節税保険、簿外資金の使い道。

節税保険で貯めこんだ簿外資金の使い道。

DSCF2211バレンタインショックから節税に使える損金保険はなくなってしまいましたが、既契約への遡及は見送られました。その結果、損金で簿外に蓄積してきた利益は既得権として残すことができました。

全額損金のがん保険や長期平準定期、駆け込み契約が集中した一定期間災害保障重視型定期保険などがあります。

 ◆ 損金保険と節税保険、そもそも。

節税保険を契約すると法人は保険料を費用として損金処理できるのですが、解約すると大部分の保険料が戻ってきますので雑収入が発生します。これは課税の繰り延べになっています。損金で支払った保険料はP/Lで費用と処理されますからB/Sにはのりません。

つまり実質的に解約返戻金は貯金になっているのですが、形としては簿外に資金を蓄えていることになります。うまい具合にいざというときの助けになる合法的な隠し預金になっています。

節税保険と言いますが、そもそも解約したときの雑収入の使い道が設計できていないと利益を繰り延べただけになります。それでも意味がないことはないのですが、せっかくですから早いうちから出口対策を用意する必要があるのです。

 ◆ ピークを迎える節税保険。

残せる節税保険と残せない節税保険。保険料を損金で落とせる保険はいろいろありますが、ピーク時期が短いものや、比較的幅がありゆったりとした返戻率のものがあります。特に長期平準定期のような長い目で管理するような保険は解約返戻率のピーク時期がある程度長いですから安心して残せる保険ということになります。

ところが全額損金で処理が可能な保険は解約返戻率がとてもよくなりますが、ピーク時期が限られていて、うっかり見過ごすと大変なことになります。それは解約時期のコントロールがそれほど自由ではないということですから、出口対策もピンポイントで考える必要があります。節税効果は高いですが短期的な管理が必要になり、いわゆる残せない保険ということになります。

短期的に管理すべきか、長期的に管理すべきかは、保険の種類だけでは決められないところもあります。残している提案書を確認し単純返戻率の推移を確認してください。提案書がなければ保険代理店、もしくは保険会社のサポートに連絡すれば対応してくれます。

これらは区別して解約時期の管理をする必要があります。

◆ 解約返戻率の2029年問題。

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新たな問題的をわかりやすくするために「解約返戻率の2029年問題」などと申し上げてみたのですが、バレンタインショック駆け込み組は多くの場合10年後に解約返戻率のピークを迎えます。何千億といも言われる駆け込み組の一斉解約の時期にあたります。

2019年2月契約とすれば、2028年2月から2029年2月までに解約することになります。それより手前で使い道を設計する必要があるのですが、中小企業は日々泥縄、それどころではないと思います。

まず10年は一昔です。保険会社や代理店の担当が同じように残っていてフォローしてくれる保証はありません。それどころか契約した企業でも事情を理解した当時の担当者は退職しているかもしれません。

以前のように、解約しても今度ばかりはその雑収入を引き継いで次の保険契約に入ることは期待できないのです。一斉に解約される保険会社も大変なことになりますが、出口対策のできていない中小企業は課税当局のツボにはまって納税せざるを得なくなります。

まあ、東京オリンピック後の令和の大不況の嵐の中で、それまで保険料を払い続けることができずに解約している確率の方が高いように思いますがね。

法人保険で節税するメリットデメリットを整理しました。

◆ 簿外資金と経営戦略。

もちろん泥縄経営の中小企業にとれば来期の利益予想すら困難ですから、利益の繰り延べこそ保険のようなもので価値があるのです。未知の資金需要に対応するのが損金保険で蓄えた簿外資金です。とは言ってもせっかく既得権を手にしたわけですから、簿外資金の有効活用を前提とした経営戦略が必要です。単なる繰り延べだけではもったいないというものです。

経営戦略などと小難しいことを申し上げましたが、要するにお金の使い道です。企業経営は「入るを量りて出ずるを制す。」と言われます。お金を使うからにはそれに見合う利益が得られるか、あるいはコスト削減になるか、もう一つ言えばリスクをヘッジできるかを考えた投資戦略です。

