リビング・ニーズ特約とは、わかりそうでわからない不思議な無料特約。

リビング・ニーズ特約とは、わかりそうでわからない不思議な無料特約。

リビング・ニーズ特約とは、被保険者(契約者や保険金受取人ではなく、体を保険の対象として提供した人)が医師より余命6ヶ月以内と判断された場合、死亡保険金の一部または全額(上限3,000万円)を生前給付金として受け取れる特約です。

生前給付金として死亡保険金の全額を受け取ると、保険契約は終了したことになります。保険料の支払いも保障もなくなります。

読まれている方が、生命保険の被保険者であるなら、もしもの時のために、知識の片隅に残しておけば、役に立つかもしれません。

◆ リビング・ニーズ特約は不思議な特約。

被保険者の権利としてリビング・ニーズ特約があります。被保険者にとり、一縷の望みと奇跡を信じて生きることに執着があるうちは、リビング・ニーズ特約で保険金請求をすることはできないかもしれません。この仕組みは、自分の死を前提にしていますから、まずはそんなことは考えないものです。

死亡保険金などは、本来保険金受取人に支払われます。しかしリビング・ニーズ特約を付加することにより、被保険者自身が死亡保険金などの一部を生前に利用できるようになります。受け取った保険金は、不足する医療費の補助や余命期間を充実させるための資金などに利用できます。

来るべき死を覚悟して、経済的に遺族に迷惑をかけたくないという理由でリビング・ニーズ特約を行使するような人は、それなりの達観した人物のような気がします。リビング・ニーズ特約は無料で付加できますが、わかりそうでわからない不思議な特約です。

※余命6カ月以内とは、日本で一般的に認められた医療(公的医療保険)による治療を行っても余命6カ月以内であることを意味します。なお、余命6カ月以内の判断は、医師の診断書や請求書類にもとづいて保険会社が判断します。

◆ リビング・ニーズ特約で死ななかったらどうなるか?

医師の診断書で、余命を宣言されているわけですから、被保険者本人には責任がありません。死ななかったからと言って保険金を返却する必要もなければ、ペナルティがあるわけでもありません。

堂々と特約を利用すればよいと思います。 当然ですが、受け取った分だけ保険金は減ってしまうことになります。後に残された遺族の生活資金などに狂いが出る場合がありますので、よく考えてください。何のために加入していたのか、 保険の目的を確認した上でリビング・ニーズ特約は、使う必要があります。

◆ リビング・ニーズ特約の保険金は非課税。

リビング・ニーズ特約で受け取った保険金は非課税ですが、保険金が残ると相続税の課税対象(相続税がかからなければ関係ありません。)になります。使い切るといっても余命6カ月ですから、今さら世界一周旅行にも行けないですし、酒池肉林という気分でもないと思います。

国税庁は、下記のように配慮を見せています。

リビング・ニーズ特約による生前給付金は、死亡保険金の前払的な性格を有していますが、被保険者の余命が6か月以内と判断されたことを支払事由としており、死亡を支払事由とするものではないことからすれば、重度の疾病に基因して支払われる保険金に該当するものと認められます。

 疾病により重度障害の状態になったことなどに基因して支払われる保険金は、所得税法施行令第30条第1号《非課税とされる保険金、損害賠償金等》に掲げる「身体の傷害に基因して支払われる」保険金に該当するものと取り扱っており(所得税基本通達9-21)、その保険金は非課税所得となります。

◆ リビング・ニーズ特約は無料、指定代理請求人が請求可能。

基本的に無料の特約なので、普通に付帯されていると思います。(リビング・ニーズ特約がない保険会社もあります。)

特約のネーミングからは想像できませんが、余命6ヶ月の宣告を受けたら生前に3,000万を上限に保険金が受け取れるという特殊な特約です。

昔から生命保険にはセットされていましたが、保険営業の現場では、実際使われたケースに遭遇したことはありません。

聞くところによると、リビング・ニーズ特約の利用は、極端に少なく保険金などの請求の1%以下だそうです。

余命6ヶ月以内となると本人が保険金を請求できないような状況も想定されます。そういう場合は、指定代理人請求という仕組みがあります。

被保険者本人に代わり、保険金や給付金を請求してくれる人を指定しておきます。これは古い契約には付帯していない場合があります。もちろんあとから付けられますから、つけておいた方がよいでしょう。リビング・ニーズ特約と指定代理請求特約はセットでつけておくこと安心です。

■生命保険の指定代理請求の落とし穴。

◆ リビング・ニーズ特約どころではない実際の場面。

実際の場面では治療費に困っているとか、特別な事情がない限り余命宣告を受けたらリビング・ニーズ特約どころではないのです。それでもリビング・ニーズ特約を考えるということは目先の現金が必要な場合だと思います。

リビング・ニーズ特約と言えども、生死の運命の俎上に乗っているときお金の価値はあまり意味がなくなるのです。

リビング・ニーズ特約で保険金を生前に請求すると、別の問題が発生することがあります。相続での死亡保険金の非課税枠が使えなくなったり、相続放棄しても受け取れる、はずの受取人固有の財産だと考えていた保険金が、相続財産に加算されたりするようなこともあり得ます。

また6カ月後に保険金請求が発生し、保険が終了することが前提ですから、それまでの保険料は払わなくてはなりません。普通だと受け取る保険金から差し引くことになりそうです。

もう少し詳しく言うと保険金は、生前給付金の額に対する6か月分の利息と、6か月分の保険料相当額が差し引かれることになりますので、予定額より少なくなることがあります。

しかし、デメリットは考えずに余命の短い被保険者の意向に沿うことが結局はよろしいようです。

どのケースでも主治医の診断書を添えて、保険金を請求することになります。それゆえ被保険者当人に内緒で手続きすることは、実務的に難しい面があります。

◆ リビング・ニーズ特約の利用が少ない理由とまとめ。

保険営業の経験から言えることがあります。保険契約は契約者の意志で決まります。そのため被保険者は、多くの場合リビング・ニーズ特約の存在を知る機会がありません。

知らなければリビング・ニーズ特約は使えませんし、誰もアドバイスはしてくれません。

さらに言えば、保険契約者は、リビング・ニーズ特約の説明を受けていると思います。しかし遠い昔の契約内容の詳細は、すっかり忘れているのが普通だと思います。よほど生命保険に詳しい人が、家族にいないと宝の持ち腐れのようなことになりそうです。

相続税がかかるような方は、資金が足りず、医療費に困ることはないと思います。ですからリビング・ニーズ特約で保険金の前払いを受ける必要はないかもしれません。

もし実際にリビング・ニーズ特約を使うようなケースがあるとすれば、相続税がかからない庶民層の、さらには手許現金が心もとない方々になるように思います。

お金が必要なら契約者貸付で引き出して、死亡保険金で清算する方がしっくりきます。

・リビング・ニーズ特約の有効な使い方。

リビング・ニーズ特約は、被保険者に対する生前給付金です。使途は自由ですから、夫が妻に保険金を残さずに、生前に自分で高度先進医療などに使いたい場合に有効です、あるいは夫が被保険者である妻のために、高度先進医療を受けさせたい場合に使えれば、価値ある制度だと思います。

死にゆく被保険者が3,000万を手にして、お世話になった家族や知人等に現金を配りだしたら、それはそれで後始末が大変になりそうです。贈与税の対象になるだけでなく、相続財産に持ち戻し確実な贈与になります。

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