事業承継の壁、後継者の責任。

事業承継の最大の壁は経営権の委譲と後継者の責任。

CIMG3205法人保険にかかわっているといろんなケースに出くわします。売る側での経験と買う側での経験は、事業承継の本質的な部分と違った側面を見ることができます。

事業承継対策の柱は円滑な権限委譲と自社株対策になります。

もちろん法人保険がかかわる範囲は限定的で、退職金の原資を生命保険で準備するとか、後継者に資金を集中するための名義変更などのスキーム活用があります。

自社株の贈与もいろんなスキームがありますから、そこは専門家に任せておけばいくつかの選択肢を提案してくれると思います。

◆ 後継者への権限移譲は難しい。

一番難しいのは後継者の指名と育成、そして権限移譲ではないかと感じています。これはなかなか適切な相談相手がいないとしたものです。事業承継の手順として決まったパターンや正解もありません。

そういう意味では事業承継において、最大のリスクは、後継者がやる気をなくすような事態であると言えるでしょう。

ワンマンのオーナー経営者は、これまですべて自分の一存で経営判断をされてきてきたと思います。経営者としての資質もあったのでしょうが時代の流れにうまくのることが今日の成功を築いたとしたならば、後継者の判断はたとえ実の息子でも未熟で甘いものと映ることでしょう。

これも仕方がないことではあるのですが、立場かかわれば柔軟に考えることができなくなります。

◆ 後継社長の未熟さ責めるな、来た道だもの。

経験や知識が少ない後継者が判断を誤ったり、失敗するのはあたりまえです。それを積み重ね、経験としての財産を積み上げていくわけです。最初からうまくいくと、その方が後々よほどリスクが高くなるものです。

後継者にとれば、たとえ我が子でも、親族外の社員からでも社長を継ぐということは、非常に勇気のいる決断です。それができなければM&Aか廃業・精算を考えなければいけないわけですから、オーナー社長はそのことを肝に銘じることが必要です。

後継者に対しては、口出ししない明確な経営権の委譲が必要です。社員も決定権がどちらにあるか、微妙にかぎ分けているものなのです。

ところが、経営権を譲り任せたつもりでも、後継者にすればそうは思えないことが多いのが実際です。このギャップが後継者を追いつめることになります。

自分としては身を引いて譲ったつもりでも縄付きではいかんのです。任すなら成功も失敗も全部後継者責任で任せることです。経営者として駆け出しのころは自分も数々の失敗と判断ミスを積み重ねて今日あることを自覚すべきです。

事業承継、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者の悲劇。

◆ 事業承継の失敗は社員が不幸になる。

私の知る例では、40歳台になっても永遠の副社長で、最終決済の権限がなく、副社長として決めたことを権限を離さない社長に再三くつがえされることに嫌気がさし、高級車で暴走し瀕死の重傷を負った例がありました。これで反省して経営を任すかと思いきや、暴走する息子にいよいよ経営権を委譲できなくなり事業承継は暗礁に乗りあげた格好です。こうなって生命保険でもどうしようもありません。

立場が変われば、思いも感じ方も違います。経営を任せる立場は、感謝の気持ちを持たなければなりません。ゆめゆめ「譲ってやった」などと考えてはいけないのです。

事業承継に失敗して困るのは従業員とステークホルダーです。

社員間に不安な心理が拡大し後継者社長に対する求心力も低下します。

経営権移譲の難しさ、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者。

◆ まとめ

後継者に対し、常に「継いでくれた」という感謝の気持ちが何より大事です。口出ししないということは難しいと思います。一度任せたら仕事内容を見ないこと、後継者から聞かれるまでアドバイスしないこと、それができないなら決済をすべて任せて出社しないことです。

経験不足で招いた事態は後継者が自己責任で乗り越えてこそ経営者としての資質が身につくというものです。事業承継の壁を乗り越えるために必要なことは、相手の立場を理解するということに尽きると思います。ただワンマンオーナー経営者には残念ながら誰も本音で言わないし、物事の真実は伝わらないものなのです。

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