生命保険|全損保険の限界について専門的見解。

◆ 失効、減額、払済。

解約返戻率は年の経過とともに徐々に変わっていきますが、それほどピーク時にこだわらなくても柔軟に考えて下さい。そうすればいろんな手が使えます。それでも制御できない時は減額、失効をお考えください。必要なだけ雑収入を取出し複数年に分けたいときは減額することです。

2年程度解約を先送りしたいがピークを維持したいという方には失効がおすすめです。(保険料を口座振替から振込に変更して振込まないで失効させてください。)都合のよい時期に解約して雑収入を有効にご活用ください。

払済という手法もよく使われます。しかし払済にすると保険料の支払いは止まりますが解約返戻金の洗い替えが発生します。キャッシュは入りませんが、一旦雑収入を計上しなくてはなりません。終身保険はしっかり残りますが、税金もかかりますのでご注意ください。

法人保険で節税する基本的な考え方は全損から返戻率へ変わる。

◆ 費用化戦略。

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節税保険の肝は出口戦略の設計です。しかし出口で受けて引き継げる保険がなくなりましたのでここは費用化できるものを集めて周到に準備をすすめなくてはなりません。設備投資の減価償却をあて込む場合でも中長期的な設計が必要です。

最低でも複数年計画で進めないとリスクの高い損金商品に走ったり、間に合わずに余分な納税をしたりする羽目になります。詳細は省きますがやり方次第で費用化できる手堅いものをいくつかあげました。

すべての会社にあてはまるわけではないですが、参考になさってください。

・設備投資をして定率法で減価償却(中古品が有利な場合も、中長期計画が必要)

・LED交換で一括償却(LEDは一括償却が可能)

・経営力向上計画による設備導入で一括償却(工業会等証明書が必要)

・Windows10入替で少額減価償却資産の特例活用(2020年の3月末まで)

・取得額10万円未満のPCは消耗品費、一括計上(やり方次第)

・海外社員旅行(最近は喜ばれません。)

・決算賞与支給(モチベーションアップは一か月)

決算賞与の場合は期末ぎりぎりの判断になりますから、下記の要件をご確認下さい。
1.事業年度終了の日までに支給額を、同じ時期に支給する全従業員に対して各々通知していること。
2.通知した金額を、事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に全額支払うこと。
3.通知した金額について今期中に損金として経理上の処理をしていること。

・退職金支給(たびたび使えませんが効果大)

・不良資産を売却(評価が下がっている不動産を売却)

・修繕、廃棄(この際不良在庫を処分)

◆ 簿外資金の使い道、まとめ。

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節税保険によって投資に回っていない簿外資金はおおよそ数千億以上あるでしょう。長期に蓄積しておいて退職金にあてることで解約時の雑収入消すことができればベストです。

ただ度々使える手段でもないですし、引退のタイミングを合わせるのは意外に難しいものです。

虎の子の簿外資金を有効に制御しつつ投資を考えることが中小企業の知恵の見せどころです。そのためには契約している生命保険契約の解約時期がわかる資料をエクセルで作成しておくことが必要です。縦軸に保険契約の種類と内容、被保険者や契約日、保険会社を並べます。横軸は時系列を管理するので各年度を並べます。

各セルには解約返戻金を入れます。ピーク時期を2段階で色付けします。ピンポイントのピークは赤色、解約返戻率があまり下がらない許容範囲は黄色にします。解約返戻金の縦軸の合計はその年度に使うことができる解約返戻金の金額合計が示されます。

試しに作成いただくと自分なりの工夫ができます。大事なことは情報をA4一枚で俯瞰できるようにすることです。必要最小限の情報に絞りこめば契約が多くてもまとめることができます。そして経営戦略を考えるときにいつもそばに置いておきます。

費用化戦略も保険のエクセル管理も実際の経験に基づいています。保険管理のエクセルは作成することで解約時期が頭に入ります。費用化戦略を並べましたが、多くの場合投資以前に赤字の穴埋めに使うことになるかもしれません。それほど厳しい時代の到来が予感されます。

節税できない法人保険、当期利益の落とし方。

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