逓増定期保険の解約時に困る未経過保険料の怪。
逓増定期保険の解約時に困る、未経過保険料についての報告です。
平成22年4月から保険法が変わり、年払いの生命保険でも解約時期に応じて、未経過保険料を返却することが示されました。金融庁の一見妥当な判断のようですが、契約者にとっては全く得にもならない、うっとうしい話なのです。
未経過保険料とは読んで字のごとく、保険会社はまだ時機が到来していない先払いの保険料は、返却しなさいよと言うことです。年払いや半年払いだと一年分や半年分の保険料を、前払いしていることになります。月払いに直して、未経過月の保険料を返却することがルール化されました。
至極まともな話のようですが、解約返戻金と未経過保険料の合計は、実際の返ってくるお金で考えると必ずしも得になるわけではないのです。
保険会社は解約する時期に応じて、年払いであろうが半年払いであろうが、月単位で解約返戻金を計算します。それに未経過分の保険料を上乗せして返金してきます。
その結果、逓増定期保険では、解約返戻金として予定していた金額に届かなくなることがあるのです。
実はがん保険の解約の時にも、同じ問題がありました。そのときはまさか手取りが減るとは、思っていなかったのです。未経過保険料が戻るのですから、その分保障費用がかからなくなり、戻りが増えると考えていました。でも逓増定期保険の解約で確認すると、そうじゃなかったのです。
◆ 逓増定期保険の解約返戻金の不一致を説明すると。
詳しく述べることはできませんが、保険料を払ってすぐに解約すると、その時点の解約返戻金と残り11か月分の保険料の合計が戻ります。
1年後に解約すると未経過保険料は0円となり、解約返戻金だけが戻ります。その差が100万以上になることが普通にあります。不思議なことですが、解約を一年待った方が戻りが多くなり儲かるのです。保険料を払って、一年寝かせたときの解約返戻金の方が、即解約よりも戻りがかなり多いということです。
この不思議な現象が大きな金額になるのは、逓増定期保険に特有の現象らしいのです。逓増定期保険は、死亡保障が短期で5倍に増加しますが、保険料は平準化されていますので、毎年同じ金額が引き落とされます。後に行くほど大きくなる死亡保障を、前期期間に保険料として先払いしています。それゆえその分の戻りが大きくなるわけです。
解約返戻金としては、前期期間は極端に小さくなっており、死亡保障が増加する直前に解約返戻率のピークが来ます。この差が大きいほど、おいしい逓増定期になります。少しでもぎりぎり後ろで解約するほうが解約返戻率が上がるので、解約返戻金が増加するというわけです。
◆ 逓増定期保険の未経過保険料、まとめ。
逓増定期保険の解約では、未経過保険料の返却より、解約返戻率がよくなる後ろに振った方が手取り額が大きくなる現象を説明してきました。しかもその一年間は保障が続きます。
とは言ってももともと保障目的ではないですから、さっさと解約して解約返戻金で借りているお金を返済したいところです。逓増定期保険の名義変更でいえば、一時所得の申告も一年ずれることになります。妙に惜しい気持ちと先延ばしになるうっとうしさに悩むことになります。
解約返戻金の一時所得で予定していた、次の逓増定期保険も契約できなくなります。金融庁も契約者に不利な改悪をしてどうするのでしょう。ボヤキ節が聞こえてきます。
追記2021/6/25:
国税庁により逓増定期保険の名義変更にかかる保険契約の権利評価の見直しが行われました。2021年6月25日、資産計上額で評価するという通達(所得税基本通達36-37)が発遣されました。これにより逓増定期保険の名義変更プランは、意味がなくなりました。
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