親孝行保険の親不孝。
親孝行というものは、なかなかできるものではありません。親の恩に気が付いて親孝行をしたいと思っても、すでに親はこの世にいないとうのが相場です。
お盆になると、ご先祖様の墓参りをします。田舎のお仏壇にある一番新しい位牌が両親で、あの世での新しい名前が刻まれています。
親が若いうちは「親孝行保険」をすすめられることがあります。親孝行保険とは聞こえはよいですが、実は親にすればとんでもない親不幸なのです。
保険商品は予定利率が低くなり、魅力がなくなりました。貯蓄性はほとんどありませんし、保障を買うにも割高になりました。保険を売る保険営業も、おすすめのネタ切れで行き詰り状態です。
それでも生命保険には、いろいろな切り口が残されています。保険商品は切り口を変えて説明すると新鮮に映ることがあります。少々古臭い切り口ではありますが、お盆ということで親孝行保険を考えてみます。
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◆ そもそも親孝行保険とは?
今どきこんな切り口で、保険を売ろうという方は少ないでしょう。しかし契約者の家族や親子関係によっては一理あるのです。本来生命保険は、親が契約者となり子を被保険者として生命保険をかけることが多いと思います。
子に収入がない間は親が保険料を負担し、子が独立すれば契約者を子に変更します。よくあるパターンですが、保険金の受取人も親から配偶者に変更すると思います。契約形態は下記のようになります。
★契約形態は、
契約者=親
被保険者=子
受取人=親
★変更後の契約形態は
契約者=子
被保険者=子
受取人=子の配偶者
普通であれば親が先に亡くなりますから、何の問題もありません。ところが昨今は超高齢化社会となり親も長生きします。世の中万が一と言うことがあります。子の方が病気や事故で先に亡くなるような不幸もあります。
親に経済力や財産があれば、単に不幸な出来事になります。しかし成長した子が親に仕送りしていたり、息子の持ち家に同居していたりするようなケースでは大変です。どう大変なのかをわかりやすく箇条書きにします。
・息子に嫁や子がいれば、親は相続人にはなれませんから息子の財産は受け取れません。
・死亡保険金の受取人も配偶者にしていれば、生命保険金は息子の嫁のものです。
・同居の嫁と仲が悪ければ、息子から相続した財産を処分して孫を連れて実家に帰るでしょう。
これは最悪のケースです。後には住むところがなくなった老親が残されます。まさかここまで運が悪いことはないでしょうが、二世帯住宅などにして同居していると可能性があります。
そこで、息子としては自分が万が一のとき、育ててくれた親に保険金が残るようにというのが親孝行保険というわけです。
★契約形態は、
契約者=子(息子)
被保険者=子(息子)
受取人=親
という親孝行保険のパターンが考えられます。家庭環境や親の財産具合、家族仲などにより考えられる保険です。これは生前贈与のし過ぎでも起こることがあります。相続税がかからないところまで生前贈与をすると、長生きした場合に余力がなくなるのです。思いがけない大金の出費や所有していた株式などが暴落したり、大病をしたりすると予定が狂うのです。
注意すべきことは、親孝行保険の受取人は親です。息子の嫁や子がいれば親は相続人ではありませんから、受取保険金は遺贈により取得したことになります。相続税がかかるほどどの大金ではないと思いますから、いらぬ心配ですが、死亡保険金の非課税枠(500万/相続人一人)は適用されません。
親から孫に一代飛ばしで相続させると、例の相続税の2割加算が適用されますが、この場合親は相続人ではありませんが、被相続人となった息子からは一親等の血族となり2割加算の適用はないことになります。
◆ 親孝行保険の親不孝、まとめ。
あまり親孝行保険を提案するようなことは見かけませんが、状況によってはツボにはまることもあり得ます。そいう趣旨の保険なら、親孝行であり親不孝ではありません。
親孝行保険はできれば、親が受け取ることなく息子の嫁や孫に受取人変更する日が来ることを願うばかりです。
実のところ申し上げたかったのは、親より子が先に逝くということがどれだけ親不孝かということなのです。人の子の親になってわかりますが、親というものはいつも案じているのは我が子のことばかりなのです。
保険とは直接の関係はありませんが、知り合いに息子がうつ病で自殺したケースがありました。告別式に参列しても見ていられないありさまで、深刻すぎてつらいばかりです。嫁と子はそのまま息子の家に住み続けています。その後、息子の母親は悲しみと後悔のあまり精神に異常をきたし、近所付き合いができなくなってしまいます。気の毒で見ていられません。
親孝行保険は結構なことですが、息子の命と引き換えに親孝行保険金を受け取るような親不孝は、どうしようもなく親不孝なのです。お盆になると思い出す話ですが、我が身に置き換えると恐怖で身震いする思いです。
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