、駆け込み契約を行った全額損金の保険が大量にあると思います。

またそれ以前に契約している全額損金のがん保険なども、既契約の権利として残っていると思います。解約すれば、巨額の雑収入が出ます。出口対策ができていないとそれだけでは節税になっていません。

簿外に蓄積された解約返戻金は、確かに緊急予備資金の役割があります。しかしいずれ解約せざるを得ないのですから、その時に出る雑収入としての解約返戻金の使い道が重要です。いわゆる出口対策を考えておく必要があります。

今となっては、国税通達が出されてからあらたな節税保険は、ほぼ期待できなくなりました。しかし手元に残る既得権として、これまでに契約している全額損金保険の雑収入が問題となります。

その出口対策の一つに中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」承認を受けることがあります。実際に手続きをしてみて言えることは「簡単!」「効果大!」です。とくに法人保険の解約による雑収入の受け皿には最適です。

■国税庁 中小企業経営強化税制

◆ 解約返戻金が出るときは、経営力向上計画で即時償却。

バレンタインショックの駆け込みや、以前加入した法人契約のがん保険の雑収入をどう処理するかに関して、手詰まり感の方も多いと思います。

保険代理店や保険営業は、もはや全損保険で受ける提案ができなくなりました。国税庁の締め付け通達により打つ手がなくなってきています。

かといって何もしないで税金を払うだけであれば、汗水たらして稼いだ利益がどんどん目減りしてしまうのです。

そんな中小企業によっては、経営力向上計画の認証を受けることで出口対策ができます。導入した機械設備などを即時償却したり、税額控除を受けたりする手が、有効な手段として浮かび上がってきます。

意外とおいしい仕組みが、経営力向上計画で設備投資を一括で即時償却を利用する手です。即時償却とは設備投資に要した費用を、当年度でまとめて費用に落としてしまえるのです。費用が増えるわけですから、利益は飛んでしまいます。しかし保険の解約で出る雑収入で受ければ、これは誠にうまい出口対策です。

・経営力向上計画は比較的簡単。

経営力向上計画は、補助金申請のようにややこしくありません。書類も少なく申請すればほとんど通ります。設備投資の内容に生産性向上設備という縛りがあります。しかし機械設備のメーカーに事前に交渉すれば、あっさりと工業会の証明印をもらってくれます。

その証明書類が機械設備ごとにあれば、数千万でも数億でも即時一括償却が可能なのです。それも設備を追加したら何度でも更新申請で使えます。

これって、下手な全損保険より効果的です。しかし設備投資の計画がない企業にはおすすめのしようがないのが残念なところです。

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◆ 即時償却の前に既契約保険の解約返戻率ピークを確認。

以前と言っても数年前から十数年前になりますが、全額損金でよい保険が多数ありました。法人契約のがん保険も当時の逓増定期保険も、結構よい解約返戻率だったのです。利益の出ている企業は、こぞって保険に利益を回したものです。

逓増定期保険のように、解約返戻率の山がマッターホルンのように1点集中ですと、早くに解約されていると思います。

しかし法人契約のがん保険や長期平準定期保険、あるいは逓増定期保険のように返戻率の山が比較的なだらかな保険があると思います。解約の適期が、ある程度の広範囲である法人保険は、返戻率のピークが過ぎているかもしれません。

この種の利益繰り延べを意図した法人保険は、全額損金でも半損でも解約返戻率のピークを逸しては全く意味をなさないと知るべきです。せっかくの利益をどぶに捨てているようなことになりかねません。

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◆ 手元の保険を見直し、解約返戻率のピークを確認。

これを機にお手元の保険契約を見直し、一通りの保険契約の意図するところと、解約返戻率のピークを確認された方がよいと思います。

提案書も資料もなく保険証券だけの場合、保険営業か保険会社のカスタマーサポートに電話して必要な資料を請求してください。何の遠慮も必要はありません。解約返戻率のピークを過ぎていようものなら、責任を追及するぐらいの勢いでよいと思います。

まず既契約の解約返戻金のピークを確認、それに対応する設備投資を選定、工業会の証明が確実に出るかどうか確認してください。しかる後に解約返戻金の雑収入がでるタイミングを合わせて、経営力向上計画の申請を行います。

大事な点を2つ、「その設備投資は本当に必要か?」主務大臣の認定を受けた後、設備を取得してください。「設備投資が期末をまたぐことはないか?」とくにここをしっかり押さえてください。雑収入がでる期と設備投資の期があわないと、無駄な税金を払うことになります。

◆ 中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」。

ここまで書いてきましたが、この制度を有効に利用するには資金余力があり、有効な設備投資が可能な企業に限ります。あくまでも、設備投資に即時償却を組み合わせるわけです。節税のために無理に設備投資して節税しても、本末転倒になります。投資した設備が有効に稼働しさらに利益を生み出すから、節税効果も意味をもってくるわけです。

この制度の条件は、とくに難しくはありませんが、設備投資は何でもよいというわけではありません。指定された範囲の設備であり、条件が適合し機械メーカーが工業会の証明書をもらってくれることが条件になります。

工業会の証明書は「中小企業等経営強化法の経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書」というようなタイトルがあり、A4で1枚になっていることが多いようです。

注意事項は、指定の期間内に新品の特定経営力向上設備等を取得または製作もしくは建設して、期間内に指定事業の用に供した場合にという条件があります。

また期をまたぐと無効になるようなこともありますので、よくよくルールを精読して間違いなきよう申請していただきたいと思います。

申請が通れば、即時償却か税額控除かで悩むこともあるようです。税額控除の方がお得なのですが、利益が出ている企業では、即時償却を選ぶこともあります。

詳しくは下記サイトをご覧ください。必要書類や注意事項がまとめてあります。

◆中小企業庁 経営強化法による支援、経営力向上計画

趣旨は以下のように記載されています。

平成28年7月1日に施行した中小企業経営強化法では、「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業・小規模事業者に対して、固定資産税の軽減措置や中小企業経営強化税制(即時償却等)による税制面の支援や資金繰り等の支援を措置。

とあります。

「定経営力向上計画の変更に係る認定申請書」提出することで取得設備の追加、変更は手間がかからず簡単に可能です。

また税制措置の適用を受ける場合は、確定申告の際に上記書類の写しが必要になります。提出資料の写し等は手元に残しておいてください。

どういうわけか、申請窓口は下記になっています。お近くの農政局が窓口になります。

■農水省:経営力向上計画、申請窓口

◆ 経営力向上計画の即時償却活用、まとめ。

一括で設備投資の費用を即時償却できれば、当期の利益を大きく抑制できます。毎年大きな設備投資というわけにはいかないと思いますが、利益が出ている企業にとれば、設備投資はそれだけで節税になっています。

利益の繰り延べは、長い目で見れば同じことという税理士さんもおられます。でも税金という無駄なコストを先送りしたことが、中小企業には大きなことなのです。課税庁が目の色を変えて節税保険を封じてきたことをみてもわかると思いますが、課税の繰り延べというのは価値があるということです。

吹けば飛ぶような中小企業に、安全な将来はありません。払わなくてよいものは少しでも先送りして万が一に備えることが、経営の要諦と言えるのではないでしょうか。節税に使える保険は少なくなってしましましたが、それでもこの辺がわかってくると、法人保険の有効活用も見えてくるというものです。

M&A税制による節税効果と事業規模拡大。

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