生命保険と認知症は相性が最悪である理由。
還暦を過ぎると足腰の衰えを実感するようになります。体を鍛え直すつもりでも意志と体力が伴わないのです。それは人の定めですからジタバタもがいても仕方がないことです。その事実を自分が受け入れることにかかる時間だけの問題になります。
時間がたてば不思議なことに、そういう微妙な肉体的不便性も慣れることで適応できるようになります。
ところが、体力の衰えは自分自身で自覚できるのですが、知的能力の衰えや記憶力が伴わなくなることは自分ではわかりにくいものです。
単なる老化現象の場合と、病気としての認知症があります。昔は痴呆やボケなどと配慮のない言葉を普通に使っていましたが、最近は認知症と呼ばれるようになっています。
生命保険では体力の衰えは何の影響も与えません。しかし認知症のような認識能力に障害が発生するケースでは、契約者として適切な判断ができなくなる恐れが出てきます。
認知症になると生命保険はどうなるか、自覚はなくても差し迫った問題である可能性も否定できません。
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◆ 認知症になるとできないこと、保険と相性が悪いわけ。
認知症になると、生命保険では誠に具合の悪いことになります。どういう問題が起こるかを4項目にまとめました。それをカバーする仕組みもあります。
1)認知症になると生命保険が解約できない。
契約者たる地位に基づき的確な判断ができない状況では、成年後見人がいないと解約や名義変更、受取人変更もできないということが起こります。
最悪の場合は自分の生命保険契約の存在を忘れます。症状によっては疑心暗鬼に陥り相続の正しい判断ができなくなります。
家庭裁判所で選任された成年後見人がいなければ、契約者以外に受取人を変更することも解約することもできません。
そうならない前に、ご自分が契約している保険の受取人や指定代理人を確認し、問題がないことを押さえておかなくてはあとで困ります。
2)認知症になっても生命保険は下りない。
認知症は病気ですが、被保険者が死亡しているわけではありません。また保険金が請求できる高度障害にも該当しません。よって生命保険金は被保険者の方が生きている限りおりないことになります。
入院した場合、入院給付金特約があれば一部わずかな給付金はでると思いますが、認知症保険でもない限りあてにできない保険金です。
3)指定代理人が先に亡くなったり、認知症になったりすると生命保険の手続きができなくなる。
生命保険ではあまり知られていないですが、リビングニーズ特約とか指定代理人特則の付加のように、お金がかからずに使える便利な仕組みがあります。
不幸にして高度障害になったり、認知症になったりした場合、代わりに生命保険の手続きをしてくれるのが指定代理人です。主に配偶者や子などの最も近い家族を指定します。
■リビング・ニーズ特約とは、わかりそうでわからない不思議な無料特約。
ところが因果なもので、指定代理人が先に死亡したり認知症になったりすることも珍しくないのです。生命保険の契約者自身が認知症になる前に、配偶者などの指定代理人が認知症になると、代わりに手続きできる人がいなくなります。
生命保険では受取人の指定や変更はとても大事です。しかしそれ以外に指定代理人の、健康状態にも注意が必要になります。
4)認知症になると生命保険に入れなくなる。
認知症保険も同様ですが、健康でないと普通の生命保険に加入できなくなります。認知症リスクを感じた時はすでに遅く、生命保険には入れないものとお考え下さい。
ただ相続税対策などで、無告知型のドル建て一時払い終身保険などに加入しようとするときは微妙です。症状の進行程度で、本人に契約の意思を確認できるかどうかになります。約款を理解することはできないでしょうが、サインできれば加入できる可能性はあります。
◆ 認知症の診断は恐怖。
認知症と生命保険で、間違うと恐いのは経営者の場合です。中小企業のオーナー経営者には定年などありません。後継者さえ決まれば会社に顔を出しながら、悠々自適に相続設計や遺言書の作成をすればよくなります。
ところが経営者に限らず、自分の身じまいは乗り気にならないもので、先送りしがちになります。
先送りすれば認知症により判断力が低下したり、記憶があいまいになったりすることがありますから、気がつかないうちにリスクを抱えることになります。
怖いのは自覚症状がないままに症状が進行し、何かおかしいと感じつつ遺言書などが手遅れになる場合です。しかしながら、ご本人にとれば認知症と診断されるのは怖いことです。
早期に発見すれば、治療により進行を遅らせることもできるようです。嫌な言い方がネットでは流行っていますが、早期発見が早期絶望につながるケースもあるようです。
やはり告知されるのは怖いですから、自覚症状があっても医者には行きたくないのが本音です。誰しも自分の弱点を、人に知られるのを嫌がります。
その分対応が遅れがちになるようです。周囲が気を付けていく他ないですが。
◆ 生命保険と認知症の相性、まとめ。
生命保険契約では認知症は大敵です。誠に相性が悪いので、ある程度の高齢の方は生命保険管理に十分な注意が必要です。
誰にも認知症リスクはあり得ます。認知症になる前に契約者名義や受取人、指定代理人を変更して対策を講じておくことが重要になります。
また契約者が認知症になるとお金の管理ができなくなり、保険料の支払いが滞る恐れがあります。一方、受取人が認知症になっても保険金の受け取り手続きができなくなることが起こります。
家族が生命保険の存在を知らず、保険料の支払が滞れば、生命保険契約は失効することもあります。
契約者本人が判断能力のあるうちに、別居していても生命保険情報は家族で共有していくことが重要です。
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