
生命保険の話ではありません。
しかし法人営業を長くやっていると、保険会社だけでなく銀行とも付き合うことになります。その中で今でも忘れられないのが、いわゆる「期末融資のお付き合い」です。
月末に融資を受けて、月初に返済する、たったそれだけの話です。
意味があるのかと聞かれれば、借りる側からすればほとんど意味はありません。
しかし金融機関の現場では、こういうことが現実に行われていました。
◆ 支店長まで出てくるお願い攻勢。

期末が近づくと銀行の担当者の様子が変わります。
最初は担当者が来ます。次は上司が来ます。
そして最後は支店長が来ます。いわば二段構え、三段構えのお願い攻勢です。
融資が必要だから借りてほしいのではありません。
決算期末の融資残高を積み上げたいからです。
こちらとしては資金繰りに困っているわけでもなく、借入の予定もありません。
それでも何とかお願いできませんかと言われるわけです。
◆ 月末に借りて月初に返す。

今思えば不思議な話です。月末に融資を受けて、月が変われば返済する。
会社にとって大きなメリットはありません。
むしろ数日分とはいえ利息が発生します。
支店長が頭を下げてお願いに来る。
こちらは菓子折りをいただく、そして数日後に返済する。
冷静に考えれば何をやっているのだろうと思います。
借りる方も貸す方も徒労です。
しかし銀行側から見れば、決算期末の融資残高は重要な数字だったのでしょう。
◆ 銀行も数字に追われている。

一般の人は銀行員というと安定した仕事という印象を持たれるかもしれません。
しかし実際の現場では数字との戦いです。
融資残高、預金残高、投資信託、保険販売、遺言信託など。
あらゆる数字が評価対象になります。
とくに遺言信託などは本気で攻めてきます。
生命保険の販売にはどこか腰が引けていても、遺言信託となると目の色が変わる担当者もいました。
金融機関も営利企業ですから当然と言えば当然です。
ただ現場の担当者は本当に大変だったと思います。
◆ 脂汗を拭く担当者。

今でも印象に残っている担当者がいます。別に暑い日でもありません。
それなのに何度もハンカチで額を拭いていました。
自分の成績がかかっているし、支店の数字もかかっているというわけです。
当然、上司からもプレッシャーがあり支店長の顔もあるでしょう。
平静を装っていても必死さが伝わってきました。
あれを脂汗というのでしょうか。
こちらも営業をやっていましたから気持ちは分かります。
だから断り切れずに付き合ったこともありました。
◆ 保険営業でも同じことが起こる。

実はこういう光景は保険業界でも珍しくありません。
月末、四半期末、決算期などはあわただしくなります。
締切が近づくと営業現場には独特の空気が流れます。
契約をお願いする側も大変です。お願いされる側も大変です。
本来はお客様のための提案であるはずが、いつの間にか数字のための
提案になってしまうことがあります。
営業の現場では昔から繰り返されてきた話です。
◆ 数字は大事だが、それだけではない。

もちろん数字は大切です。数字がなければ会社は成り立ちません。
銀行も保険会社も同じです。しかし数字だけを追いかけるようになると、
本来の目的が見えなくなることがあります。
融資は資金需要のためにあるものです。
保険はリスクに備えるためにあるものです。
ところが現場では時として数字が目的になってしまいます。
期末融資のお付き合いは、そんな金融機関の現実を象徴する出来事だったように思います。
今ではコンプライアンスの強化もあり、こうした話を耳にする機会は以前ほど多くありません。
それでも営業という仕事の本質は、昔も今もあまり変わっていないのかもしれません。
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